第3章
名前変換
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「あ~、忍足だ~!」
ジロー君も彼を発見し、
波をかき分けながら彼のもとへと向かう。
彼と手がつながれたままだから、
おのずと私も付いていくことになる。
忍足君も疲れて休憩してるのかな?
ふと彼の手元を見ると1冊の本が握られていた。
あぁ・・・そういえば忍足君は本が好きなんだっけ。
クラスでもよく本を読んでるの見たなぁ。
・・・こんなところにまで来て読まなくてもいいのにね。
「なんや、ジローも一緒やったんか」
アメリカンジョークのように肩をあげる忍足君。
「しかも・・・手ぇ繋いで、仲良しやなあ」
フフッと笑う。
そんな事、急に言われると・・・
彼と繋がれている手を見る。
彼の手はしっかりと私の手を包み込んでくれていた。
照れくさいな。
そんな考えが私の頭の中をよぎったが、すぐにかき消した。
うれしい、と考える。
知っている人に会っても、
変わらずに手を繋いでくれていることが。
・・・なんだか、顔が熱いな。
ジロー君を見上げると立ったまま気持ちよさそうに寝ていた。
え・・・ちょ、立ったまま!?
「ジロー君!起きて!!」
手をクイクイ引っ張る、
するともう片方の手でポリポリと頭を掻く。
そして重そうなまぶたを開く。
「あれ、寝てた?ごめんごめん~」
「フッ、お嬢さんと手ぇ繋いでてもジローはいつも通りやなあ」
忍足君の言葉に、むしろそれが心地よいと思った。
変に意識されても・・・ね?
「俺も仲間に入れてや?」
そう言って私のもう片方の空いてる手をギュッと握ってきた。
わっ・・・と。
忍足君の手はジロー君と違ってひんやりと冷たかった。
思わず驚きの吐息が漏れる。
そんな私の様子に忍足君は私の顔を覗き込む。
「嫌か・・・?」
そういう彼の顔はさっきと全く変わっていないように見えた。
けど、私には何となく伝わってくる物があった。
少しさみしそう と。
私はとっさに首を振り、嫌ではないことを示す。
そして言葉を紡いだ。
「忍足君の手が冷たかったから少し驚いただけだよ」
キュッと手を握り返すと彼は驚いたような目をして、
そして照れくさそうに微笑んだ。
いざ出発!!
と歩き始めてしばらく。
私は気づいたことがあった。
み・・・身動きが取れない!
そう、
私の右手はジロー君、左手は忍足君で埋まっている。
身長差もありすぎてツライ・・・というかすごい差。
まるで私は彼らの子供のよう。
歩きづらいし・・・身動き取れないし。
だけど手は離したくない。
そんな想いが私の心に居座る。
欲張りな私の気持ち、普段はあまり表に出さないからその感情の出現に
私は少し驚いた。
「にしても人が多いなあ、酔ってしまいそうや」
忍足君がポツリとつぶやく。
本当にそうだ。朝に比べて断然に人が多い。
グルリと周りを見渡すとコーヒーカップの列に宍戸君と鳳君が
並んでるのが視界の端に写った。
「あっ、あれ宍戸君たちじゃない?」
「あ~、本当だね。行ってみようか~」
「せやな」
また人の波をかき分け彼らの元へと向かうと
あちらもこっちに気づいたようだった。
鳳君が軽く手を振る。
そしてそれにジロー君がゆるく振り返す。
私も・・・と思ったけど手が繋がれていて出来ない。
と、思い直した。
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