第2章
夢小説設定
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細くサラサラで床まで余裕にある長い黒髪。
ふっくらとした愛くるしい顔。
そこには猫のみたいに綺麗な目がクリッとしていて・・・。
その瞳は澄んだ様に輝く黄金の色。
スッと通った鼻筋に温かそうな唇。
首にはあの古くさい鈴が巻き付いて、身体も余計な肉は全くついてない。
そして
全裸だった。
そう気づいた瞬間、日吉はバッと目をそらし、青ざめた顔にさらなる冷や汗がタラタラと流れ始める。
な・・・なんだ!?
どうして女の子が!?
チラッと横目で見ると女の子は自分の手をワキュワキュして、動き具合を確かめているようだった。
日吉の頭の上にクエスチョンマークが沢山浮かぶ。
どうしていいか全く分からない。
考えれば考えるほど頭が真っ白になってゆく。
「おい、人間」
今度は老婆のような声でなく、小さい女の子の舌っ足らずな声が聞こえた。
なっ!?
思わず振り返る。
すると女の子が頬を膨らませて、俺に訴えてきた。
「寒い!着物をよこせ」
若干の命令口調に納得が行かずに、だけどもそのままの格好では自分が困るので
日吉は急いでタンスからジャージ上下を取り出す。
日吉が中学1年生の時に着ていたものだ。
それを女の子に渡すと気慣れないようにモゾモゾと着始める。
着替え終わると日吉の首に淫妖に絡みついてきた。
「ちょ・・・!!」
思わず尻餅をつく。
すると女の子にのし掛かられる形となってしまった。
彼女の長い髪が日吉の頬をかすめてゆく。
だが、女の子の身体はまるで体重が無いみたいに軽い。
「なぁ、わしと契りをせんか?」
可愛い声とは逆に古くさい喋り方に違和感を覚えたがそんなことを気にしているほど彼には余裕がなかった。
「ち・・・契り?」
「そう。契りじゃ」
可愛らしくニコリと笑うが、その顔はどこか恐ろしかった。
契りとはいったいどう言うことなのだろうか。
俺の望みを手伝うと言っていたがそれと関係があるのか?
しかし、こんな訳の分からない奴と契りなんてしたくない。
「断っ・・・」
「ちなみに断ると、口止めとして主の喉元を噛み千切ることになるのう」
サラリと恐ろしいことを言う。
それって・・・殺されるって事だよな?
「チッ、契約すりゃいいんだな?」
「フム、交渉成立といったところか。では・・・」
・・・!?
女の子の可愛らしい唇が日吉の口と合わさる。
すると躊躇なく舌が入ってきて、日吉の舌が彼女の口の中に誘導されるとチクッと先端に痛みが走った。
途端に血の味が口に広がる。
彼女は俺の血をゴクリと飲むと、俺の舌をやっと解放した。
「っ・・・ゴホッ、ゴホッ・・・」
自分の血で俺は咳き込む。
しかし思ったよりもすぐに血の味は口から消えていった。
女の子の方を見ると、ペロリと上唇を舐めていた。
そしてほのかに赤い口を開く
「では主、わしの名前を決めよ」
は?
名前?
「名前がないと主はわしの事を呼べぬだろう」
しかし、そんなことを急に言われても・・・。
俺は必死に名前を考える。
何か材料は無いか。
そう言えば黒猫と会ったところは大きな桜の木があったな・・・。
そして鈴の音・・・。
単純だがその瞬間に名前は決まった。
「桜木 鈴・・・」
俺がおそるおそる口に出すと女の子、いや鈴はニヤリと笑った。
「では我が主様よ。それが今日からわしの名じゃ」
そして鈴は言葉を続ける
「しっかしのー、悪くない名前じゃが、ねーみんぐせんす、とやらは主様には無いようじゃのぅ」
その言葉に思わず反論をしようとした。
が、すぐに止めた。
こいつは俺に饒舌に話しかけてくるが、まだ何者なのか分かってない今、
刺激してしまいそうな事は言わない方がいいだろうと思ったからだ。
しかし、黙っているのもどうかと思い、当たり障りのない言葉を口から滑らせる。
「・・・悪かったな」
すると鈴は目を細め、日吉に向かってサラリと言い放った。
「そんな事思っとらんじゃろ?わかし」
「なっ!?」
どうして俺の名前を知っている!?
・・・名前言ってないよな・・・?
そんな日吉の混乱とは他所にククッとまた喉で笑った。
面白おかしいように。
「お前は何者なんだ?」
俺が真剣にそう尋ねると、彼女はおどけた様子で答えてきた。
「桜木 鈴じゃ」
「なっ・・・そういう意味じゃない!」
日吉が声を荒げると面倒くさそうに布団をゴロゴロし、満月を見た。
コイツ・・・
もしかすると
「そう。俗に言う"化け猫"という奴じゃ」
彼女は目を細め俺に言う。
そんな彼女の表情は寂しそうで、俺を大人しくさせた。
化け猫・・・
長野や佐賀に良く出ると昔は言われていたがどうして今になって・・・
その前に・・・
「どうして俺なんだ?」
「にゃ?」
「どうして俺のところに来たんだ」
そう俺が問うと彼女は口に弧を描き笑う。
まるでどこぞのテニス部部長の人のような笑い方だった。
「どうしてって、我が主様よ。お主がわしに言ったじゃろ?」
「は?」
「”気楽そうだ”と。だから気楽では無いことを証明しに来た」
はぁ?
本当に何を言っているんだコイツは。
俺の言ったその一言だけで俺の望みを叶えようとし、人間に化けたのか?
それだけだったらコイツは相当バカだ。
そう考えている日吉を眺める彼女の黄金の瞳は妖しく光り、日吉を観察しているようにも見えた。
一方の彼は考えるのをやめ、
キュッと身を縮めると鋭い上目で鈴を睨んだ。
そんな様子の日吉を彼女は余裕そうな態度で見据える。
しばらく沈黙が続いたが、先に口を開いたのは日吉だった。
指先を勢いよく彼女につき出す。
「今から俺の質問を全て答えてもらう!」
すると鈴はニヤリと笑って見せ、
座っていた布団に今度はゴロンと寝転がる。
「にゃ、主様の頼みなら仕方がない」
日吉は今までに溜め込んでいた質問を一気に繰り出した。
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