中学生
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「恭弥くん!レイラも!起きてよーう!」
「起きてる…」
「うう、ん。出かけるギリギリまでねる」
マイカが恭弥くんとわたしを叩き起こす午前8時。わたし達の泊まった部屋と恭弥くんの部屋の間の襖はマイカによって開け放たれていた。恭弥くんは起きてるって言いながら布団から起き上がろうとしない。わたしはまだ寝たい。
「おはようございます。お嬢様方。あら、お2人はまだ寝られるのですか?でしたら、お布団を恭弥坊ちゃんの部屋の方に移してしまいましょう。寝られるかたは静かな方が良いでしょうから同じ部屋に、」
「起きる」
恭弥くんが起き上がる。ユリはわたし達が幼い頃そうしてたからって同じ部屋で寝かそうとしないで。わたし達もう中学生だから。
「ほら、レイラ様も起きてくださいね」
ユリに身体を起こされ、ついでに簡易的な体調チェックが入る。それとはわからないように体温や脈、血圧などを診るユリに身を任せながらもっと寝るための言い訳を考えていた。
「…問題ないですね」
ぼそりとユリが言うのをマイカが聞き逃さなかったのが気配でわかった。恭弥くんがあくびをしながら廊下を歩いてゆく。わたしにもあくびがうつった。
「レイラ!」
「起きる、起きるよ」
仕方なく起き上がり、顔を洗いにいった恭弥くんの後を追った。
「今日どこからまわる?」
「変化のあるところが見たいな」
今日は恭弥くんに並盛を案内してもらう予定。留学中に変わったところとか新しくできたお店とか、美味しいものとか。お味噌汁を啜る恭弥くんが瞬きする。
「変化と言われても…そんなにないよ。コンビニが増えたくらいさ」
「えー?」
「まあ、プランは考えてあるから楽しみにしておきなよ」
恭弥くんはドヤ顔でそう言った。それならエスコートはお願いしよう。わたし達のリクエストはひとつだけ。
「夜ご飯はお寿司ね」
「たけ寿司って恭弥くん知ってる?」
「知ってるよ。並盛で僕の知らない店なんてない」
寿司、悪くないねと恭弥くん。恭弥くんの悪くないはとてもいいと言うことなので期待が高まる。楽しみだな。
◇◇◇
いいお天気、晴れてよかった。
本当は夏休みの間にって言ってたのに、今日は暑い今日も暑いというレイラと恭弥くんによって9月になってしまった。あ、マイカです。
それなのにあの2人と言ったら今朝もなかなか起きなくて今日も中止になるかと思っちゃった。
最初の行き先は並盛神社、レイラが階段を上るのを嫌がったのでユリの運転する車で山頂近くの駐車場まで行きそこから歩くことに。恭弥くんは「情緒がない」とぽつり。
「並盛神社はなんか変わった?」
「社の瓦が新しくなった」
「あ、そう」とレイラ。テンション下げないで、恭弥くんにはきっと大事なことなんだよ。
「瓦見に来たの?」
「まさか。君たちの安全祈願だよ」
私達がこれから過ごす並盛で、災なく過ごせるように。恭弥くんって神さま信じないのに、並盛神社は特別なのかな。
そのあとは、商店街を見て回った。恭弥くんが現れた途端お客さんの波は引き、店主たちは店頭で頭を下げた。レイラは快適なショッピング環境だと笑った。お昼は恭弥くんオススメのお店でハンバーグを食べて、午後は動物園へ。ハンバーグ?美味しかったよ。音を聞くっていうのはちょっとよくわからなかったけどね。
動物園は前来た時より少しきれいになっていた。動物が脱走する事件があって、改装したんだって。ライオンの檻に近づくと、ライオンがお腹を見せて寝転がった。恭弥くんが近づくと猛獣も一瞬で甘えたになる。孔雀小屋では羽を見られるかは機嫌しだいと飼育員さんは言っていたけど、孔雀はレイラの目の前でずっとアピールしてた。モルモットとうさぎとのふれあい広場は意外と手入れがされていてみんなかわいい。
「マイカのほうがかわいいよ」
もう、レイラってば。
気づくと恭弥くんの周りにはモルモットとうさぎが集まっていた。餌も持ってないのにさすがの懐かれっぷりだ。
恭弥くんがレイラを手招きして、おとなしい子を見繕って膝に乗せる。おそるおそる撫でるレイラ、触れてよかったね!
動物園のあとは海を見に行った。砂浜はクラゲだらけで、恭弥くんと一緒に流木でクラゲをつついてみたりした。レイラは私たちの行動を怪訝な目で見ていた。
砂だらけになったサンダルと足を洗いに水道へ、片足を上げてフラフラしていたら恭弥くんに腕を掴まれる。
「最後の最後に転ばないでよ」
砂浜で転ばなかったのに、ここで転んでしまったら気をつけて歩いた意味がない。恭弥くんの肩につかまった。
恭弥くんは何故かあんまり汚れてない。
そして、待ちに待った竹寿司!!
わくわくして暖簾をくぐった。
「ご馳走様でした!」
「とっても美味しかったです!」
本当に美味しかった。パパとママにもおすすめしよう。恭弥くんも満足といった顔だ。
山本くんと山本くんのお父さんに見送られてお店を出る。お店を出たらもう大分暗くなっていた。
「また来よーね!」
「ね!」
「…この後少し歩くよ。学校周辺の地理は頭に入れておいたほうがいい」
え?また歩くの?とレイラが不満げな顔をしたところで、始業式で聞いた並中の校歌が流れる。
「…何。今日は用事があるって。……わかった。行くよ」
恭弥くん、着うた校歌なんだ。
「レイラ、マイカ。悪いけど僕は今から行かなきゃいけないところができた」
「えー…」
「並中の生徒が襲われてね」
「えっ!?」
事件だ。
恭弥くんは私たちに車を呼んで帰るようにと言って現場へと向かった。一緒に車に乗っていけばいいのに、歩いた方が早いから。だって。
私たちは仕方なく竹寿司へ引き返す。車を待つ間明るいところにいた方が良いから。
距離にして100メートル強、ほんの2、3分。私たちは日本だからと安心して気を抜いていた。叫べば恭弥くんが戻ってこれる距離にいたということもある。でも、恭弥くんに明るいところまで送ってもらうべきだった。