第11章
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
跡部君が制服へ着替えている間、私はずっと校門で待っていた。
遠くに見えていた雨雲が真上まで迫り来て、辺りを暗く包んでいる。
もう少しで降っちゃいそうだなぁ。
そう思った瞬間に鼻先に感じた水滴。
ポツポツと大粒の雨が私を狙う。
ッ、う。
同時にドンとくる頭痛が襲ってきて、思わず足がふらついた。
「おっと。大丈夫かいな」
「っえ、ぁ。忍足君・・・」
ふらついた私を支えてくれたのは黒い傘を差した彼。
思えば、あの日からまともに顔を合わせていないことに気が付いた。
そして、これはチャンスなのではないか、という考えに達する。
忍足君が私を傘に入れてくれ、近づくお互いの身体。
少し手を伸ばしただけでも充分に彼に触れてしまうほどの距離。
そんな距離に罪を感じつつも、私は忍足君を見上げた。
私と混ざり合った彼の視線は、とても冷たくて、
心を閉ざされていた。
感情の読みとれない眼。
だけど私はそんな彼の瞳を熱く見つめて、言葉を届けた。
「ごめん。忍足君と、付き合うのは、出来ない」
「フフ、やっぱり、そやったかぁ・・・」
分かってても直接言われれば辛いもんやな、と彼は笑った。
私に目元を見えないようにして。
だけど私は見てしまった。彼が酷く動揺したのを。
ごめんね、私がまた呟くとまた目眩が私を襲う。
「いや、ええんや。言ってくれてありがとうな。聖は傘持っとるか?」
「ん」
鞄をポムポム叩いて、あると示す。
すれば彼はじゃあ、また、と言葉を落として私から離れた。
途端に冷たい雨と空気が私の身体を冷やす。
なのに身体が徐々に熱くなっていく矛盾。
ガンガンと鳴り響く頭。
忍足君の去っていく後ろ姿を見ていれば、とても心が重くなるのを感じる。
私が、もっと早く忍足君に気持ちを伝えていれば、
彼をあんなにも傷つけることはなかったのかもしれない。
ほんと、ごめんね。
だけど、本当に身体がだるくて辛い。
どうしたんだろう、と濡れた前髪を上にかきあげれば、グラリとまた足元がふらついた。
あ、やば。
呆気なく倒れる自分の身体は、全く踏ん張ることができなくて。
私は冷たい地面に倒れた。
・・・はずなのに、強い衝撃は走らずに、優しい温もりが私を包んだ気がして。
それがとても安心できて。
私の記憶はそこで途切れた。
やっと、自分の気持ちを素直に言えて。
私は自分が変われた気がして。
どこかの国の女優さんが言ってた言葉を私は思い出す。
“男が変わるのは赤ん坊からしか無理だけど、女は一瞬で変われるのよ”
どこで聞いたかわからないけど、
私には一瞬だなんて無理で、
ずっと長い時間がかかったけど。
私は、全力でこれからを楽しんで行きたいと思って。
もちろん、
みんなと一緒に。
ずっと傍にいてくれ、と言ってくれた、
跡部君と一緒に。
後は、親友に謝るだけ。
2014/1/29 第11章 END
3/3ページ