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跡部先輩が生徒会室のドアを開ける。
廊下から差し込んでくる夕日が眩しくて、私は目を細めた。
そこに間の抜けた声が聞こえてくる。
「よお跡部~。もうええんか?」
ゲッ!と私もソファーから立ち上がり廊下へダッシュで出る。
そこには”全員”いた。
廊下に座り込み、中から持ち出したであろうケーキやピザを食べているレギュラー陣達が。
いや、もう元レギュラーか。
忍足先輩はピザを口に含み、がっくん先輩はケーキをモリモリ食べたのか咀嚼しながらも口元に生クリームがべったり。
ジロー先輩はいつもの通りに廊下で雑魚寝。
鳳君、宍戸先輩、日吉と樺地君の4人でUNOをしていた。
傍らには榊監督と滝先輩がシャンパン…のような炭酸リンゴジュースを飲みながら歓談している。
本当に全員揃っていた。
こんな全員が近くにいたっていうのに、私は先輩と生徒会室で何を…っ!
この時ようやく、目隠しされて入ったときに退出していったのがこの人たちだと気付いた。
ぐあ~~!!と恥ずかしさでやられている私をよそに、跡部先輩は流暢に話す。
「ああ、忍足。大満足のプレゼントだったぜ」
「そら、ようござんした」
忍足先輩が私のそんな様子を尻目に見、笑った。
え、待って待ってどゆこと??
私がまた疑問に襲われていると、ケーキを食べ終わったがっくん先輩がニカッと笑う。
「跡部に誕プレ何がいい?って聞いたら聖がいいって言うからよ~」
「リボンに包んで渡してやったちゅーワケや」
まさかすっぽかすと思ってなかったから焦ったけどな。と忍足先輩が付け足す。
足がわなわなと震えた。
え?てことはつまり?
日吉が私の方をちらりと見、わざとらしく溜め息を吐く。
「お前が跡部さんの事を好きなのは周知の事実なんだよ」
そう言いながら日吉が「UNO!」と手札を捨てる。
日吉以外の全員、うんうんと頷く。
え?と私は思わず跡部先輩を見上げた。
「バーカ。俺様の
さも面白いようにクククと笑う。
そしてあろうことが皆の目の前で私の手の甲にキスをした。
「ひっ!ひえええ!」
バッと振りほどくと彼はお得意の高笑いをする。
さっきまでは蕩け顔だったのによ、と耳元で囁く。
恥ずかしさで跡部先輩に腹パンを繰り出しても、全然効いて無いみたいだった。
そんな私たちも見て、榊監督がコホン!と咳払いをする。
やばい!怒られる!!と姿勢を正せば、意外な言葉を掛けられた。
「…二人は部の功労者だからな。今回は目を瞑ろう」
榊監督にまで、私の仕事を認められてると思っていなかった。
私は思ず固まる。
そんな私に跡部先輩が声を掛けた。
「そういうこった。自分の仕事に自信を持つんだな」
ぱちんとウインクを決める跡部先輩。
こういうキザな行動も絵になる人だから困る。
かっこよすぎてムカつく。
私は生徒会室へ踵を翻した。
「ご迷惑おかけしました!パーティーの続きしましょう!」
私がそう言えば、みんなやれやれと腰を上げる。
さっきまで静寂に包まれていた生徒会室が一気に賑やかになる。
こんな日がいつまでも続けばいいのに。
一か月後には、みんな…。
悲しさをグッとこらえて、パーティーを楽しんでいると跡部先輩が横に座ってきた。
彼もケーキを食べながら、私に言う。
「メールもする。電話する。二度と会えないワケじゃねえ。…門出を祝ってくれるな?」
彼は私に優しく微笑む。
私は頷いた。大丈夫。これからも会える。
いい子だ。と跡部先輩に撫でられ、口にケーキを突っ込まれる。
それはとても甘くて、美味しかった。
END