顔合せ




元々饒舌ではないパトリックが殆ど会話に入らなかったのは折り込み済みとしても、お相手であるはずのキラが最初の自己紹介の後ずっと発言しなかったことも気にならないくらい、アスランの混乱は継続したままだった。




気付いた時にはウズミもパトリックも席を外していて。

“若い二人だけにしてあげよう”と言わんばかりに、豪華なティールームにポツンと二人にされていたアスランであった。



(流石に気まずいな)

「え~…と…キラ?」


そこまで気にしてやる必要はなかったのだが、親二人が去った後ではホストはやはり自分の方だろう。
キラはというと相変わらず沈黙したままで、手にしたオレンジジュースを飲むでもなく、じっと見つめてくる。そのアメジストの瞳に気圧されないように細心の注意を払って、アスランは覚えたての名前を呼んでみた。
しかしキラが表情を変えることはない。もしかしてさっきからのウズミとの遣り取りもこうしてずっと聞いていたのだろうか。



パトリックの考えなら不本意ながらよく解る。
どれだけ頑張ったところで所詮は“成金”。それがアスハ家と縁戚関係を結べるとなれば飛び付いたであろうことは想像に難くない。難をいえば相手が男であり、まかり間違ってもザラ家の跡取りなど生むことが出来ない事実だったろうが、そこはよく知るアスランのこと。身を固めたとしても愛人の一人や二人は当たり前だろうから、その女どもに生ませればいいと計算ずくのものなのだ。


そういう男だ。



そしてアスランもそういう男の血を引いているのだ。

冷酷だ鬼畜だと言われても、今更だった。




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