輝く水面
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「ッ・・・んく、あっ、ふぇ」
「っん。そのまま続けろ」
「あっ、ぅぅん、ひゃぅ!」
「ッ、もっと、腰上げろ。・・・飲み込むなよ?」
「あっ、やっ!もぅ無理ぃ」
ぎゅぅと倉永が跡部の身体にしがみつくと、跡部も溜息を吐いて彼女を支える。
ここは跡部の別荘。そして場所は屋外プール。
跡部は恋人の背泳ぎの練習に付き合わされていた。
けれどやれどもやれども悲惨なもので、全然上達したように見えない。
しかし本人は至って真面目に跡部の言うことを聞いているのだが。
浮くこともままならない彼女に跡部はどうしようも言えない疲労感と退屈さを覚えていた。
跡部が背中を支えてやっても腰が次第に沈み、倉永はガボガボと水を飲み込んでしまう。
足もバタバタと動かしているがまるで進まない。手も水面を空ぶるだけ。
どうしてこうもいかないのだ、と跡部は頭を悩ませた。
そんな彼が唯一満たされているのは目と耳か。
跡部が倉永に教えてやる報酬にと用意した、可愛いフリルのついた水色のビキニ。
もっと大人っぽく際どい奴にしようと思ったが、泳ぐのを辞めると言われても困るので多少妥協した結果だ。
目にはその水着を着た自分の恋人が、一生懸命に膨らみを青空に突き上げて泳いで(?)いるのだ。
水中に沈む彼女の腰は中学生らしからぬなめらかなラインで、跡部は泳ぎを教えるのが自分でよかったと思った。
耳には彼女の甘い声が響く。
別にそういうことをしている訳でもなく、彼女なりの危機管理として、声が洩れてしまうのだ。
必死な顔をして、更に甘い声を発して・・・。
ベッドの中ではどうなるのだろうかと跡部は想像する。
そう思う自分の腕の中にはケホケホと水で噎せている倉永がいる。
頬に掛かっている彼女の綺麗な髪を指で除けてやれば、ふと跡部の顔を見て申し訳なさそうな表情をした。
倉永も倉永で罪悪感を感じているのだ。
こんなにも彼が丁寧に教えてくれているというのに全く上達しなくて、自分の不器用さに腹が立っていた。
水着まで用意してくれたのに、少々派手だが。
彼の首にしがみついている自分の手が少し震える。
それは悔しさからか、緊張からか。
とりあえず憂鬱な溜息を倉永が吐けば、跡部が口を開く。
「少し、休憩するか」
「・・・うん」
跡部に手を引かれながら、プールの端からザバリと出る。
跡部は軽々とプールサイドへ出れば倉永を大きなビーチチェアへと促す。
倉永は一瞬不安そうな顔をして、こういうの苦手と呟きながらも恐る恐る横になった。
寝転び、太陽と目が合えばすかさず眩しそうな顔をした。
跡部はその倉永の姿に微笑みながら、眩しくないようにパラソルを置いた。
そのパラソルを挟んでもう一つのビーチチェアに跡部は座り、指をパチンと鳴らした。
そうすれば、ほんの数秒後に別荘から跡部の執事、ミカエルが二人分のオレンジジュースを運んでくる。
そしてパラソルに備え付けられたテーブルにコトリと置けば一礼をして帰っていった。
倉永は慣れないように戸惑いながらミカエルにお礼を言う。
ミカエルの運んできたオレンジジュースは見かけだけでも高級そうで、ワイングラスの形をしたコップには綺麗に装飾がされてあった。
跡部はそれを手に取り、ストローに口を付ける。
コップについた本物のハイビスカスの花をツンツンと指で弄りながら。
倉永もおずおずと手に取り、チューと美味しそうに飲んだ。
二人同時に薔薇のコ-スターの上にコップを置けば、カランとした軽い氷の音が響いた。
跡部は弄っていたハイビスカスの花を倉永の髪に添える。
そのまま彼女の濡れた毛先にキスを落とせば、倉永は恥ずかしそうに顔を赤くさせた。
いつも見ている反応だが、ここは普段と違う場所。違う衣装。
更に可愛らしさと愛しさが増して、跡部に迫った。
機嫌の良くなった跡部は彼女の寝るビーチチェアへ移り、一緒に寝転がった。
ギチリとビーチチェアは悲鳴を上げる。
「あ、跡部君!ち、近いよぅ」
「アーン?・・・別に、いつものことだろ」
そう言ってみる跡部も、実際にはドギマギしていた。
いつものように何気なく彼女のお腹の上に置いた手が戸惑っている。
水気を帯びた倉永の身体と自分の手が引き付いて離れない。
しっとりと自分の手がくっ付いて、そこから彼女の温かさが伝わってくる。
それと彼女の肌の柔らかさ。
ふにふにとして、気持ちいい。
なんだか熱いものを胸に感じて、思わず跡部は倉永を抱きしめた。
彼女は小さく悲鳴を上げたが、不思議と跡部を跳ね除けない。
倉永も普段は感じることのできない跡部の身体に緊張しているのだ。
彼の程よく付いた筋肉。
普段は服の上でしか感じることが出来ないが、今は強く感じれるほど抱きすくめられている。
腕枕をされているせいか、倉永の視界には男らしくゴツゴツとした鎖骨が見えた。
彼女は跡部の首筋に顔を埋める。
少しの塩素の匂いと共に彼の香りを濃く感じた。
それにクラリとした倉永はまた顔が赤くなる感覚に堕ちた。
すると突然ピクンと倉永の身体が跳ねる。
それは跡部が彼女の腰のラインをなぞったからで。
そのまま下に行き、薄い生地で作られた水着の上から跡部は彼女の富んだ尻を撫でる。
「あと、べくん?ッ、跡部君?」
「ックク、お前、無防備過ぎ。俺だって男なんだぜ?」
チゥッと彼女の耳に吸い付けば、倉永は甘い声を上げて更に跡部にくっつく。
跡部は彼女の唇を甘く噛む。
少し隙間の空いた彼女の口にすかさず舌を入れて彼女の味を味わった。
口の中を生々しい水音と共にかき回しつつ、片方の手では彼女の身体を弄る。
倉永は恥ずかしさからか、それとも他の何かからか、身体をよじる。
スラリと伸びた彼女の足に、跡部は自分の足を無理矢理割り込ませた。
プハッと口を一旦離すと、彼女の口からは甘い声が洩れ続ける。
それはプールで聞いた時よりもずっと甘く、頭が蕩けるように中枢を痺れさせた。
そして跡部が想像していたよりも、倉永は淫らで、綺麗で美しかった。
跡部は口元を吊り上げると、彼女の開いた胸元に顔を埋めた。
甘くてクドイ香りが跡部の鼻孔を燻った。
それが更に狂おしいほど愛しく感じて、跡部は彼女の膨らみに赤い華を咲かす。
一瞬だけ夢現に思えたが、塩素の香りが現実だと跡部に知らしめた。
このまま、最後まで行けるのだろうか。
ふとそんな魔の心が過る。
いわゆるお預けを食らっていたのだ。跡部は。
そういった雰囲気になるにはなるが、彼女の天然さかそれとも故意なのか、スルーされ続けていた。
中学三年生の跡部だが、そういう欲はもうとっくの昔に芽生えているのだ。
「なぁ・・・ッ俺様をこんなに焦らして、楽しいかよ」
思わず呟いてしまう自分の欲。
でも、もう耐えられないのだ。
自分によってこんなに乱れる倉永を見たら。
そんな跡部の心の底からの本音に倉永はパチクリとした目をさせ、ボンッと顔を赤くする。
数回に渡って桜色の唇を空振りさせた後、確かな声で跡部に囁いた。
“ここじゃなくて、ベッド・・・がいい”
今度は跡部が頬を染める番だった。
柄にも合わず、口から「え」という一文字が跡部の口からこぼれ落ちた。
倉永は恥ずかしさからか、真っ赤な顔を跡部の胸元に埋める。
彼女を跡部は優しく抱きとめた。
嬉しかった。
そんなことを考えてくれていたなんて。
欲を持ったのは自分だけではなくて、彼女も同様だと言うことを。
そして愛しさが募る。
結婚を前提にというお付き合いでは無い、学生が好きだから付き合うという物と同様だったが、
跡部は自分の将来の嫁は彼女しかいないとここで決める。
こんなに自分の感情を豊かにしてくれる女性なんてコイツ以外にいない。
「ッ、いいぜ。嫌って言っても辞めねえからな」
「ッ・・・。ぅ、うん」
小さく頷く彼女がまたどうしても愛おしくて、跡部は彼女の唇に小さくキスを落とした。
そしたら燻ったそうに目を瞑るものだから、跡部は想いに身を任せてキスの雨を降らす。
好きだ。
太陽の光が降り注ぐ中、跡部たちは愛を確かめ合う。
そうしたら彼女が跡部の泳ぎを見たいというものだから跡部は口元を釣り上げる。
俺様のスイムに見惚れるなよ。
彼女から離れて飛び込んだ真夏のプールは冷たくて気持ちよかった。
跡部の泳ぎを感心しながらもジッと見つめる倉永。
綺麗で美しい彼のフォームに、自分ももう一度泳いでみようかな、なんて気持ちになる。
おずおずと水面に足を浸せば、なんだか楽しい気持ちになった。
太陽の光を反射する、淡い青の水面。
キラキラと光って眩しい。
そんな眩しい中、大好きな人が“来いよ”と手を差し伸べる。
その手に引き込まれれば瞬時に淡いブルーが倉永を包んだ。
そして愛しの彼にも包まれる。
「もう一度、泳ぎ方を教えてっ!」
「スパルタで行くが、へばるんじゃねえぞ。・・・夜も楽しみにしてんだから」
跡部がチュッと頬に口付けすれば、ハイビスカスの花が水面に浮かんだ。
END 2014/8/28