第一章

 ここは洞窟の中にある革命派のアジトだ。
 あれから俺とシエルとグロウディスは、ここに辿りつき革命派の者たちと話をしていた。
 そこには革命派のリーダーであるクレイマルスがいて、グレイルーズで起きていることを語ってくれている。

「俺はクレイマルス。革命派のリーダーをしてる」
「なるほど……グロウディスが言ってた人か。俺はハクリュウ、よろしくお願いします」
「クレイマルス! ハクリュウは異世界の者で白き英雄だぞ」

 そう言いグロウディスは俺の肩を叩いた。

「ハクリュウ様は、ワタシが召喚いたしました。それとワタシは、シエルと申します」
「こちらこそ……なるほど、ホワイトガーデンでも異世界の者を召喚してたか」

 そうクレイマルスが言うとシエルは、コクッと頷いている。

「それはそうと現在グレイルーズでは異変が起きている」

 クレイマルスかぁ。何処かで聞いたような名前だ。でも思い出せない。まあ似てる名前ってあるよな。それに、この世界の人みたいだし……。

「それと最近知り合った者が何者かに攫われた」
「そうなのか……。ホワイトガーデン国でも異変が起きていた。ここに来た理由は、それを解決するための手掛かりがみつかるんじゃないかと思って」

 そう話していると、いきなり扉が開いた。そこから三人が飛び込んできて、その場にいた全ての者は驚き警戒する。
 俺は腰の剣の柄に手を添えた。

 敵襲なのか? でも、ここはバレるような場所じゃない……。

 そう思い入って来た三人をよく見据える。

「ハアハアハァ…………待て!? オレだ……ハウベルトだよ」
「そうそう…… アタシよ。だから攻撃しないで」
「なんだ……ディアナとハウベルトか。そんなに慌てて、どうした?」

 グロウディスの知り合いなのか? 革命派のみんなも知ってるみたいだ。そうなると仲間……だけど……。

「悪い……急ぎ報告があってきた。そういえば見慣れない者たちも居るようだが?」
「ああ、あとで紹介する。それよりも何かあったみてぇだな。まあ……それを聞く前に召喚は成功したのか?」
「ええ……成功したわ。ちゃんと異世界の勇者を」

 そう言いディアナは召喚した者を指差している。
 その指差す先へ俺は視線を向けた。

「あー!? なんでクロノアが、ここに居んだよ!!」
「それは、コッチの台詞よ! なんでハクリュウが……」

 コイツはクロノア・マリース・ノギア。同じ世界の者だ。と云ってもゲームの中でしか知らない。だから声を聞いたのは今日が初めてなんだけどな。
 そうそうクロノアのギルドは【ブラックローズ】と云って三強の一つ。俺のギルドと張り合えるほどに強い。

 俺とクロノア……二強のギルマスが、この世界に召喚された。ここにノエルが居れば三強は揃う……でも、まさかな。

 急に寒気がしてきて身を震わせる。

「なるほど……知り合いだったとはな。どういった関係だ?」

 そうグロウディスに言われ俺は嫌な顔をした。

「知り合いだけどコイツは何時も俺に喧嘩ふっかけてくる女で……って、おいクマ!? なんでここにいる!!」
「……クマって! あのねえ……変な所で略すなって言ってるでしょ!!」
「クロノア・マリース・ノギアって名前、凄く言いづらいんだから仕方ないだろ。それにクマみたいに、いきなり襲ってくるしな!!」
「あっそ! こっちの世界では少し大人しくしてようかなって思ってたんだけど。そっちが、そのつもりなら……覚悟はできてるわよね?」

 クロノアが杖を構えている。言い過ぎたか?

「まさか……こんな狭い所で魔法なんて使わないよな!?」

 クロノアは、ニヤッと笑っている。

「私がハクリュウを目の前にして……今まで一度も戦わなかったことってないと思うんだけど」

 クソッ! こうなったらやるしかないのか……。

 そう思い俺は、チラッとシエルをみた。

「おやめください! クロノア様。そして、ハクリュウ様も……何方も悪いという訳ではないと思います」

 そう言いシエルは何時ものクールな表情のままクロノアへ視線を向ける。

「お二人の間に何があったのかは知りません。しかしハクリュウ様も女性に対して、クマは良くないと思います。せめてマックロの方が良いのではないでしょうか?」
「……え、えっとね……ちょ、ちょっと! ハクリュウ。この人、本気で言ってるの?」

 そう言いながらクロノアはシエルを睨みつけた。

「フッフッフッ……ワハハハ、ってか笑えない! ハクリュウ……冗談抜きで頭にきたんだけど。この女を真っ黒焦げにしていいかな?」
「待て! ここは俺が謝る。それに今は、こんなことをしている場合じゃない」

 そう俺が言うとクロノアとシエルは頷き、なんとか泥沼を回避した。

「やっと痴話喧嘩が終わったようだな」
「クレイマルスさん! そんなんじゃありません!!」
「そうなのか? まあいい。それよりも先程の話の続きだ。グレイルーズでも異変は起こっている」
「仲間が攫われたんだったよな。そのことと異変は何か関係しているのか?」

 そう問いかけるとクレイマルスは首を横にふる。

「分からない……なんで攫われたのかも。これは仲間の一人が言っていたことだ。大臣のオルドパルスが関係しているかもしれないと。そうだとしても相手が大臣だけにな」
「確かにそうよね……間違いじゃすまない」

 クロノアって……意外と真面目なのか?

「ん〜そうなると……その攫われた仲間って、どんなヤツだ?」

 そう言いグロウディスは真剣な顔でクレイマルスをみている。

「あの子は異世界から来た天使か女神。とても可愛い女性ですよ!」
「異世界からって言ったよね?」
「ああ、もう一人の仲間が異世界から召喚したらしいが……本当に可愛い人なんだ」

 そういえば、ここにくる前にグロウディスが言ってた……グレイルーズ国で召喚された者のことを。

「三人目も、この世界に来てる。そして、その人は女性で可愛い感じ。んー……他に特徴はないんですか?」
「そうだなぁ〜……喋り方が独特で、にゃをつけて話していた。あとは……あっ! この世界では珍しい職だったはずだ。確か……アサシンとか言っていた気がする」

 ……嫌な予感が当たりそうだ。

「見た目が可愛く子供みたいで、にゃをつける特徴的な喋り方。それで職がアサシンって……ハクリュウ! なんか、アイツのことを思い出したんだけど」
「やっぱり、クロノアもそう思うか?」

 そう問いかけるとクロノアは、コクッと頷いた。

「その人の名前って?」
「名前は確かノエルさんと言っていた。もしかして知り合いなのか?」

 その名前を聞いて俺は、ゾッとする。チラッとクロノアへ視線を向けると青い顔をしていた。

「ちょ、ちょっと待て! ノエルが、この世界に来てるって……」
「その前にノエルが捕まるって! どんだけ油断してたのよ。それとも、かなりの相手だったってこと?」
「ノエルは、あんな風にみえても油断するようなヤツじゃない。それに一人なら強い相手でも勝てる。それだけの装備や防御力はあったはずだ」

 人数が多かったのか? それでも……。

「そうなると……攫ったヤツは一人じゃなかった可能性が高いかもね。ノエルは前から多人数が相手だと負けること多かったし」
「確かにそうだな。なんとかして助けてやりたい。だけど、ノエルのこと苦手なんだよなぁ。まさか、アイツまで召喚されてるなんて」
「私も、ノエルのことは嫌いじゃない。だけど苦手というか逢いたくなかった」

 本当にか? 何時も二人で話をしてたよな。その会話に入れてもらえないことが多かったし……。

「クロノア様にも苦手な人がいたとは……。なぁハウベルト」
「そうだな……これは、もしかしたらクロノア様の違う一面をみれるかもしれない」
「あのね二人共……◯ニたいのかなぁ」

 おいクロノア……まるで魔王なみだな。まあ何時もと同じだけど。

 そう思い一滴の汗が俺の頬を伝い流れ落ちる。

「まあ言い合いはそのぐらいにしておけ! それよりも色々と考えてたんだが……みんなの話を纏めたいと思う」

 フゥー……やっと本題に進めそうだ。

「先ずは、この世界の異変についてだ。シエルの話だとホワイトガーデンの国王が予知夢らしきものをみた」

 そう言いながらグロウディスはシエルをみたあとハウベルトとディアナの方に顔を向ける。

「ブラックレギオンでは城内で異変が起こり、そして仲間同士の言い争いや貴族たちがおかしくなり始めた。国王もまた身体の不調を……そうなるとクレイマルス、グレイルーズではどうだったんだ?」
「言われた通りに色々と調べたんだが。異変は確実に起こっていて、さっき言った仲間が城に詳しいヤツで色々と聞いた。その一つと思われること……それは急に国王が姿をみせなくなったらしい」

 そう言いクレイマルスは身振り手振りで話し始めた。

「それと、ある街では町長と支配人がグルになり女性をはずかしめていた。その挙句の果てに精神的、肉体的にも痛めつけ死にいたらしめると云うような事件が起きていたんだ」
「なんって事だ! そんな事件が起きていたとはな」
「ああグロウディス……俺も未だに信じられない」

 クレイマルスはそう言いグロウディスをみたあと、その話の続きを再開する。

「これはグレイルーズ国の貴族に使える従者からの情報なんだが。貴族の間では変な遊びが流行っているらしい」

 変な遊びってなんだ?

「自分の好みの強い女性同士を闘わせ、その様子をみて楽しんでいる」

 変態貴族ってことなのか?

「そのことと関係あるのか分からないが。グレイルーズの各地で突然、若くて可愛い女性が行方不明になっている。ノエルさんも、それに巻き込まれたんじゃないかって」
「確かにおかしい。俺のみてきた町や村の外見は確かに平和そのものだったが何かギクシャクしていた。それと旅の途中で、とんでもないものをみたぞ。本来ならみつかれば処罰されてもおかしくない案件だ」
「それは、どういうものなのですか?」

 身を乗り出しシエルはグロウディスに問いかける。

「それは、ある辺境の名もなき土地に奴隷たちがいて穴を掘らされ何かの建物を作らされていたりと重労働をさせられていた」
「ま、まさか! 奴隷など信じられません。もしそれが真実ならば、その者を処罰しなければならないのでは? なぜ国はそれに気づけずにいたのでしょうか……」
「これは俺の推測に過ぎない。こんな芸当ができる者……そう考えると、どこかの国の王以外の人物。それか、それに近い者の仕業と考えられる」

 段々とみえてきたぞ。これから、それらを解決していけばいいんだよな。

「グロウディス……城の内部に詳しいって言ってた者が、こんなことを言っていた。城内では国王派と大臣派に分断している。主に貴族や各町や村などのお偉いさんが大臣派につき……国王派には城内の兵士や騎士や、その他の者などがついている」

 内部での派閥か……。

「元々が国王自体もデスクラウンという名前の割には争いごとを好まず。どちらかと言えばゲームなどが好きらしい。それに、かなりお人好しとも聞いている」
「クレイマルス……大臣の様子はどうなんだ?」
「何を考えているか分からない人物らしい」
「そうか……この一件に、その大臣が関わっている可能性は高いな。だが何のために、こんなことをしているかだ。そうなると、もう少し調べる必要がある」

 大臣と国王……んー……。

「なぁ……シエル。俺が召喚された理由って王様の予知夢なんだよな?」
「はい! 王みずから私に、そう言いました。それが何か?」
「よく考えてみたんだけど。何で王さまは、シエルだけに頼んだ?」

 なんかシックリこない……なんでだ?

「そのことについては……ワタシも、よく分からないのです」

 そう言いシエルは、みんなから視線を逸らした。

「そうなのか……それと前から少し気になってたんだけど。前に召喚されたヤツらって、どうなったんだ?」
「各国に王を定めたあと元の世界に帰られたこと以外は分かっていません」
「そっか……それと規則なんだけど」

 ……―― Ⅰ、国同士で起きた争いごとは国王同士で話し合いをするべし。話し合いをしても解決しない場合はコロシアムで解決すること。
 だが、これは飽くまで重要と思われた場合のみ。
 Ⅱ、各国は、お互い交流を図るため年に何回かの祭りやイベントをするべし。
 Ⅲ、国民は奴隷や差別および貧困をなくすために国の政策に力を尽くすべし。
 Ⅳ、そして、みんな仲良くするべし――……

「…… この規則、絶対に無理があって俺なら全部は守れない。仲良くするのは当たり前のことだ。それに、それを規則で縛るのはおかしいと思う。確かに規則は大切だけど……こんなんじゃ間違った方向へ進むんじゃないのか?」
「お前には、そうみえるのか? 規則は大切だ! だがハクリュウの言う通り間違った規則は変な方向に進んで行く」

 ああ……そのせいでおかしくなったのか? いや、それだけじゃない気もする。

「ねぇ、ディアナにハウベルト。私を召喚した理由って王さまの体調の変化と城内の異変に気が付いたからだよね?」
「ええ……あの日アタシが王の下へ行くと何時になく顔色が悪くなっていた。そして前から少しずつ城内の者たちや城内の雰囲気もおかしくなってきてました」

 同じようなことが、ブラックレギオンでも起きていたのか……。

「それで色々と調べている時にグロウディスと出逢ったのよ。そして相談したら異世界から召喚した方がいいって言われて……ハウベルトに頼み許可を得てクロノア様を召喚したってこと」
「うん、そうだね。それと私からみたこの世界なんだけど。確かに、みんな仲良くしてますって感じだった。それって本当に仲がいいって言えるのかなって思ったのよ」

 俺もクロノアと同意見だ。

「本当に仲がいいっていうのは、どんなことでも言い合えて喧嘩しても、また仲直りできて分かり合える関係だと思うんだよね。その人の嫌な所まで受けとめられるぐらいに」

 珍しく今日のクロノアは、マトモなことを言ってる。

「……だから私は全員と仲良くなんて無理。でも場合によっては、ある程度なら変わろうとするかも。だからハクリュウの言うように、これを規則で縛るのはおかしいし……絶対に無理が出ると思うよ」
「確かに、そうかもしれない。だが俺たちの判断で規則を変えることなどできないしな」
「そうね……そういえば話すのを忘れてたわ。城下町に入ろうとしたんだけど、なんらかの力で跳ね返されて無理だったのよ」

 同じだ……いったい何が起きてるんだ?

「ディアナ……なるほど。ホワイトガーデンと同じことが、ブラックレギオンでも起こっていたのか」
「そのようだなクレイマルス。そうなると……グレイルーズでも同じことが起きてる可能性は高い」
「恐らくは……そういえば、さっき話した仲間が城の様子をみに行くと言っていた」

 そうクレイマルスが言った直後。

 ――ドーン! ガッシャーン!!――

 洞窟の外で何かが落ちたような激しい音がした。
 何が起きたんだと思い俺は外へ駆けだす。
 ここに居る者たちも洞窟の外へ向かい走り出した。
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