第3章
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私は今、氷帝学園テニス部のみんなと遊園地に来ている。
どうしてこんなことになっているのかは2日前に遡る。
―――――――
普段と同じようにお昼に噴水でテニス部のみんなでお弁当を食べていると、
向日君が元気よく立ち上がった。
「なぁなぁ!倉永の歓迎会をやろうぜ!」
「ムグッ!?」
いきなりのことで私は咳き込んでしまう。
え?歓迎会!?
なんの歓迎?
すると、忍足君が私の作ってきたお弁当を口に詰めながら、
「そら岳人がただ単に行きたいだけやろ。」
と冷ややかにツッコミを入れる。
「いい案じゃねーの。けど俺らは地区、関東大会や全国で忙しくなる、
行くのは今のうちだな。」
跡部君は意外にもノリノリで答える。
何をそんな楽しそうに乗ってくるんだろう。
みんなでどこか行くのが好きなのかな?
「けど、どこに行くんだ?場所によっちゃ俺は行かねえぞ。」
そう言いながら大きいおにぎりにがっついているのは、綺麗なロングヘアーが自慢の宍戸亮君だ。
「何言ってるんですか宍戸さん。歓迎会ですよ?行きましょうよ!」
そう温和に宍戸君を説得しているのは、
十字架のネックレスが神秘的な鳳長太郎君。
超がつくほどの平和主義者らしい。
私・・・まだ行くって言ってないよ。
話を勝手に進めないでー・・・。
そう思うのと同時に隣で向日君が高々にジャンプする。
「じゃあ遊園地行こうぜ!!」
おおうふ、向日君の大きな声が頭上から降り注いできた。
向日君はニコニコと楽しそうにみんなを説得にかかっている。
「はあ?そんなガキくせえとこに行かねえよ。」
「行きましょうよ宍戸さん!楽しそうじゃないですか!!」
「うーん・・・俺は映画を見たいと思うてんやけど。」
皆がそれぞれ各々の意見を口に出す。
・・・みんな不満タラタラだなあ。
でも遊園地か。何年ぐらい行ってないかなぁ。
「おい、倉永。お前はどこに行きてえんだ?」
「あ、私は遊園地で大丈夫だよ?」
一応遊園地に賛同しておく。
本当に跡部君楽しそうにしてるな・・・
「よし!全員異論は無いな。遊園地で決定だ!!」
ええええ??
跡部君は今まで何を聞いていたの?
みんな賛成してなかったのに
あまりの彼の横暴さに少し笑いがこみ上げてしまう。
向日君と鳳君以外の人達は少し面倒くさそうな表情をしたが
特には反論しなかった。
「現地集合。日時は後でメールをする。・・・日吉とジローも呼んでおけ。」
「ウス。」
・・・!?
振り向くといつの間にか樺地君が仁王立ちをしていた。
いつからそこにいたんだろう。
全く気付かなかったよ・・・。
跡部君を見るとニヤリと口角を上げ、ククッと喉で笑いながら言った。
「日吉には“部長命令”だと言っておけ。」
――――――
そして今、遊園地の前に一応全員集合している。
入口前にまだ遊園地に入ってない人達で賑わっている。
外でもこんなにたくさん人がいるのに一体中はどれだけ人がいるんだろう。
「うああああ!!あぢぃいいい!!」
「うるさいわ岳人。こっちまで暑なるやろ」
隣では向日君と忍足君が小突きあっていた。
確かにまだ5月なのに少し暑い。
太陽もキラキラと眩しいし、日焼け止め塗ればよかった。
「にしても異様に人が多いな。いつもこんなにいるのか?」
「跡部・・・まさか遊園地に来たことないのか?」
「あ?宍戸か。そうだが。」
「さすが跡部さんです・・・。」
跡部君と宍戸君、鳳君が何やら話し込んでいる。
跡部君、遊園地初めて来たんだ・・・。
今までの遠足とかはどこに行ってたのかな?
「・・・チッ、どうして俺まで・・・。」
ふと隣でまた不満の声が聞こえる。
もしかしてあの子は・・・
「日吉君?日吉君だよね。」
「・・・、だからなんですか。」
日吉君は冷ややかな目線で私を見る。
うっ、すこし胸にチクッと来た・・・。
明るく、明るく行こう。
「私、倉永聖。跡部君や忍足君と同じクラスだよ。よろしくねっ!」
「・・・俺に近寄らないでください。」
きっぱりとそう言い、日吉君はスタスタと遊園地へ入ってしまった。
他のみんなもそれに続いてゾロゾロと入っていってしまう。
私そんなに嫌われてるのかなぁ・・・。
ため息を吐きつつ、私もあとに続く。
ロッカーに荷物を預けてからは、皆見事に別行動だった。
それぞれの好きな場所へ散ってしまう。
ポツンと広場に置いていかれた私。
どうしよう・・・。みんなどこ行っちゃったんだろう。
「おーい!倉永!!」
私を呼ぶ声がして振り返ると、軽快に走ってくるのは向日君だった。
良かった・・・。やっと合流できるよー・・・。
「とうっ!!」
向日君は華麗にジャンプをし、私の目の前にストンッと着地をする。
相変わらず向日君のジャンプ力はすごいなぁ・・・。
五輪の選手になれるんじゃないかな?
「なあなあ!バンジー行こうぜ!!」
「っへ?」
そう言うのと同時に、私の手首をガシリと掴み、そのまま一気に駆け出す。
あまりに唐突なことに私は一回、足を縺れさせたが
何とか持ちこたえて、そのまま無理やり駆け出した。
ええ!?バンジー!?
バンジーって・・・あのバンジー!?
待って待って待って!!
「む・・・向日君!!バンジーって!?」
勢いよく走りながらも私たちは顔を見合わせる。
すると、向日君は笑顔で答える。
「高いところから飛ぶんだぜ!!」
やっぱり!!
やだやだ!無理だって!!
私は必死に足を止めようとするが、向日君に引っ張られているので
全然止まれる気配もない。無理やり止まろうとするとこけちゃうし・・・。
「もー!!ムリムリムリ!私、飛びたくない!!」
「大丈夫!!お前なら飛べる!!」
どんな根拠があってそんな台詞が出てくるの!?
絶対ムリだよ!!
そんなことを思っているうちにバンジージャンプの列へ到着してしまった。
人気があるのか結構長い列が出来ている。
バンジージャンプ自体は無機質な鉄骨でできているが、
そこから飛び降りてくる勇気あるお客さんは楽しそうな声を上げている。
そんな光景を背景に向日君は笑顔で言う。
「だってお前、去年の体育祭で優勝したろ?高飛びでさ!」
え?・・・へ??
どうして向日君が知ってるの??
私がポカンとしているのが伝わったのか
向日君が言葉を繋げる。
「一緒に賞状もらったじゃねーか、女子の部がお前で男子の部が俺!」
私はその言葉でようやく気がついた。
前に向日君のことをどこかで見たことあると思ったら去年一緒に賞状をもらった子だったのか。
あの時からずっと気にしていたわけではないけれど、なんとなくスッキリとした気分になった。
「そうだったね!一緒にステージに上がったもんね」
確かあの時も向日君はジャンプひとつでステージに上がって、みんなを驚かせていたっけ。
なんだか懐かしいな。
「でもお前、すげーよな!歴史ある記録を塗り替えちまうもん!」
彼は興奮しながらピョンピョンとその場で跳び跳ねる。
本当に飛ぶのが好きなんだなぁ、実は空を飛ぶことが夢だったり?
「でも、なんセンチ飛んだか何て覚えてないし、向日君も確か新記録じゃなかった?」
私がそう言うのと同時にバンジージャンプの列がズズイと一気に進む。
私たちも前に進みながら話をする。
「お前は150センチだったのを165センチへ、俺は170センチだったのを180センチだ。」
指で顎をつつき、考える仕草をしているわりにはスラスラと答える向日君。
よく覚えてるなぁ、私なんて表彰されたこともすっかり忘れてたのに。
「塗り替えの幅が倉永の方が大きいし、お前スゲーぜ!!」
そう言って鼻を擦りながら笑う。
私も思わずつられて笑ってしまう。
「あ、やっと笑ったな!お前は朝から景気悪そうな顔してたから心配してたんだぜ?」
うそ・・・、私、そんな表情してた?
思わずほっぺをムニム二と指でほぐす。
「お前の歓迎会なんだから、楽しまないでどうするよ」
そしてハハハッと軽快に笑う彼。
うん。そうだよね!せっかく皆で遊びに来てるんだから楽しまないと!
よし、目標決めた!
今日中に全員と仲良くなって見せる!!
無理かな・・・?
でも出来るだけ皆といろんな話したいなぁ。
それから向日君と他愛もない話をしていると当然の如く、列は進んで行き、順番が迫ってくる。
鉄骨の建物に入り、上へ続く階段をひたすら登り
そしてついに・・・時は来た。
「倉永先に行けよ!見といてやるから」
向日君に先手を譲られ、係員さんが容赦なく、私の腰に器具を取り付ける。
ガチャガチャと金属の擦れる音が鳴ると、ああ、いよいよ飛ぶんだなあと
改めて思ってしまう。
こちらへどうぞと係員さんに崖っぷちギリギリに立たされる。
風が強いし、遊園地にいる人々がまるでアリの大行列のよう。
・・・怖い!すんごく怖い!!
思わず後ろにいる向日君をチラリと見ると彼はガッツポーズをし“お前なら行ける!”と励ましてくれた。
よ・・・よし!飛ばなきゃ!飛ば・・・
「い・・・行きます!」
「おう!行ってこい!」
トン、と軽く台を蹴っただけでまるで風に乗るように一瞬だけ宙へ浮かび、そこからまっ逆さまに鋭く風を切りながら落ちていく。
声にならない悲鳴を上げながら。
ふと気づけば向日君が楽しそうに飛び降りて来るのを見ていた。
もう全然記憶がない。
ただただ気持ち悪い。
あの浮遊感、慣れないなあ。
「おーぅ!楽しかっただろ!」
向日君が顔を赤くさせ、元気一杯の笑顔で駆けてくる。
どうしてそんなに平気なんだろう。
もう私、ダメ・・・
「すごいスリルでした」
思わず敬語に。
もうさっきから目眩が酷くて。
初めての体験だったし、なんだかんだ言って心の準備も出来てない状態で
飛び降りてしまったからもう精神的にボロボロである。
「もっかい行こうぜ!」
う・・・折角の誘いだけど、これ以上やったら私はきっと心が折れる。
私はとっさに首を振り、”飛びたくない"の意を示す。
その行動で分かってくれたのか少し残念そうな顔をし
「そうか、だったら俺、行ってくるな!」と言って早急に走っていってしまった。
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