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「あーヤバい!次はあれやって…これやって…」
授業を終えた放課後に廊下でバタバタと忙しなく移動する私。
大量の書類を抱え、テニスバックを背負って移動する私は氷帝テニス部のマネージャーをしている。
今年、全国を順々決勝で敗退してしまった氷帝。
そのレギュラーを含めた3年生が部を退き、今いる2年生達にテニス部の引き継ぎを終えたばかりだった。
私も今は2年生。氷帝テニス部をあと1年ちょっと、サポートしなくてはならない。
私はそんな部の切り替わる真っ只中、あくせくと書類を運び、次のメインレギュラーである2年生とミーティングを重ねている日々。
まだこんな生活が始まって1週間も経っていないけど、連続してこんな日々が続いていると、この忙しさにも自然と慣れてしまうものだった。
ついさっき私はいつもの通り、職員室の榊監督の元へ行き本日分の書類を受け取った。
失礼します!の去り際に榊監督からなんだか声を掛けられそうな雰囲気を察したが、動作の流れでそのまま職員室から出てきてしまい、廊下を早歩きしてる最中だ。
なんだろ、榊監督が他に用がありそうだなんて珍しかったな…。
そんなことを考えてるうちに靴箱に着き、靴を履き替えパタパタと部室へと急ぐ。
「おはよーございまーす!」
正レギュラーの人たちが使う部室のドアをガシャン!と開ける。
が、そこには誰もいなかった。
あれ??いつも鳳君とか、日吉が座って話したりしてるのに…。
書類を一旦会議室の机にドサッと置く。
隣の部屋のロッカールームを覗いてみても誰もいなかった。
あれ~~??今日部活休みじゃないはずなんだけどな…。
取り合えず他の準レギュラーや部員たちにも聞こうと隣の棟へ向かう。
「おはよーございまーす、レギュラー陣いないんだけど、何か知ってる?」
ドアを置けながら聞くと、準レギュラーや他の部員たちはしっかりと部室にいた。
みんなキョトンとした顔で私の方を見ている。
え?と思わず私の方もキョトンとしてしまった。
「え、あの、倉永が聞いてないワケないだろ?」
そう戸惑いながら私に話しかけてきたのは準レギュラーの海田君だ。
凄く訝しげに私を見ていた。
え。何か聞いてたかな。
ハテ?と頭をひねる後ろで、部室のドアがバァン!!と音を立てて開かれる。
ビックリして振り返れば、そこには見慣れた青髪と赤髪の先輩たちがゼェハァと膝を折っていた。
「あーーー!忍足先輩にがっくん先輩!探したんですよ!!」
「ドあほぅ…!探したのはッ…こっちの方やで」
「校舎中駆けずりまわったんだかんな!!」
本当に息も切れ切れに、制服のあちこちを乱していた。
どんな勢いで校舎を駆けずりまわったのか分からないけど、え?私を探して??
この二人を前にしても訳が分からないような顔をしている私に"ブチッ"と堪忍袋の緒が切れる音がした。
「岳人ぉ!お前は足持ち!」
「了解だぜ!」
ガッと忍足先輩に上半身を抱え込まれて「ひぇっ」と思わず声が出る。
そこからがっくん先輩に足を抱えられると、私はさしづめ丸太の如く、えっさほいさと彼らに運ばれた。
「ひ、ひぇぇえ!!自分で歩く!歩くってば!!」
もがくにもがけず、情けない姿で移動する。
流石に両手はスカートを抑えるのに必死だ。
今まで居た部室をチラッと見れば、ドアから皆それぞれヒョッコリと青ざめた顔で私が運ばれていく様子を見送っていた。
先輩たちは流石に2人して私を運んでいるからか、足取りは軽く、スタコラと学園内を移動する。
時折ほかの生徒たちから送られる好奇な視線から逃れるために、私はずっと目を閉じていた。
恥ずかしい!恥ずかし過ぎる!!
頭の中はグルグルと羞恥となぜ自分がこんな目に遭っているのか、それがひたすら巡っていた。
対して2人は会話もせず、ひたすらエッサホイサと足を動かす。
…なんかトレーニングの道具にされてる気持ちにもなってきた。
そんな移動にも身体が順応しそうになってきた所で、がっくん先輩が私の足を下ろす。
足がシュタンと廊下に着いた所で忍足先輩が私の事を解放すれば、そこには見慣れたドアがあった。
「あ…生徒会室…?」
私がポツリと呟くのを他所に、2人は急げ急げ!!とドアの前に置いてあったトートバッグから帯のようなものを取り出す。
なんだあれ??
私が訳もわからず様子を見ていれば、2人がこちらに向かって突進してきた。
ッ?!?!
声も出せずにびっくりしていると、がっくん先輩が私の周りでひたすらアクロバティックにジャンプをしながら、帯…でっかいリボンの紐を私にシュルシュルと巻き付けた。
忍足先輩はそのサポートというかフォローする様に、私に巻かれ始めたリボンを各所整える。
「なに?!なになになになに?!?」
もはや恐怖を感じていた私は半ば涙目でされるがままになる。
がっくん先輩がリボンの大半を私に巻き付けた所で、忍足先輩が「ここが勝負どころや…」と真剣な顔で結びに掛かる。
ギチギチ…までとは言わないが中でもがく事も難しいほどキッチリとリボンに包まれてしまった私はもう大混乱だ。
これでよし。と忍足先輩の綺麗なリボン結びが決まった所でがっくん先輩がこれこれ!と何かをトートバッグから出した。
チラッとしか見えなかったけど、ひげメガネ…??
よくあるジョークグッズの一つ、あのメガネに鼻とヒゲが付けられたあれ。
それをがっくん先輩に装着させられる。
「ってなにこれ!レンズの部分見えないじゃん!」
「見えんでええんや。いいか、ここから先暴れるんやないで…」
忍足先輩のひっくい声がボソッと聞こえる。
一体何?!何が始まるっていうの?!
私はその言葉に妙に緊張してカチコチになってしまった。
行くぞー!というがっくん先輩の声でまた身体が宙に浮かぶ。
さっきの持ち方とはなんか妙に違う気がしたが、視界が阻まれてよく分からなかった。
そのままギィッと生徒会室の扉を開く音が聞こえれば、数人のどよめく声が聞こえる。
なに?!誰?!怖いよ〜〜。
そのまま暫く運ばれて、2人の「せーの!」の声でようやく私は何処かへと着地する。
…?
妙に座り辛い。
横たわっているというより、なんだろう。手すりのある椅子に横に座ってる感覚?
足が床につかず、投げ出されている。
にしたってお尻の下のクッションが柔らかい…?
私が状況を把握しようと辛うじて分かる感覚を探っていると、「はい!みんなは出た出た〜!」とがっくん先輩の声が聞こえる。
暫くザワザワと声が聞こえていたけど、バタン。と閉まる扉の音で、静寂に帰る。
「??、????」
声にならない疑問の符を投げかける。
私が何も見えない視界でキョロキョロすると、ハァ…という誰かのため息が耳元で聞こえた。
瞬時にビクゥ!とすれば、そっとひげメガネが外される。
ちょっと目が眩んだけど、視界に飛び込んで来たのは。
「…よぉ、久々だな」
「あ、あああ、跡部先輩?!」
仏頂面の跡部先輩が私のすぐ近くにいた。
というか、私が先輩の上に座っていた。
声にならない悲鳴が出そうになるところを、すんでのところで耐える。
先輩から降りようにも、巨大なリボンで体中グルグル巻きにされているせいで、身動きが取れなかった。
シン…と静寂が生徒会室を包む。
何も話さない先輩を尻目に見つつ、部屋を見渡す。
テーブルには食べかけのケーキやジュース、どこかでテイクアウトでもしてきたのだろうチキンやピザが雑多に置かれていた。
あ…そうか。今日は跡部先輩の…。
「あの、先輩。お誕生日おめでうとございます」
跡部先輩は何も言わない。
そりゃ怒って当然だ。
氷帝きっての人気者、氷帝テニス部の前部長、そして現生徒会長、そんな見事な肩書を持つ彼の誕生日を忘れていいことがあるだろうか。
いや、ない。
頭の中で習った古文の文法を用いて反省する。
そんなふざけたことでもしていないとこの空気に耐えられない。
恐る恐る先輩を見ると、冷ややかな目で頬杖をして虚空を見つめていた。
ドクン、ドクンと冷や汗が出る。
今までの跡部先輩の私に対しての態度とはまるで違う。
こんな風に冷たくされたことはなかった。
いつも気にかけてくれて、微笑んでくれて…。
そんな先輩が、今、私に冷たい。
ただ、誕生日を忘れてただけじゃなさそう。
心当たりは、残念ながらあった。
「…お前、今まで俺を避けてただろ」
ドキン!と心臓が反応する。
そうだ、私は、全国大会が終わった後から跡部先輩の事を避けていた。
何故か。
そう聞かれたら、なんて答えたらいいんだろう。
大会後、先輩の顔を見ると、凄く悲しくて、切なくて、涙が零れそうになってしまっている自分に気付いた。
自分がそんな気持ちにならないようにする為。と言ってもまだ納得してくれないだろう。
問題はなぜ、私がそんな気持ちになってしまうのか、なんだけど…。
正直言ってよく分からなかった。
跡部先輩の顔を見ると私は…、なんだか胸が苦しくなる。
「避けて…ました!避けてました!」
「なんで開き直ってんだよ」
自分の気持ちに気付きたくない。
そんな気持ちからヤケになってしまったけど、そんな私の返答に跡部先輩は可笑しいようにフッと笑っていた。
…まただ。今、心臓が、心がキュッと苦しくなった。
笑ってる跡部先輩を見るのは嬉しいけど、自分の心臓が変になるのが嫌だった。
彼は笑った後にスッと冷ややかな表情に戻る。
それから私の顔をジッと見た。
距離が近い。それは私が先輩の上に座っているから。
彼は私の顔を見た後に、また視線を外した。
少し遠くを見つめているようにも思えたけど、彼はそのままポツリと話した。
「お前に伝えなきゃいけないことがある」
その言葉がスッと私の耳に届く。
直感的に、聞きたくないと思った。
聞きたくない。嫌な予感がする。
跡部先輩も、なんだか神妙な顔つきをしていた。
私が何も答えずにいると、彼はスゥと息を吸って、声を出した。
「来月から、U-17選抜合宿へ行くことになった」
「…U-17選抜合宿?」
聞き慣れない単語に、私がオウム返しの様に聞き返すと先輩が説明してくれた。
高校生テニスプレイヤーたちの合宿に、中学生テニスプレイヤーの代表として参加するための招待状が送られてきたらしい。
他にも青学、立海、山吹や不動峰からも数名参加するみたい。
つまりテニス強豪校から選抜された中学生メンバーが高校生メンバーと共に高め合うのだ。
「す、凄いじゃないですか!頑張ってきてください」
「ああ、ありがとよ。どんな合宿か想像がつかねえが、暫く学校は公欠だな」
あ、そっか。合宿って事は暫く跡部先輩と会えないんだ。
また、心がうずく。なんだかとても気分が悪い。
なんで?跡部先輩がテニスを続けられることはとても喜ばしいことなのに。
言葉だけで応援して、心は全く喜んでいなかった。
むしろその逆。
「でも、年末とかには終わるんですよね?」
「さあなあ。中学生が参加するのも前代未聞らしーぜ」
他人事のように跡部先輩はつぶやく。
私は気が気じゃなかった。そんなに?そんなに長く合宿するものなの??
だってあれだよ?中学生って義務教育中だよ?高校生とは違うんだよ??
私が先輩に「勉強は…?」と聞くと、どうやら合宿と言ってもテニスだけするという事ではないみたいで、しっかり授業はあるみたいだった。
跡部先輩は思い出したことがあったようで、「あぁ…」と声を出して、特別気にも留めず流れるように言った。
「まだ決まったわけじゃねえが、高校は
「…!!」
「合宿が終わって、そのまま
跡部先輩は本当に他人事みたいに物を言う。
本当に、こっちの気も知らないで。
私だって、なんでこんなに気持ちがぐちゃぐちゃなのか意味が分からなかった。
もう、取り繕えなかった。
ボロボロと涙がこぼれてくる。
ああ、跡部先輩の前でこんな風になりたくなかったから、避けてたのに。
本当は毎日会いたかった。毎日喋りたかった。
先輩の声を聴いていたかった。先輩の視線の先は、私であってほしかった。
それが、あと一か月??あと一か月しかないの?
私ってば、馬鹿だ。こんな、先輩を傷つけるようなことして、なのに自分が泣いて。
せっかくの期間も、こんな意地を張っていたせいで無駄にしてしまった。
リボンに包まれているから自分で自分の涙も拭けずに、ボタボタと自身の身体に落としていた。
先輩はそんな私の様子をジッと見つめたかと思えば、ブハっと噴き出して笑い始めた。
????
人が泣いてるのに笑い出しますか普通??
「お前、そんな有様にまでなる癖に自覚ねえのかよ。こりゃ傑作だぜ」
「…グスッ、じ、自覚って?」
「俺様の事が好きな、自覚だよ」
跡部先輩が指で私の涙を拭う。
私は頭の中が真っ白になった。
跡部先輩を、好き?私が??
「ち、違いますよ!そんな、そんなワケ…」
「じゃあなんで泣いてんだ」
「それは…、跡部先輩と会えなくなるのが寂しくて…」
「なんで俺に会えないと寂しいんだ?」
先輩の優しい声の問いかけに、グッと言葉に詰まる。
跡部先輩と会えないとなんで寂しいか、そんなの決まってた。
今までの色んな跡部先輩の試合が頭の中でフラッシュバックする。
先輩はキラキラと、輝いていた。
「先輩の美技に酔えなくなっちゃう…」
私が涙声でそう答えると、跡部先輩は驚いたように目を見張った。
それから愛おしい物でも見るかのように微笑むと、私の頬にキスをした。
え!?今…
思わず身体が跳ねる。
「かわいいよ、お前。いいぜ、とことん酔わせてやる」
私の涙を拭っていた手でそっと頬を撫でられる。
先輩の視線は熱を帯びていた。
初めて見る跡部先輩の表情にドギマギする。
彼が姿勢を整えると、私はそのままズルっとお尻が滑り先輩の胸元へと顔が埋まった。
そのまま、跡部先輩に覆い被さられ、抱き寄せられる。
もう鼓動がどうにかなりそうだった。
ずっと一緒に居たかった跡部先輩に抱きしめられてる…。
とても温かくて、とても心地よかった。…凄くいい香りがする。
でもどうして先輩が私にこんなことをするんだろう。
跡部先輩の胸元で私がモゾ…動くと先輩から少し解放され、目が合った。
「俺は好きだ。聖の事が」
いつもの、優しい表情の跡部先輩だった。
いつも私に微笑みかけてくれる…。
…えっ!あっ!!
顔がボン!!と赤くなるのを感じた。
そんな私の様子を見て跡部先輩は意地悪そうに、だけど少し嬉しそうにクククと笑っている。
つ、つまり跡部先輩は前からずっと私の事を好きでいてくれたって事?
チラ…と跡部先輩の方を見れば、またニコリと笑いかけてくれ、髪を撫でられる。
…!…!?
理解できたようで、全然理解できなかった。
先輩が!?私を??どうして。
「なんでって顔をしてるな…。ま、お前には分からねえんだろうが」
私の髪をさらりと退け、首筋にチゥ…とキスされる。
彼の唇が押し当てられた部分がずっと熱かった。感覚がいつまでも残る。
どんどん頭もほわほわしてきて、何が起こっているのか分からなかった。
「男ってのは単純な生き物でな…。キラキラした目で見つめられると期待に答えたくなっちまう」
「あ…」
「期待に答えたら次は"もっと俺様を見ろ"ってな。相手が嬉しそうにしてくれたら、俺も嬉しくなる」
「でも、そんな女の子、跡部先輩の周りにはたくさんいるじゃないですか…」
私が跡部先輩の顔を直視できず俯きながらそういうと、顎を手で持たれてグイと上げさせられる。
お互いの視線が混ざり合う。
先輩はまた、熱の籠った瞳をしていた。
「雌猫は沢山いるが、お前は一人だろ?」
ニヤリと口に弧を描く跡部先輩。
いつもの勝利を確信した時の笑みで、なんだか私は負けた気持ちになった。
こんな先輩の勝ち誇った表情が、私は大好きだった。
「お前は純粋に俺様のテニスに酔ってくれている。それがたまらなく嬉しいんだよ」
…今度はおでこにキスをされる。
こんなにも私を好きでいてくれてるのに、逃げてばかりじゃだめだ。
私はリボンの中で手をギュッと握り締めた。
跡部先輩に先に言ってもらっちゃったけど、私も。私だって。
「私も跡部先輩の事が好きです。跡部先輩の、テニスも」
声が震えた。でも言い切った。きちんと先輩の瞳を見て。
きっと先輩みたいに私も瞳に熱が籠っていたのかもしれない。
跡部先輩もまた、愛おしそうに微笑む。
「ああ、知ってる」
先輩の唇と、私の唇が触れ合った。
熱い。
ドキドキと、鼓動が収まってくれない。
少しの水音と共に離れれば、ジンジンと熱を帯びていた。
ただ、唇を重ねただけなのに、とても熱かった。
顔も、とても熱い。
「反応が可愛すぎるぜ、全く」
彼はそう言うと何度も、何度も唇を重ねた。
私も会えなかった分…避けてしまっていた分を贖罪のつもりで精一杯受け止める。
キスをしながら、跡部先輩に強く抱きしめられる。
こんな幸福なことはないと、私は心から感じていた。
不意に彼からのキスの雨が止む。
ふと目を開けば、頬を染めた”らしくない”跡部先輩が目の前にいた。
「やべえな。止まらなくなっちまう…」
「ッ…!」
「お前とずっとこうしていたいのは山々だが、俺様のバースデイパーティーの途中だからな」
また、今度な。と再び軽くキスをされる。
頷かずにはいられなかった。
跡部先輩はそのまま私を抱きかかえて、生徒会室のソファーへと移しリボンを解く。
シュル…シュルと解きながら跡部先輩は口を開いた。
「そういえば俺が暫く公欠を取る話はしたな」
「あ、はい」
「学校も後期へと切り替わっている。次の生徒会長も必要だ」
そうですね、と私は世間話程度に聞き流していたけど、突如としてそれは勘違いだったことが分かった。
「お前を次の生徒会長へと俺が推薦してやる」
「…へ?」
「副会長は日吉に頼んである。アイツも合宿はあるがこれぐらいは両立してもらわねえとな」
えっ?えっ??と混乱してる私をよそに跡部先輩は言葉を続ける。
「お前のマネージャーとしての働きっぷり、しっかり評価してるんだぜ」
「で、でもこれと生徒会長の仕事はまた別ではッ?」
「今日だって俺様のバースデーを忘れてマネの仕事とは、泣けるじゃねえか」
なあ?と悪戯な笑みで顔をのぞき込まれてはもう私に言い返す術はなかった。
リボンを解き終わり、跡部先輩が私に手を差し伸べる。
「これからみっちり、俺様が仕事を教えてやる」
先輩の手を取ると、グイっと引っ張られ先輩の胸の中にすっぽりと納まる。
くらくらと彼の香りに酔いしれる。
彼の腕の中でポーっとしているとまたキスが降ってきた。
ん…と受け入れると先ほどとは比べ物にならない程、熱いキスだった。
柔らかい彼の舌を感じる。
「…!!ん、んぅ」
掻き乱される。
彼の胸を叩いても、熱い抱擁で身動きが取れなくなる。
息が苦しくなる、ハァっと息を吸ってもまた彼の唇で塞がれた。
彼も息苦しそうに、だけど私を強く求めてくる。
抱きしめていた手が私の腰をなぞり、太ももに触れた。
ビクッ!と身体を震わして目を開けば、やはり彼は勝ち誇った顔で、さらに私に深いキスをする。
段々と立っていられなくなり、私はズルズルとソファーへ倒れ込む。
彼も私の体勢を支えながら上から覆いかぶさる様に包み込む。
もう私は完全に観念し、彼の激しいキスを受け入れた。
静かな生徒会室に、リップ音が響き渡る。
それが更に私の耳を犯してくる。
全身を跡部先輩に支配される。
私の身体は無意識に喜んでいた。
ちゅっ…と彼の唇が離れる。
彼は、濡れた唇を指でグイっと拭い、体勢を起こした。
「俺様にずっと酔い続けてろ」
私に触れていた唇が、弧を描く。
彼の言葉が、耳に、脳にリフレインする。
くらくらと、彼自身に酔いしれる。
彼の言葉にこくんと頷く。
「…好き。大好きです」
胸から零れた想いを伝えれば、跡部先輩は私の大好きな笑みを魅せてくれた。
END 2024/10/04
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