with you once again
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カタカタと何かを叩く音がする。
ふと目を開くと自分の身体には誰かのブレザーがかけられていた。
いつの間にか座っている場所も違う。
来客用のふかふかのソファ。
横を見ると私がさっきまで座っていた場所で作業をしている彼がいた。
パソコンに向かって気だるそうに何かを打ち込んでいる。
ジッと彼を見ていると、私の視線に気づいたのか彼の綺麗な蒼い瞳が私の目を捉える。
「フン、起きたか」
一言彼はそう言うとガタンと席を立ち私の元へとやってきた。
フワリと彼の香りも一緒についてきて・・・酔ってしまいそう。
「お前、少し太ったんじゃねえか?」
そう言いつつ私の隣へとドサッと座る。
同時に私の身体は反動で少し跳ねた。
「運ぶとき重かったぜ」
そんな皮肉を言いながら髪をかき上げる彼のクセ。
そんなことも懐かしく思える。
「重くて悪かったわね」
つい私もつられて皮肉を言う。
思えばここから発展してよく喧嘩したっけ。
隣で彼がシュル・・・とネクタイを外していた。
そんな仕草でさえ魅力的で官能的な雰囲気が出ている。
私は思わず目をそらした。
だってまた、彼の魅力の虜になってしまいそうで・・・。
「おい、倉永」
ふいに名前を呼ばれ、思わず振り向いてしまう。
”なによ”
その言葉が発せられなかった。
驚きで目を見開くと彼の羨ましいほど長いまつげと整った鼻筋が見えた。
彼の形の良い唇が私の口に押し付けられていた。
あまりにも唐突過ぎて声が出ない。
甘くて切ない感触が私の唇に咲いた。
私はまた、彼に酔ってしまうのか。
すると彼は一旦唇を離し、私の目をジッと見る。
蒼くて綺麗な瞳に私はどのように映っているのだろうか。
怖い・・・。
私の心の奥を見透かされているようで落ち着かない。
フッと彼は笑うと優しく私を抱き寄せ、甘いキスをする。
するとみるみるうちに、私の胸が熱くなり、凍っていた私の心が溶けていくような感じがした。
私は彼のキスが嫌い。
だって一瞬で私を感傷的な気持ちにさせてくるから。
今だって、もう泣きそうなくらい彼を感じていて”あの頃へと戻れたら・・・”と考えてしまう。
そう、彼と付き合っていたあの頃に。
こうやってキスをされると、彼の思いが痛いほどに伝わってくる。
別れた後だって、私を何度も振り向かせようと、笑わせてくれようとした。
彼は”王様”と呼ばれているのに、私の前ではただの”男”に変わるの。
いつだって彼が本気だったということを私は身をもって知っている。
だけど、彼と付き合っていると自然に生まれてくる、あの感情に嫌気がさして別れてしまった。
それは”嫉妬”
あの感覚だけは・・・私はソレを思い出すと身をふわせた。
そしてとめどなく流れ始める涙。
彼は一瞬驚いたようだったけど、自分を拒否して泣いたわけではないと感じたのか、
さらにキツく抱きしめ、キスも濃厚さを増す。
キスしては離し、またキスしては離し・・・ただ本能のまま繰り返す。
そして彼は自分の指で、私の涙を拭うと私の目元にキスを落とした。
「・・・好きだ、倉永。もうお前を離したくねえ」
”また俺と・・・”
そう続ける彼の言葉に幸せと感謝を感じつつ、ただただ無言で頷いた。
返す言葉が見つからない、分からない、考えられない。
――――そしてまた、彼の虜へとなっていく。
忘れたはずだった、あなたへの気持ち
だけど本当は眠っていただけで
またあなたに呼び起こされる
END