中学生
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※設定にも書いてますが、雲雀恭弥と夢主ではない人物との恋愛描写があります。苦手な方は飛ばしてください。
恭弥くんは割とすぐに体を動かせるようになって私たちを驚かせた。手先はまだ思う通りにいかないみたいだけど。レイラが恭弥くんの口にあーんって果物を運ぶたびちょっと嫌そうな顔するからその辺りもすぐ回復すると思う。まあ、レイラも恭弥くんに食べさせるのもう飽きるだろうし。もうちょっと頑張って恭弥くん。
「君も食べなよ、ほら」
「えっ?あっ、む」
恭弥くんがレイラからフォークを奪って、果物を口元へ持っていく。一瞬驚いたレイラはそれでも素直に果物をかじった。
「恭弥くんもう手使えるの?」
「当たり前だろ、大した怪我じゃないんだ」
「大した怪我だったよ」
「とりあえず、もういいよ。自分たちで食べな。僕はもう充分だ」
コト、とフォークを皿の横に乗せた恭弥くんはふいっとそっぽを向いてベッドに横になった。なんだ、お腹がいっぱいだから不満げなだけだったんだ。なんだかんだレイラに甘いんだから。
「ふふ」
「何笑ってんの」
「恭弥くんて優しいよね」
「は?」
「優しい優しい」
果物を飲み込んだレイラも笑顔で頷く。恭弥くんは優しい。昔から。私たちの大事なお兄ちゃん。
恭弥くんの病室で3人で話していると、病室の扉がノックされた。そしてカラカラと引き戸が開かれる。そこに立っていたのは。
「サクラ」「 「サクラ姉!」」
「こんにちは。本当はもっとはやく駆けつけたかったのですけど、遅くなってしまってごめんなさいね、恭弥さん」
彼女は恭弥くんの5つ年上のいとこで、私たち姉妹にとっても遠縁の親戚にあたる、枢木桜。優しい笑顔の黒髪の大和撫子。私たちの大好きなお姉さん。
そして恭弥くんの、想い人。
恭弥くんは一瞬嬉しそうな顔をして、そのあと不機嫌な顔になった。
恭弥くんの中で会えて嬉しいという感情と怪我をしてカッコ悪いところを見られたくないという感情がせめぎ合っている。そんな恭弥くんを見て笑いを堪える私たち姉妹。サクラ姉はきょとんとした顔で私たちを見る。
「ご迷惑だったかしら…?」
「迷惑じゃないよ」
恭弥くんだめ。今のとっても食い気味だった。レイラが口の中で舌を噛んでる。
「あら、果物…今食べてたところだったのね。そうですよね、お見舞いには果物と思って。知り合いの農家さんのりんごなんだけれど、美味しいんですよ」
サクラ姉は手に持った紙袋を掲げた。置いておきますね、と冷蔵庫に向かったサクラ姉にレイラが声をかける。
「サクラ姉。わたしりんご食べたいな」
「そう?じゃあ、果物ナイフお借りします」
◇◇◇
サクラが剥いたりんごを美味しい美味しいと笑顔で頬張る双子を眺める。りんごはうさぎがいいとねだったマイカによって可愛らしい造形にされていた。そんなりんごを食べる双子を見守るサクラが、かわいい。
「恭弥さんもどうぞ」
「あっ、サクラ姉。恭弥くんまだ手あんまり動かしたらダメなんだって」
「そうなんですか…」
「だから…はい」
レイラは何を言い出すんだ。マイカも普通にサクラにフォーク渡すな。こういう時いい笑顔するなよ2人とも。いつも思うけど。
サクラがフォークをりんごに刺して、こちらを向いた。ちょっと…。
「ご馳走さまでした」
「マイカも、ご馳走さまでした」
「あら、もういいんですか?」
「うん、ありがとう。サクラ姉」
「私たち、お友達のお見舞いも行かなきゃだから」
「そうですか、ではまた」
「うん、ばいばい」「またね」
双子はそう言って立ち上がり荷物を持った。戸口の方へ歩いて行く。レイラはにやにやしているし、マイカはによによしている。腹が立つ顔だ。
「じゃあね、恭弥くん」
サクラが双子から目を離し、扉が閉まる前。レイラが口の形だけで言うのが見えた。
ご ゆ っ く り
そしてウィンクをひとつ。気の利く双子だ。なんかムカつくけど。