第一章

 あれからアクアの町に辿り着き宿屋へ直行する。
 荷物を置いたあとクロノアとディアナ、俺とシエルの二手に分かれて必要な物を揃えるため店をみて歩くことにした。
 グロウディスは少し休みたいとのことで部屋で留守番だ。

 街路を歩きながら俺とシエルは話をしている。

「なぁ……シエル。まだ、いまいち納得できないんだけど。俺たちが召喚された理由。夢や異変とかで気づいてだったよな」
「ええ……そうですが。まだ何か納得がいかないのでしょうか?」
「世界を救う勇者の存在は必要だと思う。だけど俺たちじゃなくても、この世界にも強いヤツはいると思うんだ」

 そう俺が言うとシエルは首を横に振った。

「確かに、そうかもしれません。私は王の命じられた通りに行動したまで。なぜ王が異世界から勇者を召喚すると言ったのか知らないのです」

 シエルは少し困った顔になっている。

 しつこく聞きすぎたかなぁ……。

「あっ、ごめん! まぁ……俺たちが召喚された真意は、そのうち分かるかもしれないし。今は必要な物を揃えないとな」

 そう俺が言うとシエルは頷いた。
 暫く無言のまま歩いていると突然シエルが立ちどまる。

「……ハクリュウ様。何か夢をおもちですか? ワタシは祖先のように勇敢な召喚魔導師になりたいのです」
「勇敢な召喚魔導師かぁ。シエルの祖先って凄かったんだな。夢……俺がなりたいもの。元の世界では何者かになりたいなんて考えたことない。だけど、この世界に来て初めて凄い英雄になりたいって思ったんだ」
「凄い英雄……ハクリュウ様なら絶対なれます」

 そう言われて俺は、ドキッと鼓動が高鳴った。

「あっ……ありがとう。シエルも勇敢な召喚魔導師になれると思う」
「そうでしょうか……それなら良いのですが」

 そうこう話をしながら歩いていると「イッタァ〜ィ! もう誰よ!?」、誰かとぶつかりよろけた。
 咄嗟に俺は、ぶつかった女性に手を差し伸べる。

「余所見してて、ごめん! 大丈夫か?」

 そう俺が言うと女性は差し出した手を取り立ち上がった。
 その女性をジーッとみつめる。

「あー!? お前は、グロウディスの全財産を盗んだ女!!」
「あっ! 確かあの時の、いかにも間抜けそうな男。っていうか……なんで、こんな所にいるのよ」
「それは、こっちのセリフだ!!」
「えーっと、アハハハ……なんでって言われても。って! こんなことしてる場合じゃないんだった。ボクは連れを探してるんだけど。ねぇ……手伝ってもらえないかな?」

 なんか誤魔化された気がする。

「ハクリュウ様。どうしますか? あまり時間はありませんが?」
「そうだな。でも人探しかぁ……今度は本当なんだよな?」
「うん、流石に二度も騙すつもりはないよ。それに一緒にいた連れが、この土地に慣れていない。それと記憶も曖昧らしくて心配なんだ」

 今度も嘘かもしれない。でも一緒に探すんだから逃げないだろうし様子をみるか。

「その子が迷子になってるって訳か。仕方ない! 見過ごせないし……特徴を教えてくれないか」
「ありがとう。えっと……肩まで長い黄色い髪と、その両脇に赤いリボン。……それと赤いリボンのカチューシャをつけてる可愛い女の子で名前はユリナって言ってた」

「えっ? 今なんて言った!? そ、そんな……まさかあり得ない。ちょっと待て! 本当に……その子は、ユリナって言ったんだな?」
「うん……確かだよ! 神殿の近くで倒れてた所を助けたんだけど……知り合いなの?」
「神殿の近くでって……どういう事なんだ? 俺の知り合いなのかは分からないけど。ここに来てること自体あり得ない」

 なんでユリナが……それとも名前と雰囲気が似ているだけなのか?

「んーじゃあ知り合いじゃないのかな?…………あっ、そうそう自己紹介しないとね。ボクはアキ。よろしくね!」
「俺はハクリュウ。よろしくな! 知ってるヤツなのかハッキリさせるためにも探さないとな」
「ワタシはシエル、よろしくお願いします」

 その後、俺はシエルとアキと一緒にユリナを探すため町中を歩きまわった。

 ★☆★☆★

 あれからユリナを探していたが手がかりがみつからず疲れたので宿屋に戻ってくる。
 そして宿屋の外に設置されているテーブルを囲み俺とシエルとアキは椅子に座って話をしていた。

「みつからなかったな」
「そうですね」
「ユリナ……何処に行っちゃったんだろう…………」

 本当に何処にいるんだ。まさか、またアキに騙されたのか? だけど様子からして本当っぽいし。

 そう話をしているとクロノアとディアナが戻ってきた。

「いたいた……外で休んでたんだね」
「えっと、クロノア。後ろにいるのは、ユリナだよな?」
「そうみたいだね。迷子だったから連れてきたよ。それとハクリュウ……こっち来て三人で、ちょっと話したいんだけど」

 そう言われ俺は頷いた。

 ★☆★☆★

 シエルとディアナとアキの三人から少し離れた場所で俺は、クロノアとユリナの三人だけで話し始める。

「ユリナちゃん。こいつがハクリュウだよ」
「んー……」
「クロノア? これってどういう事だ! 確かユリナは俺のゲームのサブキャラのはずなのに、なんでここにいるんだ?」

 意味が分からない……どうなってるんだ?

「ハクリュウ……何か気づかないかな? ユリナちゃんをみて」
「そう言っても……んー……――」
「ねぇ、クロノアさん。このイケメンが兄? いまいち納得いかないんだけど? だって兄は何時も眠そうで、こんなイケメンじゃないし」
「おい! まさか……|乃亜《のあ》なのか?」

 ユリナは俺の顔を、ジーッとみている。

「私の名前が分かるってことは本当に光兄なの?」

 なんで乃亜がこんな所に……それも、よりにもよって俺のサブで……最悪だ。

「でも、なんでこんなことになった?」
「えっとね……兄と一度も連絡とれなくなって心配で合鍵つかって、アパートに行ったらいないし」

 コッチと時間の経過が異なるのか?

「パソコンがつけっぱなしでゲームのログイン画面になってた。面白そうだからログインしたら、この世界に来てたの。だから何が起きたのか分かんないんだよね」

 どういう事だ? 状況が理解できない。

「それと……私このキャラ嫌い!」
「まぁ、キャラはおいといて。乃亜が俺のサブキャラのユリナとしてこの世界にきた。これって、どういう事だ?」
「ディアナに聞いてみたんだけど。本来なら同じ祭壇では一人しか召喚できないらしいのよ。でも例外もあるみたい」

 意味が分からない……それなのに乃亜はユリナとして召喚されてる。例外……。

「その例外って?」
「それはね……ディアナの話しだと扉が開いたままの状態なら、あり得るかもって」
「ちょっと待て! そうなると、シエルが扉を閉め忘れたのか?」

 それならあり得るかもしれない。でもどういう理屈なんだ?

「そういう事になるよね」
「シエルに確認してみた方が良さそうだな」

 その後、俺とクロノアとユリナは確認をするためシエルとディアナの方へ向かった。

 ★☆★☆★

 シエルとディアナとアキが居る方へくると俺は、すかさず口を開き問いかける。

「シエル……聞きたいんだけど。俺を召喚したあとって異世界との扉は閉めたのか?」
「異世界の扉? それは……なんでしょうか?」
「シエル……召喚魔導師なのよね? 異世界とのゲートを繋ぐ扉のことを知らないなんて……あり得ないわ」

 そう言いディアナはシエルを睨みみた。

「異世界の扉って……申し訳ありません。ワタシは召喚魔導師として初歩の知識しかないのです。そのため異世界の扉のことまでは把握していませんでした」

 知らないって……じゃあ、なんでシエルが俺を召喚したんだ? いや王さまは、どうして……意味が分からな過ぎだ!

「ただ、この召喚に関しては……ホワイトガーデンでワタシ以外にできる者がいないのです」
「なるほど……そういう訳か。じゃあホワイトガーデンでは召喚魔導師が貴重な存在だってことだな」

 シエルは頷き申し訳なさそうな表情で俺をみている。

「そうなると、まだ……その扉は開かれたままなのでは?」
「長い時間が経っているから、もう召喚の魔法陣は消えているとは思うわ」
「それならば良いのですが。本当に申し訳ありません」

 そう言いシエルは深々と頭を下げた。

「まぁ仕方ない……そうだユリナ。ここは俺たちのいた世界じゃないけど大丈夫か? それと職業についてだけど……」
「うん……やったことあるゲームと同じなら大丈夫だと思う。えっと……職業はビショップって! 私は回復系って苦手なんだよ」
「多分……俺が作ったキャラだから大丈夫だとは思うんだけど」

 まあ……ある程度、回復系の職業マスターしてるから大丈夫だとは思う。

「じゃぁ兄……ちゃんと教えてよね!」

 そう言われて俺は渋々頷いた。

「それで、アキとユリナはこれからどうするんだ? まぁユリナは心配だから一緒に連れて行くつもりだけど」
「ボクは暇だし。一緒について行っても構わないけど。ただ訳は話してくれないかな?」

 そう問われアキに、ここまでの経緯とこれから向かう場所にそこで何をするのかを話す。

「……そういう事。じゃあボクも手伝うよ。それにボクは旅慣れしてるから役に立つよ」

 自信過剰なのか? いや、まあ……それだけ自分のことを理解しているのかもしれないよな。

「それは助かります。それほどワタシは旅慣れしていませんので」

 その割には色々と詳しかったと思うんだけど……。

「アタシも……国から出るのは滅多にないから心強いわ」
「えー……ディアナって、そうだったんだ!?」
「用もなかったせいもあるわね」

 確かにディアナの言う通りだ。俺だって用がなければ部屋にこもってるしな。

「私なら用がなくても……ブラっと出かけるよ」
「男でも探しにか?」
「そんな訳ないでしょ!!」

 本当か?

「兄……本当だとしても言わない方がいいと思うよ」
「そうそう……って、ユリナちゃん! 本当じゃないからね」

 そうこうくだらない話をした。そのあと、なんとか話を終えて宿屋の中へと入る。そしてグロウディスに色々と何があったのか訳を話した。
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