I LOVE YOU
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パコン、パコン。
いつもみたく跡部君とテニスで打ち合いをする。
マネージャーでも無い私が氷帝テニスコートを出入りするのは、もう見慣れた光景。
レギュラーの侑士君たちも気にせずに練習に取り組んでいた。いつもの光景。
跡部君は私の1番の良き理解者であり、1番仲の良い友達。
こうやってたまにテニスに誘ってくれることはとても嬉しく思えた。
ちなみに前、私がっ君にシングルスで勝てたんだよ。
跡部君に誉められた時もすっごく嬉しかったし・・・ドキドキした。
それで、ああこれが恋なんだって思った。
同時に跡部君と繋がっていられるテニスが大好きになった瞬間でもあった。
「おい。ボーッとしてんじゃねえよ」
跡部君が少し不機嫌そうに私へ打ち返す。
私は慌てて、ごめん。と呟いてまたそのボールを打つ。
以前に何回か罰ゲームを仕掛けられたことがあって。
今回も何かやらされるんじゃないかとドキリとした。
ちなみに前回は自動販売機へのパシリ。
その前は若君にUFOの嘘情報を流しに。
その前の前は、榊監督のモノマネ。
全て私が受けた刑。めちゃくちゃ恥ずかしかった。
今、彼と打ち合ってる中にも不安で高鳴る胸に、少しの期待があって。
やっぱり好きな人にいじられるのは、嫌じゃない。と強く感じた。
「・・・やはりお前は考え事が好きなようだな」
フンと鼻を鳴らしながら打ち合っていたボールをパシンと掴めば、私の方を見てニヤリと笑った。
あぁこの顔した時って、アレなんだもんなあ。
私が否定の首を振っているのにも関わらず、跡部君は淡々と話を続ける。
「クク、罰ゲームな」
笑いながら酷なことを言う跡部君に私はブーイング。
だけど私に毎回、”罰ゲームな”と言う彼の楽しそうな笑みを見ていると、
別に罰ゲームくらい良いかな・・・、って思っちゃうのが私の痛い所。
今回はどうしようか、と考え込む跡部君も好きで仕方ない。
片手を顎に当て、うつ向きながら考える彼に、
サラリとゴールドブラウンの髪が触れれば、とても同い年とは思えない色気に惚れぼれしてしまう。
すると跡部君がハッと思い付いたのか、意地悪そうな笑みで私に一言。
「俺様に愛の告白をしろ」
思わずWhy?と言いかけた私。
思わず頭を振ってリセット。
そして思わず聞き返す。
えっと、今なんとおっしゃいましたか王様。
だから告白っつてんだよ。何度も言わせるな馬鹿。
また不機嫌そうに、私の間違いでなければ少し照れ臭そうに言う跡部君。
ルールはいつもみたいにラリーでミスした方が罰ゲーム。
それって私が勝てば、跡部君が告白してくれるのかな。
とかなんとか淡い期待を抱きつつ勝負に挑む。
跡部君からのサーブ。
鋭いボールが私のコートへと叩きつけられる。
わっ!いつになく本気だ・・・。
それをギリギリで打ち返す私。
この勝負、絶対落とせない。
私のプライドに掛けて絶対告白なんてしたくない。
勝負とかそういうの関係無く、いつか気持ちを伝えるもん!
私も渾身の力で打ち返し、ラリーが続く。
そんな真剣勝負に人も当然集まってきて侑士君やら宍戸君やらレギュラー陣が集まってくる。
それに少し気を取られて軌道をズラしてしまえば跡部君は口に弧を描きながら一気に畳み掛けてくるのが分かった。
え!?ちょっと待って、早いっ・・・!!
いつもラリーは30分は続く。
けど今日に限って10分しか持ててない。
どういうこっちゃい!と半ばヤケクソにロブを上げれば、当然のようにスマッシュを叩きつけられ。
負けました。
「ックハハ!どうした、今日は早えじゃねーの。そんなに罰ゲームしたかったのかよ、アーン?」
髪を掻き上げながら笑う跡部君に私は赤面した。
彼の言葉にレギュラー陣も理解できたように頷いた。
あれ?ちょっと待って。
皆が注目している中で告白、するの?
頭が恥ずかしさで真っ白。そしてパンク。
そんな私を跡部君は面白そうに眺める。
「どうした。早く言ってみろ」
皆が注目する中、私は跡部君側のコートへと向かう。
所詮罰ゲーム。本気にされることは無い。
跡部君の目の前でピタリと止まりチョイチョイと手で招けば跡部君がフッと笑い、
私の背丈に合わせるように屈んでくれた。
彼の耳元で小さく息を吸い、言葉を届ける。
「大好き、だよ」
「ッ・・・あぁ」
あれ、なんでこの王様は自分が言い出したことなのに照れてるんだろう。
相手に照れられるとこっちまで何だか照れてきちゃって、顔が熱い。
すると脇からレギュラー達の声が聞こえてきて、私と跡部君は素早く離れる。
「自分、跡部になんて言うたの?ってか何しとん」
「いつもの罰ゲームだよ~」
「ああ、お前いつも跡部に負けてるもんな。ったく、激ダサだぜ?」
「う、うん」
「で、結局なんて言ったんですか」
「・・・跡部君、言っていい?」
若君の質問を応えるべく、私は一応彼に確認を取る。
跡部君は素っ気なく、言いたきゃ言え。と私へ言った。
「あのね、若君」
「はい」
「大好きだよ」
「はい!?」
「あっ、違うの違うの!!跡部君に大好きだよって!も、もちろん若君も好きよ?」
「恥ずかしくないんですか」
「恥ずかしいよ!」
「悔しくないんですか」
「そりゃもう!!」
「下剋上しましょう」
そう言って若君は私の肩を抱き、一気にしゃがみこむ。
そしてヒソヒソと彼の計画を聞いていれば、ああ!なるほど!!と合点。
やる!と言って立ち上がり跡部君の元へ行こうと振り返れば、本人とぶつかった。
「わあ!いつの間にだよ跡部君!!」
「なに日吉と仲良く話してんだ」
「必勝法だよ!ね、若君」
「えぇ。サルでも跡部さんに勝てますね」
「私サルじゃないよ?」
「・・・物の例えですよ」
「で?なんだ必勝法って」
「ジャンケン!!」
私がそう言えば跡部君の瞳は急激にやる気を失った。
あれ?若君が教えてくれたいい案だと思ったのに。
とりあえずやろうやろうと誘えば渋々手を差し出す跡部君。
よし、じゃーんけーん。
「ポン!・・・ってわー!」
「お前の負け、だな。ほら言えよ」
「好き!もっかい!じゃーんけーん」
「またかよ・・・ポン」
「えぇ??どうして!?」
「フ、ジャンケンでも常に勝利とは。俺様も罪な男だな」
「跡部君好きサー!」
「んで訛ってんだよ」
「もっかい!じゃーんけーん!!」
一方その脇では。
「これで勝てないって・・・」
「日吉、ナチュラルに顔青ざめんなや」
「っていうかさー、跡部って倉永とああやってる時ホント楽しそうだよな~」
「なんや岳人。羨ましいんか?」
「まあなー」
「ハァ・・・今度の土曜に立海との練習試合控えてんのに余裕だな」
「いいじゃないですか宍戸さん!跡部さんには休養が必要なんですよ」
「あれが休養か?」
「でも跡部、顔笑ってるCー!跡部が嬉しいと俺まで嬉しくなるよ~」
「・・・ウス」
「もーっ!!どうして勝てないの!!跡部君好きだよ!!」
「まだやっとったんか・・・」
跡部君はまだまだ余裕という笑みで手をヒラヒラとさせ私を煽る。
もう好き好き言いすぎて恥なんてどこかへ行ってしまった。
ま、今日はこれまでだな。
そんなこと言って彼は行ってしまおうとする。
負けっぱなしなんて嫌だ。
そんな気持ちが途端にムクムクと広がる。
私に、革命を。
私に背を向けようとした彼の手をグイと引っ張り、言葉では無く行動で愛の告白を示した。
ちゅっ。
不慣れな水々しい音が二人の間に響く。
跡部君は目を見開いて驚きながら頬を抑えた。
「跡部君っ・・・大好き」
言うはずの無かった言葉が癖のように口から零れた。
だけどそれは私の本当の気持ち。
後悔なんてしないわ。
気持ちが落ち着けば途端に聞こえる周りのざわついた声。
それによって私に羞恥心が生まれれば、逃げようと駆け出した。
駆け出そうとした。
けどそれは跡部君の熱い包容によって出来なくて。
彼の吐息を耳元で感じた。
「お前には負けたぜ」
「ッ・・・ふ」
俺ばかり、悪かったな。と彼は呟いて。
私の唇へキスを落とす。
「俺もお前のことが好きだ」
「う・・・嘘」
「ここで嘘ついてどうすんだ」
「わ、私も好きっ」
「ああ。もう飽きるほど聞いた」
「・・・うぅ」
「これからは“愛してる”って言え」
跡部君の言葉が優しく、そして甘く私の中枢神経を麻痺させる。
都合の良い夢でも見てるんじゃないか。そう思えてしまうほど。
だけどこの温もりと鼓動は確かに彼のものと自分の物。
夢なんかじゃない。
「跡部君、愛してる!」
「ああ。知ってる」
Fin 2014/4/6