第1章
夢小説設定
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そして時は流れ、下校時間になった。
部室で着替えてる最中に跡部に話しかけられる。
日吉は思わずピシリと気を付けをして、跡部に向き直る。
けれど本人は汗をタオルで拭きながらというラフなスタイルだ。
跡部は日吉の方を見ずに、ロッカーから制服を取り出しながら言った。
「おい日吉。お前、結構上達したんじゃねえの?」
「・・・ありがとうございます」
当たり前。
日吉はそう思っていた。
テニス向上のために早朝練習までしているんだから。
これで上手くならない方がおかしい。
全ては跡部部長を超えるため。
下剋上をするために・・・。
そのためなら俺は努力を惜しまない。
この人だって努力でここまで強くなったという話も聞いているし。
「フン、この調子なら部長になっても問題はなさそうだな」
そう言って制服を着ながら去ってしまう。
さらりと流される“部長”という名の地位。
それにグッとプレッシャーを押し付けられた気がした。
けどただ譲ってもらう地位じゃあ俺が許さない。
奪い取らなければ・・・。
着替え終わり、部員の誰よりも先に帰路に着く。
もう日が傾き、空は夕焼けで赤く染まっていた。
桜は相変わらず綺麗に舞っている。
しかし日吉はさっきの跡部の言葉が頭から離れないでいた。
“この調子なら部長になっても問題はなさそうだな”
日吉はフゥ・・・とため息をついた。
まだ自分は部長になるべき存在ではないと思う。
確かに2年生の中じゃあ強いかもしれないが、たかが他の2年生や鳳を倒しただけで認められた存在。
早く、跡部さんを倒してシングルス1を勝ち取りたい。
その想いでいっぱいだった。
ふと横を見ると書店を見つけた。
気持ちを落ち着かせるために立ち読みをする。
が、全く集中できない。
ただ雑誌のページをパラパラとめくるだけ。
当然内容は入ってこない。
「チッ」
雑誌を元の場所におき、書店を出る。
全く、何のために寄り道をしたのだろうか。
時間の無駄となってしまった。
先程まで真っ赤だった空がもう暗くなっている。
そんなに書店にいた覚えはないが、時の流れは早いものだと改めて実感する。
再び帰路に着くとサァッと風が吹き、桜の花びらが頬をかすめる。
脇に見える公園に大きな桜の木があった。
街灯にさらされ、幻妖に輝いて見える。
そこからヒラリと舞う花びらはキラキラと俺を誘う。
つい桜の誘惑に負け、公園に立ち寄った。
日吉以外は誰もいない静まり返った場所に、桜の声だけがサワサワと聞こえる。
「ここは、落ち着くな」
しばらく傍にあったベンチに座っていると、より一段と強い風が吹く。
木々もザワザワと葉や花びらを乱れ飛ばす。
思わず目をつぶると、聞きなれない音が響いた。
“チリン・・・”
「・・・」
ハッと目を開くと目の前に真っ黒な猫がいた。
いつの間に・・・?
首には錆びれた鈴が寂しそうに付けられていた。
耳をピクピクと動かし、大きな瞳で俺を見てくる。
・・・何故か目が離せない。
「・・・にゃあ」
猫は可愛らしく鳴くと、ふあっとあくびをした。
その瞬間、緊張は溶ける。
なにビビってるんだ。ただの猫じゃないか。
「お前は気楽そうでいいな」
思わずそう言うと猫は首をかしげ愛くるしく見つめてきた。
それが、君と俺の出会いだった。
あまりにも唐突で、少し戸惑うほどの。
第1章 END