第1章
名前変換
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・・・ごめんリナ。猛烈に爆笑したい。
私はお腹を押さえて静かに笑いに浸る。
別の言い方をすると、朝のお返し。
「噛み噛みやんけ・・・。大丈夫か?」
「はひっ!」
それだけの会話をすると忍足君がコチラに戻ってきた。
それだけ?どうしてだろ・・・。
あ、もしかして、気を利かせてくれたのかな?
考え過ぎかも知れないけど、お礼いっておこう。
私も忍足君の元へと駆け寄り、彼を見上げる。
それだけで、すごく背が高くて同じ中学生には見えないと私は思った。
彼は眼鏡の奥の優しい瞳で私を捉えた。
「ありがとね」
「フフ、お友達になってくれたらええよ」
「おい、俺様も忘れてもらっちゃ困るな」
忍足君を押し退け、跡部君が割って入ってくる。
そんな彼に忍足君はやれやれと言った感じで肩を上げた。
私はそんな光景をあっけらかんに視界に入れた。
そんなことより、何言ってんだろうこの人たちは。
私は首をかしげ、口を開いた。
「もう友達じゃないの?」
私がそう言うとポカーンとした顔でこちらを彼らが見る。
跡部君は本当に何を言ってるのか分からないといった顔で。
忍足君は必死に笑うのを堪えているように。
あれ?私変なこと言ったかな?
「楽しくお話できたら・・・もう友達でしょ??」
その私の言葉をきっかけに二人は顔を見合わせ大声で笑いあった。
今度は私だけがぽかんと一人置いていかれていて。
え?何?なになに???
「ほんまおもろい子やなぁ・・・!こんな子初めてや!」
「この俺様を1日に2回も笑わせるとは、なかなかやるぜ」
笑い続ける彼らの気持ちが分からなくて、私はその場でオロオロと行く先を見つめる。
周りの子たちもいきなり笑い出した彼らに視線が引き付けられていた。
そんな中、忍足君は軽くウィンクしながら私に言った。
「じゃぁこれからは友達としてよろしゅうな」
「うんっ!」
心が、ポカポカと暖かくなるのを感じた。
なんだか嬉しい。
ずっと次元が違うと思っていた男子テニス部の人達。
しかもその人気を争う跡部君と忍足君が自ら私に友達になって欲しいって言ってくるなんて。
夢にも思わなかった。夢にも思えなかった。
私が跡部君に”よろしく”と微笑みかければ、彼は少し驚いたような顔をし、それから目を逸らした。
ピピーーーーーッッ!!
軽快な笛の音と共に先生の指示が飛び交う。
並ぶために一旦、跡部君たちと別れ、笛の音と同時にスタートした。
なんだかワクワクする。こんな気持ち初めてかもしれない。
いつも同じような日々にうんざりしていたが、今日を境に変わるかもしれないと不確実な確信を胸に抱き。
私は風の音、川のせせらぎを聞きながら足を動かす。
本当に気分がいい。
持久走なんて嫌だなど思っていたけど、頬を撫でる風が本当に心地よい。
あぁ、もう少し頑張れそう。
ちょっとペースあげようかな。
トットットと一定のペースで息を弾ませながら走れば、途中で跡部君とすれ違った。
私を抜くときに ポンッと肩を叩き、
”頑張れよ”
今まで聞こえていた風の音や川の音がピタリと止んだ気がした。
彼の言葉だけが耳へとすんなり入ってくるのが分かった。
ただ、その一言なのに、一言だけなのに心が満たされる。
ジワジワと心に浸透していく彼の言葉。
彼は片手を上げ、走り去って行く。
リナの言っていた通り、彼の走るフォームは確かに綺麗で美しかった。
第1章 END 2013/10/04
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