ひとりごと

つぎはぎなこばなし。

2017/11/18 22:53
こばなし
 焦土と化した地に、耳慣れた歌が響いている。けれど、一体それは、幾度繰り返されたものなのだろう。絶えることのない歌声は、弱々しくかすれて、途切れ途切れになりながら、なおも死に絶えた大地に響いている。いくら今になって望み、切に祈ったとて、戻ることなど、永久にないというのに。
 いつも、うろんなまなざしが見つめるその世界には、果たして何があるのだろう。どうして、自分はその世界をともに見ることができないのだろう。あるいは、見ることができたのなら、せめて『彼』の心に寄り添うことくらいはできただろうかと、そう思う。胸を焦がすようなもどかしさに唇を噛みしめ、××はその背中を見つめる。
「××××さん」
 届くことなど、決して、ありはしない。それを知りながら、××は立ち尽くす人影を呼んだ。眼前の背中は、微動だにしない。「××××さん」もう一度、繰り返した。それでも、やはり振り返ることのない背中に、視界がゆがんだ。あふれる涙が、想いが、こらえられなかった。
「××××さん!」
 叫ぶように呼んで、××は広い背中にすがりついた。額を押しつけた背中から、かすかに香ったのは、青葉のにおい。この荒涼とした大地とは、まるでかけ離れたみずみずしさをもつ、清香。刹那、今にも消えゆきそうだった歌声が、ふいに途絶えた。
「――××」
 名前を、呼び返された。その事実を理解するのに、時間がかかった。次いで、息をのんだ。声をなくした。身動きすら、取れなかった。けれど、『彼』は緩慢な動きで××を振り返った。そうして、一片の感情も浮かばないかんばせに、一筋の滴を伝わせる。
「ずっと、キミを待っていたんだ」
 低く、かすれた声が、たしかに、そう言葉を紡いだ。

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