第15章

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忍足君に引かれるがまま立海大付属から出る。

私がぷうぷうと頬を膨らませていると、向日君が私の頭をポンポンと撫でる。

そんな私たちの様子に忍足君はハッとなり、私に“すまん”と詫びを入れてくれた。

またそのままジロー君を尾行していけば、

途中で何故か立海でガムを食べていた赤髪の子と合流し、二人で公園の脇のベンチへと座っていた。

私たち三人はその斜め後ろのベンチに並んで座り、新聞紙で顔を隠した。

二人の会話はあまり聞き取れない。



「なるほどなあ、ジローの刺激は丸井ブン太か」

「あの子、丸井君っていうんだ?」

「おう。ジローと同じ、ボレーを主とするプレイヤーだぜ」



なんでも二人の話によると、ジロー君と丸井君は前に試合をしたことがあるらしく、

ジロー君の圧倒的負けだったらしい。

でもジロー君はそれに懲りることなく、それどころか尊敬の眼差しで丸井君からリストバンドを(無理矢理)もらったそうだ。



「それだったら、あの時のジロー君の反応は納得だなあ」



私は新聞紙に開けれれた穴から本人を覗き見ながら呟いた。

二人は楽しそうに会話をしている。

するとジロー君が立ち上がり、先程と同様に万歳をして喜んでいた。

どうしたんだろう、突然の場面変化に私たち三人は目を見合わせた。



「やったCー!!丸井君と試合っ、丸井君とCーあいっ!!」



ジロー君は普段ののんびりした動きとは逆に楽しそうに、嬉しそうにスキップして去っていった。

私たちはそれを唖然として見つめる。



「お、おい待てって!」



丸井君の彼を呼び止める声が、夕暮れ時の公園に虚しく響いた。

そんな中、私は丸井君が手に持つ小さな箱を見逃さなかった。

あ、あれって・・・!

私は新聞紙から瞬時に飛び出し、彼の前に転がり出た。

丸井君もそんな私の様子に驚いて目を見開いている。



「え・・・ちょ、どちらさん?」

「それっ・・・!まさか、まさか!」

「え?あ、ああ。駅前のスイーツショップの限定シュークリーム・・・」

「やっぱり・・・!!忍足くーーーん!!」



待ち望んでいた大好きなスイーツを前に私は自分を少し見失っていた。

忍足君に帰りに買わせようとすかさず呼ぶと、彼と向日君が困惑したような顔でこちらへダッシュで向かってきた。

そのまま忍足君は私の頭を丸井君へとお辞儀させる。



「ホンマにまあ、すみませんうちの子が・・・」

倉永、今度でもいいだろーがよ、スイーツなんて!」

「今度じゃ駄目なの!期間限定なんだから」

「あ、いや・・・一つ残ってんだけど、食べる?」

「わっ、いいの!?・・・ありがとう、丸井君!」

「あれ、どうして俺の名前を・・・」



私は丸井君に礼を言い、シュークリームを受け取ると早速パクリと食べた。

お、美味しい!期間限定塩キャラメル味!!

三人に見守られる中私は無事にシュークリームを完食した。

ああ美味しかった、と笑う私に丸井君がスッと手を出す。



「ここにクリーム付いてるぜぃ」



そのまま伸ばした手で私の頬に付いていたであろうクリームを取り、

丸井君の口に収まった。勿体ねぇだろぃと呟きながら。

私はそんな彼の様子にポカンと固まり、忍足君と向日君は少し驚いた様子で笑っていた。

丸井君はスイーツの箱を片しながら、目線をこちらに向けて言った。



「で、俺になんか用?」

「これと言った用は無いねんけど・・・」

「さっき、ジローと何を話してたんだ?」

「ああ。また試合するかって言ったら妙に喜んじまってよ」



ああなるほど、と私の心が納得する。

忍足君と向日君も私と同じように納得して頷いている。

丸井君がガムを口にポイと放り込むと、すぐに綺麗な風船が膨らんだ。

そのまま丸井君はテニスバックやスクールバックを背負って目元にピースサインをした。



「じゃ、俺は帰るぜぃ。あ、名前聞いてなかったな」

「あ、倉永、です。シュークリームありがと!」

「いいってことよ。んじゃ、またな倉永!お前らも」



丸井君は手をヒラヒラとさせながら、夕闇の向こうへと消えていった。

私たちも一緒に帰路へ着く。

駅前に置きっぱなしの自転車を取りに行った。

そこまでの道のりがなんだかとても長いような気がした。

三人で歩く道はオレンジ色に染まっていて、私を時々感傷的にさせた。

隣をふと見れば、いつもどおりに話している忍足君と向日君がいる。

それがなんだか嬉しくて、同時に切なくも感じた。

その気持ちと共にタンッ、と軽くステップを踏み、二人より少し前へと飛び出した。

二人は少し不思議そうな顔をして微笑んだ。



「なんだか楽しい、かもしれない」



なんの前兆も見せないでそう呟いた私を、二人はどう捉えただろう。

少なくも嫌な気分にはさせなかった様だった。



「フフ、せやな」

「当たり前だぜっ!」



当然のように、目がにを押し上げながら言う忍足君。

道端で元気にぴょこんと飛び跳ねる向日君。

そんな二人を見て、私は何だかとても心が暖かくなった。










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