顔合せ




(これからだって変わらない。変わってなんかやるもんか!)
キラは胸一杯息を吸い込んだ。みっともなく声が震えたりするのは死んでも嫌だったから。


「きみもお父上にハメられたみたいだけど、この婚約を申し入れてきたのはそっちだからね」
「~~~~っ!」
アスランが息を呑む気配がする。だが今のキラにはそれを思いやる気は全くなかった。

第一初対面で失礼だったのは彼の方だ。
人の顔を見るなり露骨に“落胆”するなんて、あんまりではないだろうか。
こうなったらキラにだって意地がある。


「僕なんかと結婚なんて冗談じゃないと思ってるだろうけど、お生憎様。そっちからは断ることなんて出来やしないんだから!僕だって“男”に“嫁ぐ”なんて嫌だけど、僕には僕の都合がある。幸い見た目だけは格好いいから、きみで我慢してあげるよ」
「な―――」
「きみみたいな人、女の子が放っとかないでしょ?僕は正妻の座だけあればいいから、二号さんでも三号さんでも好きなだけ侍べらせて、精々ザラ家の跡取り作りに励めばいいよ!」
もうこれ以上話はないとばかりにキラは立ち上がった。
「きみのお父上だって最初からそのつもりでしょ?いいじゃない。利害は一致してんだから!」
「キラっ!!」

「気やすく呼ばないで!!」
「!!」


「きみなんか大っ嫌い!!」


「おい!!」



アスランが止めるのも聞かず、キラは勢いのままティールームを出ていってしまう。




「何だ?あいつは…」
後に残されたアスランは一人そう呟くしかなかった。




これがアスランとキラの、最初で最悪の出会いだったのである。





20090212
4/4ページ
スキ