真昼の星




キラは思い切って足を早め、先を行くアスランの隣に並んでみた。

「なんだ?帰らないのか?」
「仕方ないじゃない。僕もこっちに行きたいんだから」
「……………………」
そう言われれば拒絶する正当な理由も浮かばなかったのだろう。沈黙したアスランがどんな表情をしているのか知りたくて、キラはそっと顔を覗き込んだ。

(あ――)

視線を感じたアスランの瞳がキラを見た瞬間。

(翠の…星?)


そうキラは思った。
闇色の髪が夜空だとすれば、その瞳は翠の星。瞼に残るプラネタリウムの星々よりも、断然この真昼の星の方が。

綺麗――…。



「……人の顔をジロジロ見ないでくれないか」
返ってくる言葉は辛辣なものだったけれど、もうキラの機嫌を損ねるほどの力はなくて。
覗き込むのは止めたけれど、二人はそのまま並んで歩いたのだった。




◇◇◇◇


駅前通りまで戻った時、キラは名残惜しげに立ち止まった。
「じゃ、僕はここで」
何を話すでもなくただ黙々と歩いただけ。普通なら気詰まりで逃げ出したくなるはずなのに、何故かその沈黙は安らげるものだった。

「それと…僕、カガリのパーティには行かないから」
「ふーん」
アスランはキラが妾腹の息子であると知っている。欠席の理由を尋かないのは、その辺の心情を察してなのか、単に興味がないだけなのか。
せめて前者であって欲しいと思うキラに、平静な声でアスランは言った。
「じゃ、俺も止めるかな」
「え!?何で?」
純粋に驚いた。アスランは所謂家の品格をコンプレックスに持っていたから、こういう機会に高貴とされる家の人間と交流を持ちたいと思っていたはずだ。勿論アスハの親類にはお上品な連中が揃っている。
それなのに。


「……勘違いするなよ。婚約したとはいえ、まだあの家ではお前あっての俺だろう?」
「か!勘違いなんてしてないよ!」

でも少しは期待したのかもしれない。存外に声が大きくなってしまったのが、その証拠だった。




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