第4章
夢小説設定
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「どうじゃ、驚いたか?」
先ほどとは打って変わってしゃがれたような老婆の声。
俺は失笑に落ち着いていた。
なるほど、日吉は化け猫に恋をした。
それは奴の趣味を考えれば何となく受け入れることができた。
当然だ、と俺が呟けば、一匹の黒猫は満足そうに“にゃあ”と鳴いた。
元に戻っていいぞ、と俺が口ずさめば黒猫はすぐに人間の形へと戻った。
素っ裸で
恥ぐらい知れ、と思ったが、たかが少女の身体に差して興味はないのでワンピースを拾い上げ
裸の少女に手渡した。
というかグランドピアノに裸で乗ってんじゃねーよ、というのが本心だったが。
鈴は日吉はこれで動揺したんじゃがのう、と面白そうに俺と同様にククと喉で笑った。
「フン、約束は守る。制服や教科書等は俺様が手配する。感謝しろよ」
「けーご、ありがとう!」
そう言って俺に飛びながら抱きつく。
思わず腕に乗せると少女は嬉しそうにはしゃいだ。
そして何となく下の名前を屋敷の奴ら以外にあまり呼ばれたことのない俺は一瞬ドギマギしたが、
ああ、と一言呟いた。
そして言葉を追加する。
「あと、今日はここへ泊まっていけ」
「にゃ?どうして?」
首をかしげる鈴に俺は口元に弧を描いてこう言ってやった。
“サプライズの方がアイツも喜ぶだろ”
と。
そう俺が少女にそう言えば鈴もいたずら顔で笑って頷いた。
――――――。
「という訳だ。理解したか」
「さぷらいず成功じゃな!」
理解したには理解したが・・・。
何となく不意に落なかった。
あまりにも話が出来すぎているような気がして。
だけど俺は跡部さんも鈴も嘘をつく様な人たちじゃないと思った。
ありがとうございます、と跡部さんに礼を言えば、
こちらも楽しませて貰った、との大人の対応。
鈴は人の心配もよそに幸せそうにケーキをつついていた。
とにかく、無事で良かったと再び安堵した瞬間でもあった。
食堂もお昼になるにつれ人が増えていき、俺たちは目立たぬよう早々と解散した。
食堂を出る途中、跡部さんが鈴に、
“今日の部活に来てみな、きっと面白いものが見れるぜ”
と余計なことを鈴に吹き込んで、片手を上げて去っていった。
鈴もそんな跡部さんの後ろ姿に元気よく手を振り返す。
「お前、後でキチンと跡部さんに礼を言っておけよ」
「わかっとる!これは感謝してもしきれぬほどじゃ」
そう笑顔で俺を見上げた。
そんな彼女の微笑みをいつの間にか楽しみにしている自分がいて、
嫌になった。
これからも面倒なことになるんじゃないか。
コイツの性格だとまた何かをやらかしそうで非常に怖い。
いつか絶対にやるに違いない。
たとえば・・・
今日の午後の部活、とか。
コイツは見る限り行く気満々だし、跡部さんもきっとそのつもりで準備をしているだろう。
面倒なことにならなきゃいいが。
“いつか絶対にやる”
いつか、とはいつなのだろうか。
そう考えた時に、
“コイツはいつまで居るのだろうか”
という疑問に辿り着き、その考えを
すぐに消した。
出会いもあれば別れも来る。
最初は面倒だと思っていた気持ちもいつの間にか消え失せているのに気がついた。
これからの生活を何となく楽しみにしている自分がいる。
それに思わず失笑した。
ならば、とことん楽しんでみようか。
俺はまっすぐ前を見据える。
第4章 END 2014/1/21