序章




だがアスランには友人たちの素行を挙げ連ねる趣味はない。基本的に他人を咎め立てするほど興味もないし、今それを言っても旗色が悪くなるだけだということも分かっていた。

「まぁ確かに顔と体は結構楽しめたかな。だがあの程度の女なら他にもいる」
だから事実のみを告げたのだが。
「うわっ!出たよ!鬼畜発言!!」
更に友人たちの反響に拍車がかかる。
「…お前らに言われたくないぞ」
「俺ら、アスランほどじゃねーよ」

最早誰も去って行った女のことなど気にもしていない。所詮は同じ穴のムジナなのだ。
それを踏襲した上でのただの言葉遊び。アスランもそうだが、楽しければそれでいい連中なのだ。女が泣いていようが楽しければいい。

そしてふと言った友人の一言は、浮上しかけたアスランの心を更に軽くしてくれるものだった。



「アスランの婚約者って人。きっと苦労するでしょうね」



“二番目”といえどご令嬢であることには間違いない。アスランの実態を知れば向こうから断ってくる可能性だってある。好き好んで苦労などしたくはないだろう。蝶よ花よと育てられた名家の令嬢なら尚更。

アスランはこの手で行こうと考えた。


あの父親に反発するのはいかにも面倒だ。だからこそいきなりだった婚約話も取り敢えず了承した。だが向こうから断るように持って行けば“婚約”自体なかったことに出来る。



そんな一縷の望みを抱きながら、顔合せの日を迎えることとなったアスランであった。





20090203
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