本音




だから女の子をお持ち帰りしようと構わない。例えキラが居るのを知っていてそうしたのだとしても、色々と口出す資格すらない。
気持ちのいいものではないが、そんなことは大した問題ではないし我慢も出来る。


キラがショックだったのは――…。



アスランがキラの存在を恥じているのが分かったから。




自分が何をしたのだろう。
ただ必死で生きてきただけなのに。

それどころか誰に恥ずかしい生き方をしたわけではない。
どちらかといえば勤勉な方だろう。家計を助けるためにバイトして、その上母親が気に病んだりしないようにそれなりに学業も両立していた。
親の金で遊んで暮らす彼らに比べれば、誉められてもいいくらいだ。

それなのに気持ちが相手に届かないのは、やはり出生自体が誤りだったからなのか。


(ううん。そんな筈は…)
別に見返りが欲しくてやっているのではないが、時々こうして虚しくもなる。
萎えそうになる心を奮い立たせ、キラは自分をこんな気分にさせたアスランへの怒りに変えようとした。
今まで色んな場面でそうしてきたように。
誰かを怒りの対象にしないと駄目だなんて、辛い生き方だと分かっていても、何も持たないキラにはこれしか方法がないのだ。




今回に限って、何故かその努力がイマイチ上手くいかないことに更に苛立つ自分には、わざと気付かないフリをした。




「さ、仕事に戻らなきゃ」

忙しくしていれば、暗いことも考え過ぎないで済む。


キラはオーダー取りを変わってくれた先輩黒服に、ペコリと頭を下げたのだった。





20090416
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