中学生
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結局のところ私達が並中生襲撃事件と六道骸が関係していると知ったのは全てが終わった後だった。事件の全貌を知ると同時に沢田くん、獄寺くん、山本くんが解決に向かっていたことと負傷し入院したことを知った。私達が呑気にお菓子作りに勤しんでいた頃、彼らは壮絶な戦いをしていたのだ。そして、恭弥くんが重傷を負ったことも。
「うそでしょ…」
恭弥くんが怪我を負って意識不明だという事実はレイラに大打撃を与えた。恭弥くんが喧嘩でちょっとした怪我をすることは今までもあったんだけど、凶悪な殺人犯とやりあった挙句意識不明の重傷だ。滅多なことでは泣かないレイラが目に涙をためるのを久しぶりに見た。光が瞳の中でゆらゆら揺れている。こんなに目に見えて動揺するレイラなんていつ以来だろう。
「今手術中だそうだ、骨を何本も折られているらしい」
「…っ病院に」
「レイラ、今から行っても出来ることは何もありません」
「レイラ…」
ママがレイラを宥めるように背中を撫でる。
「明日落ち着いてから、お見舞いに行きなさい」
「うん」
レイラは泣きこそしなかったが、その晩は表情も固くて口数は極端に少なかった。眠る時も寝返りばかり打って寝付けないみたいだったから布団をくっつけて手を繋いで寝た。怖い夢を見たときレイラが私にしてくれること。「わたしお化けは怖くないんだけど」レイラはちょっと笑った。
翌日、花束を買って並盛病院へ向かった。休校になったので知り合いが入院している並中生がたくさん病院に来ていた。ナースステーションで恭弥くんは面会謝絶と言われた。レイラがそんなわけないでしょと微笑むと院長が飛んできて病室に案内される。
「申し訳ございません。連絡が行き届いておらず…」
「構いません。こちらこそ無理を通していただき感謝します」
「いえいえとんでもございません。ご身内は面会可能なので」
「ねえそれより恭弥くんの容体は?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「……」
「命に別状はないし、後遺症も残らないってお医者さん言ってたから」
「……うん」
恭弥くんはまだ意識が戻っていない。全身麻酔の手術と血をかなり流したことでまだ眠っている。
レイラは眠ったままの恭弥くんの側に居続けた。大丈夫なのは頭でわかっていても心配な気持ちは消えない。表情には出さないけど、私には気落ちしているのが伝わってくる。
持ってきた花束を花瓶に生ける間もレイラはベッドの横から微動だにしなかった。私たちにとって恭弥くんはかっこよくてかわいい自慢の幼馴染。特にレイラは昔からあまりケンカや抗争を見てこなかったから、彼女にとって恭弥くんは強さの象徴であり絶対強者なのだ。
◇◇◇
マイカが花瓶と花束を持って病室を出て行く。わたしも手伝いに行かなきゃとは思った。でも離れ難くて。
院長先生から容体を聞いてから病室に入ったけど、恭弥くんの状態を目の当たりにすると胸が痛んだ。わたし、恭弥くんは強いから今回の犯人もすぐ捕まえてくれると思っていたの。恭弥くんをここまで追い詰められる人間がいるなんて信じられなかった。信じたくなかった。
「恭弥くん…」
ねえ、早く起きてよ。