岩男腐向け短編まとめ

(木星旋回、海王星波)
時間遡行からのドタバタ。過去作『新未来は良いとこかしら』の続きものです。メインは木星旋回。海王星波はほんのり要素としてあるだけです。


取り戻したいかニューフューチャー


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20XX/XX/06


1

 (ウェーブマンを含む)我々フィフス8機は、あなた方スペースルーラーズの主張を一時的に認めることにしました。
 あなた方が我々に何らかの重要な情報を秘匿し、あまつさえ大嘘をこいているということを差し引いてもです。あるいは大衆が得られる情報がそれだけであったように、我々もこの段階で一度結論づけることが、悪の名のもとにおける“フェア(公平)”だと考えるからです。

 よって時間遡行装置の仕様の詳細は糾明しません。そんなことはもはや問題ではありません。
 しかし、突如として、錯乱状態のロボット──SRN.005 ジュピターが、我々の基地へ(それも管制塔上空を経由して!)襲来し、セキュリティゲートおよび防火シャッターを破壊、さらにフィフスの談話室でバード・タックルをかましてきたことは、もちろん大問題です。
 あなた方の主張がどれだけ正当なものであったとして、この点は看過できるものではありません。

 ジュピターが件のタックルを「悪気はなく、ハグである」と弁明していてもです。


2

 ジュピターが証言した並行世界のことは、ウェーブマンからも概ね等しい供述を得ることができました。

 上記二機が両組織壊滅寸前に共同戦線を張り、ジュピター側の権限を用いて時間遡行装置を起動、それぞれ同じ世界線、別の時間帯へ意識を移動させたことも食い違い無く証言がありました(なぜジュピターの方が遅い時間へ飛ぶことになったのかについては、納得できる回答を得られませんでしたが)。
 実に荒唐無稽な内容ではあるものの、そも我々やあなた方の過去の所業を考えてみれば、それもまた等しく荒唐無稽なものであり、この奇異は些細なものです。また宇宙全体における地球の鉱物資源の貴重さについても以前聴取した通りでありますので、あなた方以外の何者か、金属素材を求めて破壊活動を行う外部生命体がいることは現実的に考え得ることです。

 我々は、我々とあなた方、両陣営の敗北を見据えなくてはなりません。同時にそれをひっくり返すための幾ルートも検討せねばなりません。どこかの世界線で屈辱を味わった我々とあなた方のためにも。

 ワイリーナンバーズの談話室、保管庫の管理権限は各チーム毎にもっとも若い番号のロボットへ与えられています。フィフス基地に保管されている資材・機材に関してはDWN.033 グラビティーマンが権限を持ちます(当報告書が権限者の直筆ではなく、兄弟機によって代筆されているのは、この権限を一方的、独占的に行使されることを防ぐためです)。
 他チームリーダーには同じくグラビティーマンが連絡済、返答待ちです。Dr.ワイリーに対しては現在、DWN.009メタルマンを通して意向を打診しています。


3

 再三申し上げました通り、我々はあなた方の協力要請を受諾する準備をはじめましたが、該当ロボット──“貴様”が行った暴挙に対し、なんの罰則もないままであるというのは非常に赦し難いことです。

 “おれ”が瀕死の貴様を救出し、捨て身を承知で庇い続け、時間遡行装置のある場所まで護送したことや、それに愛憎と恋慕の情を抱くような要素があったことは何の言い訳にもなりません。今世界線のおれには該当事件の記憶は一欠片もありません。突然のタックルを許容するだけの理由として全く不十分です。

 今後こちらが貴様へ痛み分けとして実行する軽度の報復に、一切の文句を受け付けません。
 また貴様に対してこんなにも丁寧な報告を行うのは生涯でこれっきりです。マジに殺す。


以上

DWN.036 ジャイロマン


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20XX/XX/09 追記

 『生涯これっきり』というのは、我々ロボットにおける人格が、ある一定の連続性を保持し続けている限りを指します。内部データのみを別媒体へ移行した場合も同様です。
 これには機体のあらゆる損傷を考慮しません。メンテナンスでパーツ交換が行なわれたことを理由に生まれ変わったと定義したり、テセウスの船といったパラドクスを持ち出すことは許されません。もう一回殺すぞ。
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