Non stop
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この声が枯れるまで歌い続けよう。
流れ出すコトバは自分の喉でオトとなりメロディへと変化する。
メロディは口から飛び出すと空気へ溶け込み、周りに響き渡る。
そこで初めてヒトは“うた”を耳にして、ココロへ浸透し“歌”になる。
人々は歌で笑顔になった。
わ し ウ う
た タ
は 。
ガチャリと屋上のドアが開く音が聞こえた。
私は驚きのあまり身体を弾ませ、響かせていた旋律をかき消す。
恐る恐る振り向けば機嫌の悪そうなジャージ姿の男の子がいた。
冷たい氷のような瞳が怪訝そうに私を見つめる。
それにまたビクリと身体を震わせば、
男の子は綺麗な髪の毛を無造作に掻き撫でて溜息を吐いた。
男の子は屋上の階段に続くドアの屋根に登り、そのスペースにゴロンと寝転んだ。
その時にカランと軽い音がしたのはきっと男の子の持っていたテニスのラケットが置かれた音。
私のこと、気にしていないのかな。
下から見上げる形でしばらく様子を見ても、何も言ってこない。
コホンと一つ咳払いして気を取り直す。
チラリと歌ってもいいのかな、なんて小さな心が顔を覗かした。
けれど、私は歌いたいんだと再び空に旋律を奏でた。
最近流行りの、TVで聞いたことのある歌をまず歌う。
歌詞なんて考えるまでもなくメロディと共に出てくる。
薄目で見る景色が歌に合えば合うほど、声は空に響き渡る。
フワリと風が自分の髪を燻れば、それすらも気持ちよく思えてきて仕方がない。
歌うことに理屈なんて必要なくて。
気分次第で色んな曲調の歌に変わる。
その気分に任せて、感じるままに。
旋律に身を任せよう。
徐々に身体がリズムに乗ってきて、疼き出す。
身体が動い出す。足がビートを刻む。
その度にネクタイとかスカートとか、腰まで伸びる自分の髪が靡くのに、楽しさを覚える。
疲れ果てて、動けなくなるまで歌い続けたい。
けれど、限度なんて今まで迎えたことがない。
迎えるつもりもない。
歌の盛り上がりの高音に差し掛かる。
この歌ではここが一番好きなのかもしれない。
高音になっていくごとにつれて、反っていく自分の身体。
一番高い部分に差し掛かったとき、私の身体は完全に夕暮れの空に向かっていた。
パチリと太陽に架かるオレンジの雲と目が合うと、
鳥がバサバサと飛び立ち、風が自分に向かって吹いて。
そんな風景に一瞬見とれた。
見とれたせいか歌詞が出てこなくなって、私はぺたりと地面に座り込んだ。
「なんだ、もう終わりか?」
振り返って首を痛いほど上げて仰ぎ見れば、先程の男の子が足を組んで座り込み、
綺麗で冷たい瞳を私に向けていた。
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