第1章
名前変換
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「なんや、騒がしいやん」
振り返ると、大人な雰囲気が悠然と漂う、忍足君が教室のドア付近に立っていた。
女の子の目線が彼へ釘付けになり、小さく歓喜の悲鳴をあげた。
彼も跡部君に続く人気者で、“氷帝の天才”と呼ばれるに相応しい人物となっていた。
そんな彼が今、話題の中心となっている私達の元へとやって来る。
「おぅ。忍足、こいつが俺様の机で頭を打ってな」
「っう、わーー!わーーー!」
急いで大声を上げて、跡部君の声をかき消そうとした。
忍足君は驚いた様に目を見開いて、クスリと笑った。
私はただ話を広めさせたくなかっただけなのにまた・・・彼が大声で笑う。
「クククッ、アーッハッハッハ!!」
「もー、なんで言っちゃうのぉ・・・」
肩をしょげさせて呟く私。
本当に恥ずかしいし、目立った事は好きじゃないから勘弁してほしい。
そんな私にリナがぴょこんとやって来て、私の背中をオヤジの様にバンバンと叩く。
「良かったじゃん聖。やっと跡部様と話せたね♪」
ニカッと笑う彼女は輝いていて、私は思わず苦笑した。
なぜかリナは私が跡部君のことが好き、と誤解している。
確かに前は、少しだけ尊敬の念があるって言ったけれど。
リナの中で何処に消えたのやら、その“尊敬”は。
「よくないっ」
リナにほっぺたムニムニの刑だ!と私はリナに襲いかかる。
きゃあ、と逃げるリナが可愛くて私は笑った。
そんな中、傍らで彼らが話しているのがふと耳に入る
「なんや跡部、お前の仕業かいな」
「俺じゃねーよ。こいつが・・・」
あぁ、こうやって人に知れ渡って行ってしまうんだなぁ。
私は彼女を襲うのを辞め、彼らへ目を向ければ、忍足君が目を細め微笑む。
「跡部、女の子を困らせちゃあかんやろ。なー」
そう言いつつ私の隣に歩いてきて、顔を覗き込まれる。
でも転けちゃったのは私の方で、と口を動かせば、彼は私の頭をポンポンと撫でた。
ッう!?
初めての事に、私は咄嗟に忍足君を見返せば、彼は静かに微笑むだけだった。
うぅ、恥ずかしい・・・。
なんで忍足君は平気な顔して撫でれるんだろ。
「おい、忍足。そいつ顔が真っ赤だぞ」
「可愛いやん。よしよし、ぶったとこ痛ないか?この俺様バカのせいで・・・」
「誰が俺様バカだ。アーン?」
「わぁー!聖いいなぁ!」
のんきな友人が遠くでなにか叫んでるよ・・・。
みんなの視線。特に女子からの視線が痛い・・・。
朝からいきなりのトラブルに驚きながらも、
私の心臓は久々の楽しさでドキドキしていた。
「痛くないし大丈夫ですっ!」
そういって手を何気なく回避した。
すると忍足君は口を尖らせる。
「クラスメイトなのに敬語なんは、なんや気になるなぁ」
「フン、老けて見えて同年代に見えねえってことだろ」
「なんやと跡部。もういっぺん言ってみぃ!」
彼らも彼らで騒ぎ始めると、周りの女の子たちが、
目の保養とでも言いたそうに、うっとりと眺めていた。
うぅぅうう。何このテニス部のオーラは。
確かに格好いいとは感じるけど、どうして皆が皆、彼らに熱中するのか理解出来ない。
そしてこの人たちがいるだけで教室の中が明るくなり、
自然に人の注目も集めている。きっとそれは街中でも同じなのだろう。
「おい。そろそろHRにしていいか・・・」
黒板の方を見ると担任の先生が渋い顔して立っていた。
担任がそう言えば、一応は席につき始める生徒たち。
いつから居たんだろうか。それがいつも私が先生に感じる疑問。
HRのながったるい話は終わり、時間割を確認する。
1時間目から体育か。憂鬱だなぁ。
更衣室へ移動しようと席を立つとリナが駆け寄ってきてくれた。
「聖ー!更衣室行こうっ!」
「・・・うん」
「いやぁ・・・朝はすごかったね☆」
リナの言いようにムッとする私。誰のお陰でこうなったのか彼女は理解してないみたいで。
こいつめ・・・。
私はリナを脅すには充分な言葉を口からとぼけた様に出した。
「・・・リナの好きな忍足君捕っちゃお」
「えーー!?やっ!ごめんごめん!!許して!」
すれば調子が良いようにパンッと手を合わせて必死に私を拝み出す彼女。
私がクスクスと笑えば、彼女もエヘへと頬を掻く。
そう。リナは忍足君のことがLOVELOVEどっきゅんなの。
「でも頭撫でられたのにはびっくりしたよ・・・」
「そうだねっ。私が嫉妬しないタイプでよかったじゃん☆」
「フフ、おかげで呪い殺されずに済みそうだよ」
この子ならやりかねない・・・。
それからお喋りに花を咲かせながら、リナと更衣室へと向かう。
更衣室に着くと、リナが着替えつつ私に笑顔を振り撒きながら言う。
「そういえば今日から体育は男女混合だねぇ」
あ、そうだった。今日から持久走だった。そしてそれは男子と一緒。
周りを見れば目を輝かせている女の子がほぼ全員。
目当てはそれぞれだと思うけど、やっぱりあの二人かなあ。
どうしてこの4月の後半の時期に持久走をするんだろ。
しかも男女混合で・・・。
「やだなぁ」
「何言ってんの聖!跡部様の美しい走りが見れる絶好のチャンスじゃん!!」
たまにリナは忍足君がすきなのか跡部君が好きなのかわからない発言する。
だけど跡部君の後を目で追いながら、共に彼を見ているのも私は知っていて。
なんとなく、恋が出来る彼女が羨ましく思えた。
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