顔合せ




カラン、とキラの前に置かれたオレンジジュースの氷が音を立てた。
アスランの混乱が少しも整理されることなく継続中であることは、彼が初めて自分の名を口にした後、何も話せないことから容易に伺い知れた。

キラは出てしまいそうな溜息を飲み込んだ。こんなことには慣れっこだったからだ。


いくらこの国で同性婚が認められているとはいえ、それはまだ一部少数の話で、広く一般的なものではない。まして色々と恵まれてきたであろうこの青年が、ウズミの直系とはいえ、男であるキラを婚約者に据えられるとは思ってもみなかったはずだ。


アスハからみればザラ家など只の成金でしかない。しかし家柄だけでは食っていけないこともまた事実。現在経済的に困窮しているとは聞いてないが、ここらでザラ家と縁戚関係を結んでおくのも悪くないとウズミは判断したのだろう。

ザラ家などにあてがうには、ぴったりの自分という存在もいることではあるし。



行くあてすらもなかった自分にとって、それでも初めて何かが出来るかと決心し、こうして来てみたキラだったのだが。

返ってきたのはあからさまな落胆。
それも伴侶となる相手からの。


キラだって別に諸手を上げて賛成した訳ではない。男に嫁ぐなんて話が自分の身に降り掛かっているなんて未だ信じられない。



(幸せになれるなんて露ほども期待してなかった)
キラは内心でそう唱えた。
繰り返し、繰り返し。

卑屈な心の内など決して誰にも悟られる訳にはいかない。
それがキラの矜恃。それだけを、時には盾に、時には矛にして生きてきた。




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