本音




他の友人もアスランの“愛人”の地位を狙う女達も、アスラン自身でさえも。
この時点で“キラ本人”を気にかけたのは、イザークだけだったからかもしれない。

二番目とか男だとか妾腹なんて、キラの値打ちを下げることになるのだろうか。そんなことで人の値打ちをは決まるのか。

だが本当は一番分かってやらなければならなかったアスランは、この時まだ自身に降り掛かった不運に嘆くことで精一杯であった。
ここで嘆いても嘆かなくても何も変わりはしない。ならば嘆かせて欲しかった。


「ねぇ慰めてあげよっか?」
まだ騒いでいる女たちの中でも、群を抜いて可愛い女が耳元に唇を寄せて小さく囁いてきた。遊びで付き合える女だ。アスランと寝たことが女としてのハク付けになるくらいにしか考えていないような。
尤もそれは今ここにいる女たちもみんな同じ。良家の子女は年頃になると親の決めた相手と結婚するものだし、アスランを自分を飾る宝石くらいにしか思っていないのだ。当然アスランにそれを責める資格はない。そういう冷めた関係しか望んでないし、一時の慰めにさえなれば面倒なことを言われたくもなかったから。


何故彼女の誘いに乗ったのか。容姿が許容レベルに達していたというのも小さくない理由の一つだ。


だが彼女の髪が。
髪が頬に触れた時、この女にしようと決めた。

それがキラと同じ、柔らかくサラサラの茶色の髪だったからだというのは、アスラン自身まだ無自覚の理由であった。




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