第3章
名前変換
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向日君よく連続で飛べるなぁ・・・
もう私、飛べない飛びたくない
そんな事を思いつつ、おぼつかない足取りでベンチを探す。
少しずつ人混みをかき分けて前に進み続けると、見たことのある後ろ姿が。
仲間を見つけた安堵で疲れていた気持ちが一気に吹き飛ぶ。
その証拠に私の足が自然と動き、彼の元へと歩みを進めていた。
さっき、近寄るなって言われたけどいいよね?
「日吉君!」
私が彼の肩を叩き、名を呼ぶと、素早く振り向き、
私を目に捉えたところで"はぁ"と肩を落とされた。
・・・私、どれだけ嫌われてるんだろう
そこまで反応を表に出されると少々胸に刺さる痛みが生じる。
日吉君は私に無気力な瞳を向けると、
また一段と気だるそうな声で私に言う。
「またあなたですか、俺に近づくなと言ったでしょう?」
語尾を強め、そのまま行ってしまおうとする。
あっ・・・
普段の私なら引き下がっていたかもしれないけど
せっかく目標を決めたし・・・!
私は勇気を振り絞り、行ってしまう彼の背中に声を届ける。
「日吉君と一緒にいたいの!!」
すると彼が驚いた表情で振り向いてくれた。
のと同時に周りの人たちがざわつき始める。
え・・・?あ・・・っ
その状況を把握したとたん
ボンッと顔が赤くなりそうなぐらい一気に熱が上がり、
恥ずかしさで思わずうつむいてしまう。
周りから上がる冷やかしの声。
あぁ、やっぱり話しかけなきゃ良かった。
日吉君だってもう行っちゃって・・・
“ガシッ!”
いきなり右手首に衝撃が走る。
私は驚いて顔をあげると、
彼が顔をほのかに赤くさせて私の手首をつかんでいた。
「なに言ってるんですか!行きますよ!!」
そういうと彼はそのまま私を引っ張り、はや歩きで人混みをすり抜けていく。
すると後ろから“幸せにやれよー!”というおじさんの声が届いて、
ますます顔が赤くなる私たちであった。
でも、彼が私をおいていかなかった事がすごく嬉しかった。
だってまた構わず行ってしまうと思ったから。
彼の手によって繋がれている部分をチラリと見ると、笑みが溢れた。
良かった、声をかけれて。
先程の場所から少し離れたところでやっと足を止める。
すると彼は私のよく見る呆れた顔になって私を見る。
「・・・どうしてあんな事言ったんですか。」
どうしてって・・・その理由はただひとつ。
「だって日吉君が置いていっちゃうから・・・」
思わず視線を落とし、そうつぶやく。
彼は困ったように頭を掻くとため息をついてただ一点を見つめる。
そしてまたため息をつかれた。
そこまでため息をつかれると、どんどん居心地が悪くなってくる。
思わず私もため息をついて空を見上げた。
そこには綺麗な青い空が広がって、みんなに元気を与えてくれるような太陽が
サンサンと私たちに暖かな光を注いでくれている。
だったら私は日吉君に、ため息をあげてる?
そんなくだらない事を考えていると彼が不意に口を開いた。
「これからお化け屋敷へ行こうとおもってるんですが、一緒にきますか?」
っ・・・!日吉君・・・
私は一気に心の雲が散っていくのを感じた。
彼はそんな様子の私を見て、
照れたように頬を掻くと、フッと笑う。
「ほら、早くしないと置いていきますよ」
そう言って歩き出す彼の後を私はついていく。
さっきのはや歩きとは逆に、
私のスピードに合わせてゆっくり歩いてくれている。
それに、人が多い道になると人の間をすり抜けた先で、
ちゃんと立ち止まって待ってくれる。
思わず、さっきまでの冷たい態度はなんだったのかと思うほど優しく接してくれる。
その事に私はさらなる安堵感に浸る。
そして思わず笑ってしまう。
日吉君、態度は優しくなったけど・・・。
「ほら、何チンタラ歩いてるんですか、置いていきますよ」
「あまり人にぶつからないでください。迷惑です」
これも日吉君なりの気の使わせ方だと思ったら態度と似つかず、
なんだか可愛く思えてきてしまう。
それにこういう言葉が彼なりのコミュニケーションだと思えば、全く辛くなくなった。
言われていることのほとんどが本当にの事だしね。
そんなやり取りを交わしながら、
遊園地ならではの人が溢れ変える道をしばらく進んで行くと、少し外れた場所に目的の建物が見えた。
「つきましたね」
ポツリと日吉君は言った。
私たちの前にそびえたつ“おばけやしき”とひらがなで書かれた看板が無愛想に付いている建物。
他のアトラクションは人で賑わっているのに何故かここだけは誰一人といない。
いるのは暇そうに立っている係員さんだけ。
建物の周りにある木々と妙に茂った草むらが風でなびき、
不気味な雰囲気を露骨に引き出していた。
ここ・・・本当にやってるのかなぁ
不安になり横にいる彼を見ると、
凄くワクワクした様子で期待に満ち溢れた目で建物を見つめていた。
あえて例えるのなら、普段の日吉君が表情を変えずに、音符だけ軽快に出している状態だろうか。
彼は見つめている私の視線に気づき、今度は楽しみを顔に出す。
「早くいきましょう」
そういうと足取りも軽快にスタスタと入ってしまう。
私もそのあとに急いで着いていった。
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