第4章
夢小説設定
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「おー跡部、おはようさん」
教室へと俺が入れば雌猫の歓喜の悲鳴と共に、丸メガネの忍足が振り向きざまに挨拶をする。
俺はそれに一言返すと奴は俺に手を招く。
声も小さくさせながら。
・・・なんだ?
疑問に思いつつも奴の元へと行けば、アイツは見られたら困るようにソロソロと周りを見渡した。
口元が見えないように手で隠し、忍足は言った。
「日吉の様子がおかしい」
「は?」
忍足の開口第一声で俺はすかさず眉を寄せた。
それはこんなに隠れながら話すことか?
それにアイツはいつもおかしいじゃねーの。
下剋上に目覚めた時期が3歳とは流石の俺も正直引いたもんだ。
俺が何を言っているのかが分からない、とに目線を送れば、
奴はニヤリと面白いように口元に弧を描いた。
「心ここにあらず、って感じやろか。アイツらしくないと思わんか?」
「まあ・・・な」
日吉はいつも己の目標に向けて日々鍛錬を積み重ねている。
下剋上、下剋上・・・とうるさいが。
そんな日吉の集中力を切らすような大きな出来事があったということか。
少々の事だったらそこまで肝要にならないだろう。
直接本人に聞いてみるか?
いや、やめておこう。どうせ、とぼけるに決まっている。
“跡部さんには関係ありませんよ”
そう言いそうだ。
素直な奴じゃあないしな。
「なあ跡部、これは俺の推測なんやけど・・・」
「アン?言ってみろ」
俺がそう言うと忍足は一瞬俯いた後、
自嘲気味に少し微笑んで俺に口を開いた。
「日吉な、恋、してるんとちゃうかなーって」
「はあっ!?」
思わず大きい声で反応してしまう。
俺が飛び切り目立てばクラスの奴は気にするようにコソコソとしだす。
忍足が慌てたように口元に手をやり、静かに!のポーズをとった。
そして俺の腕をつかみ自身へと荒々しく引き寄せた。
悪いと呟き、俺は言葉を続ける。
「それ本当かよ」
「いや、な。日吉が朝練の時に“すず”って呟いてるの聞いてしもてなぁ」
これって女の名前ちゃうのん?
そういって忍足はメガネを押し上げ、瞳を鈍く光らせた。
日吉が、恋?
“すず”という女に・・・。
俺もその女の名前を呟けば、奴はコクンと頷いた。
そしてその名を口に出した途端、朝の少女が俺の頭の中で蘇る。
それは、気のせいか?
しかし、関係がありそうで仕方がない。
今日あったことを無理やり結びつけるのはどうかしている。
・・・そもそも根拠がない。
しかし、心の奥底でこの二つの出来事を結ぼうとしている俺がいた。
日吉が、恋、か・・・。
似合わねえな。一生恋愛には縁のなさそうな面構えのような気がする。
それに、あんな無愛想な奴に惚れる女なんているのか。
・・・いるか。
世界中探せば物好きな奴もいるだろう。
それからというものの、学校が終わるまでの時間、この今日の朝のことが頭から離れなかった。
俺には関係は無いのに。
どうしても心がそっちへ行ってしまう。
授業中にふと窓の外を見れば、
黒くサラリとした髪を翻しながら走る少女の姿が
俺の脳裏で再生され、より印象づけた。
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