第3章
名前変換
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「何しとんお前ら」
忍足君がそう聞くと宍戸くんは私たちの手元を見て
理解ができないような苦い声で言った。
「そこの言葉、お前らにそのまま返すぜ。何やってんだ」
そんな宍戸君の問いかけに今度はジロー君が言葉を返す。
「はぐれないおまじない~」
そう言って、繋がれている手をヒョイと上に上げる。
一緒に私も万歳をする形となった。
おまじないかあ、オシャレな言い方!
心の中でクスッと笑う。
「ずいぶん物理的なおまじないだな」
「そんなことより、まさかお前らがコーヒーカップに乗るんじゃないやろな」
忍足君が苦笑交じりに再び宍戸君に問う。
すると彼ではなく、隣にいた鳳君が口を開いた。
「あ、俺が乗りたいって言ったんです」
へえ、そうなんだ。
さすが平和主義者、といったところ?
メルヘンなんだなあ。
私も見習わないといけないな。
「じゃあ俺も乗りたいCー!」
「おう、いいぜ。忍足と倉永はどうするんだ?」
うーん・・・どうしよう。
せっかくのお誘いだし、ジロー君も乗るって言ってるし・・・
もっとみんなと仲良くなりたい。
この想いが最終的な決め手だった。
「うん、乗る!」
「・・・ほな俺は遠慮しとくな」
っえ?
驚きの反射でとっさに彼の顔を見ると彼は優しく微笑んだ。
どうして一緒に乗らないの?
もしかして・・・私が乗るって言ったから?
高ぶっていた気持ちが一気に冷め、
徐々に不安ばかりが代わりに蓄積していく。
するとその想いが顔に出ていたのか、
忍足君は少し驚いたような反応をし、
そして今度は愛おしそうに微笑んだ。
「大丈夫や、ちゃんと外で待っとるから」
そういうと冷たい指先を私の頬に指を滑らす。
んっ・・・。
そして耳元で囁かれた。
「そんな不安そうな顔せんといて、な」
ふぁ・・・っ!
思わず身体がビクッと反応し、心拍数がグンと上がった。
耳を澄ませばトクトクと鼓動が聞こえそうなくらいに。
そんな様子の私たちにみんなは呆れ顔。
けれど忍足君はフフフと笑いながら丸い眼鏡の奥で
深いブラウンの瞳に熱を宿らせているように見えた。
「そんな反応されたら・・・惚れそうになるやろ」
へっ!?
彼の言った台詞に思わず耳を疑う。
そして同時に顔がカッと熱くなる感覚が私を襲った。
び、びっくりした。
本当に忍足君はこんな恥ずかしいような台詞を
ごく当たり前のように言えるんだろ?
ほかの子達にも言ってるのかな。
それだったら忍足君は八方美人?
いや、八方美人は違うか・・・。
ナンパ野郎?これもちがうな。うーん・・・
尻軽?
私がどこか違う方面へ思考がズレ始めた時に
宍戸君の声が私の耳へ入ってくる。
「おい忍足、あんま倉永をからかうなよ。困ってんだろ」
「いじわるはよくないよ~」
「でも反応は可愛かったですよね」
そう言った鳳君にみんなは一斉にジロリと視線を向けた。
あ、いや冗談ですよ、
と渇いた笑いを飛ばす彼の顔は少し引きつっていた。
「ほら、もう入れますよ!」
鳳君の指のさす方向を見ると確かに順は近くに迫っていた。
"いってら"と手を振る忍足君に私は笑顔で手を振り返す。
4人で手首に巻いてあるパスポートを見せ入場する。
宍戸君が白羽の矢で決めたブルーのコーヒーカップに
乗り込むと係員さんが扉の鍵をかけてくれる。
・・・なんだか小さい頃を思い出すなあ。
よくお父さんとコーヒーカップに乗ったっけ。
悲しく懐かしい想いに私一人だけ浸っていると、
周りのみんなの楽しそうな笑い声でハッと我に返った。
・・・今は楽しまないとね!
プルルルルルとブザーが鳴ると
女の子が好きそうなメルヘンな音楽が流れ始め、
床がゆっくりと回り始めた。
「よっしゃ!俺が回してやるぜ!!」
宍戸君はそう言うなり、真ん中にあるハンドルを力強く持ち
クルクルいやグルグル・・・グルングルン、
グワングワン回し始める。
「どらぁぁぁあああああ!」
「わっ!」
あまりの勢いの遠心力で
みんな同じ所一点に身体が自然に滑って行ってしまった。
ギュウギュウとみんなでおしくらまんじゅう。
「うっわー!!すげえ!すげえ!超楽Cー!!」
ジロー君も身体を滑らせ、足元のスペースに転がりながらも
すっごく楽しそうにはしゃいでる。
私たちの乗るコーヒーカップだけ宍戸君の回す馬力によって
常人じゃない速さでガコンガコン言わせながら回っている。
景色を見ている余裕なんてない。
というか景色が見えない。
うわぁ、景色が・・・グルグルグルグル・・・
頭もクラクラしてきて
もう目を開けてられないよ!
「すみません、倉永さん」
ん?
隣に、同じく遠心力でギュウギュウと詰まっている鳳君が口を開く。
どうしたんだろう。
気持ち悪くなっちゃったのかな。
無理もないけど。
「あの、こんなにくっついちゃって・・・」
鳳君が部が悪そうに私に謝る。
確かにすっごくくっついてギュウギュウだけど、
これはしょうがないよ。
「大丈夫だから気にしないで」
元気のない返事と弱々しい表情と共に鳳君がうなずく。
その間にも宍戸君のは綺麗な髪をなびかせ、
まだまだと回し続ける。
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