本当は本命かも
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「あ…G」
「よう」
ジョットの部屋で書類を片付けていたら、昨日ふらりと出かけて行って、朝食にも昼食にも顔を出さなかったGが戻ってきた。ジョットはちょうど席を外してる。サボって庭でも眺めているに違いない。別にいいけど。
「ずいぶん遅いお帰りね」
「時間がわからなくて、つい寝過ごしてな」
寝すぎなのか寝不足なのかGはくぁ、とあくびをした。開けっ放しのドアから僅かに吹き込む空気が冷たい。Gはジョットも居ないのに部屋に上がり込んでくる。女物の香水の匂い、絶対女のところだと思っていたけど今ので確信してちょっとむっとした。寝過ごすほど何をしてらしたんでしょうね。
「ナマエは書類整理か」
「見たらわかるでしょ」
ソファから立ち上がってジョットの机に優先順位の高いものを上にして書類を乗せる。戻ってきたらせめてアラウディが送ってきたものだけでも見てほしい。当然Gにも。もうGに読んでももらってジョットに口頭で伝えてもらうのが早いかもしれない。
「ねえ、G」
振り返るとGが目前に立っていた。
「えっ」
驚いて思わず後ずさり、ジョットの机に手をつく。ジョットの机に置いた手に当たったのはさらりとした感触だった。書類のせいで自分の体重を支えるための手が滑る、滑る。その手にGの手が重なった。あったかくて大きな手が、指を絡めてわたしの手を覆う。身体が倒れていくのは止まったけど、真正面にはGの、顔が。
「ちょっ、ちょっと何…」
「……………」
わたしの手を握る手ではない方の腕までわたしの背後に回る。近すぎてGの目が見れなくて燃えるように赤い髪の襟足あたりに目をやった。この距離だと女の香水に混じってGの匂いもわかってしまう。覆い被さられているみたいな状況に心臓がばくばくする。緊張感からGに掴まれていない方の手に力がこもった。すると背後で、チャリ、と金属が擦れ合う音がした。
「…あった」
「えっ」
「オレの時計」
Gはみんなと揃いの懐中時計を掲げてみせた。いつも絶対肌身離さず持っているのに珍しく置いて出かけたからわたしがジョットに預けておいたものだ。
「なんだよ、その顔。何されると思ったんだ?」
Gがでわたしの顔を覗き込む。口元がにやっとしている。さっきまで心臓がばくばくしてたのに今度は羞恥で顔が熱くなった。わたしどんな顔してんだろう。Gの記憶から消去してしまいたい。正直何かされるのかと思ったもの。…ムカつく。ニヤニヤした顔までかっこいいのも、優しい手つきで助け起こされたことでさえも。
「べっ別にっ…そんなこと思ってない、し」
「…くくっ。あはは」
「っこの!女たらし!」
からかわれたことに腹が立ったので、Gを寒い廊下に追い出した。ついでだからジョットを探して連れ戻してきて。こうやって背中を押す分には全然平気だけど、正面から顔を近づけられるのは心臓に悪いんだから。
「あんまりからかってやるなよ。お前と違って純粋なんだ」
「なんだよ。見てたのか、悪趣味なやつ」
「ドア開けっ放しだったからな。なぁG。もし、本当にあいつに手を出すつもりなら……他の女全員切ってからにしてくれよ。でないとお前をぶん殴らないといけないからな」
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