君の痛みも辛さも、分けてほしい
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「あー、もう!」
投げたクッションがボスッと音をたてて壁にぶつかった。
物に当たっちゃ駄目って分かってるけど、そんな事言ってられない。
三ヶ月ぶりの1日オフ、しかも二人とも。
天気が良かったら外に行こうかなって考えて、もし天気が悪かったらお家でゆっくりDVDでも観ようかななんて思ってたのに。
今日の天気?晴れ!溜まってる仕事もない!じゃあ何かって?
生理痛で!動けないの!!
初日から重いのはいつものこと。
でも腰痛が加わるなんて聞いてないし、そこにきて頭痛まで図々しく居座るなんてもっと聞いてない。
そしてそれが何で今日なのかも聞いてない!!
一人でプンプン怒ってたら仕返しのように痛くなってきて、お友達のれいじくん2号をギューッと強く抱き締めた。
「寿印の蜂蜜入りホットミルクを召し上がれ」
モゾモゾと布団にくるまりながらベッドに腰かける。
キッチンから戻ってきた嶺二の手には2つのマグカップ。
片方を私の方に差し出して床に落ちているクッションを拾って隣に座った。
「熱いから火傷しないように気をつけてね」
「うん、いただきます」
ふーっふーっと冷まして一口。
ごっくんしたらまた一口。
「おいしい」
「それならよかった」
残りのミルクもグイッと飲みきってサイドテーブルに置いた。
なんとなく痛いのも和らいできた気がする。
「痛いのちょっと良くなった」
「それは寿印の蜂蜜入りホットミルクのお陰かな~?」
「そうかも」
ちょいちょいと頬っぺたを突っついてくる嶺二は飲み干したマグカップをサイドテーブルに置いてぎゅっと抱き締めてきた。
「お兄さんはね、どんな穂花ちゃんでも大好きだよ。怒ってる穂花ちゃんも笑ってる穂花ちゃんも……痛くて泣いてる穂花ちゃんも。全部大好きだから、僕にも君の痛みを分けて欲しいな」
さっきより少し力が籠った。
「人形のれいじくんじゃ穂花ちゃんを抱き締めてあげることも、泣いている穂花ちゃんを慰めてあげることも出来ないから。いつでも僕を頼って、ね?」
「うん……、れいじぃ……」
朝、約束の時間に来た嶺二を迎えたのは卸したてのワンピースを着て、メイクをした私。
パジャマに素っぴん、うーうー唸ってる私じゃない。
でも嶺二は「穂花ちゃん今日は出掛けるのやめよっか。お腹痛いんじゃない?」って言って私を着替えさせてベッドで大人しくしているように言った。
「嶺二、眠くなってきた」
「薬が効いてきたんだね。寝ちゃってもいいよ?」
「嶺二も一緒に寝よ」
ごろんとベッドに転がって隣をあけた。
ダブルベッドだから一緒に寝られる。
嶺二が入ってきて抱き締めるように腕をまわしてきた。
「おやすみ嶺二」
「おやすみ穂花ちゃん」
目を閉じて夢に飛び立つ数秒前。
何か柔らかいものが額に触れた気がした。
「いい夢が見られますように」
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