第二章
あれから俺はラシェルとハウベルトと一緒に中庭に近い二階の西側通路まできた。ここからは下が覗ける。
下を覗くと床に描かれた魔法陣が幾重にも描かれていた。
日は落ち月が登り始め辺りに邪悪な空気を漂わせ始めている。
結構早く城に侵入したと思ったけど、もうこんなに暗くなってきたな。
そう思っていると床に描かれた魔法陣が微かに反応し始めた。
俺は現在ラシェルとハウベルトと物陰に隠れ下を覗いて儀式が始まるのを待っている。
ラシェルは俺の後ろ側で下を覗き様子をみていた。
なぜかハウベルトは落ち着きがなくなっている。
「そろそろか……この邪悪な空気が漂いだし……いや、なんなんだ……こ、これは……」
そう言いながら、ハウベルトは体を震わせていた。
「もしかして怖いのか? いくらなんでも、このぐらいで腰を抜かさないよな」
視線をハウベルトへ向けると、かなり怯えているようだ。
「ハウベルト……大丈夫でしょうか? 顔色が青いですよ」
「あ、いえ……このぐらい……へ……平気でふの……で。し、心配なさらぬ……よう……」
カッコつけたい気持ちは分かる。だが顔色が余計に青く、いや青白くなってるぞ。
「ハウベルト……まさか見た目と違って臆病なのか?」
「それは…… ハハハ……お化けの類は、かなり苦手なのです。ですので……この雰囲気は余計にキツい」
「無理なら、ここで待機していた方がいい。それにラシェルも……ハウベルトと一緒にいた方が安全だ」
俺一人の方が動きやすい。それに怪我でもされたら大変だ。
「しかし……ハクリュウ様は……ど、どうするんだ? まあ……そうして、くれると……ありがたいが」
「ハクリュウ様は、お一人で行かれるつもりですか?」
「そうだな……できることなら、ここにクロノアやユリナ達がくる前に片をつけたいと思ってる」
そう言い俺は中庭の中央へ視線を向ける。
「ば、馬鹿な!? ハクリュウ様……そ、そんなこと無謀すぎる!!」
「ハウベルトの言う通りだと思います。クロノア様たちを待たれた方が……」
「そうかもしれないけど。魔神が封印されている水晶さえ奪ってしまえば、あとはなんとかなると思うし」
サッサと終わらせて、みんなの負担を減らすんだ。
「ですが……そう簡単に水晶を奪えるのでしょうか? まだ何かが潜んでいるように感じるのです」
「それって……俺たちの他にもってことか?」
「ええ……ゲラン、いえ恐らくワタシの弟のレオンはなんらかの目的で名前を変えてここにいる。そう考えると、このまますんなり行くとは思えないのです」
そうだとしても……。
「やっぱりクロノア達が間に合わなかったら俺一人でも行く。いや、たとえ間に合ったとしても……」
そう言った瞬間いきなりハウベルトが俺の襟元を掴み思いっきり顔を殴りとばした。
俺は殴られ少し飛ばされて唇をきる。違和感を覚え唇を触ると手に血が付着した。
……切れたな。
「ハ、ハクリュウ様! な、何を考えているんだ!? 死ぬつもりか。貴方が死んだら、この先どうする? もう少し自分の立場を考えてください!!」
「俺は……このまま誰も傷つけずに終わらせたいと思っているんだ」
「いい加減にしろ!? そんな理想論が、この世界で通用すると思っているのか? あっちの世界では通用していたのかもしれないですが」
そんなの分かってる! だけど……。
「ラシェル様の言うように、クロノア様たちを待たれた方がいい。いや、もし間に合わなかった場合はオレも戦う覚悟はできてます」
そう言い放ち、ハウベルトは俺の襟元を離した。
「ごめん……分かった。だけどラシェルにハウベルト……無理はするなよ。本当なら俺だけで、なんとかできるならって思っている」
少し考えたあと深呼吸して俺は再び話を始める。
「だけど……そうだな。もっと仲間を信じないと」
そう言い俺はラシェルとハウベルトを順にみた。
するとラシェルとハウベルトは笑みを浮かべ頷いている。
「この雰囲気は苦手ですが……なんとか耐えてみせます!」
「ワタシは足を引っ張らないように援護します」
「何時も通りでいい」
余計なことをされて面倒なことになっても困るしな。
その後も俺は中庭を覗き儀式の開始を待った。
・
・
・
★
☆
★
・
・
・
時間が経過し辺りは段々と暗くなってきている。狂気に満ちた空気が一段と増し月は赤く光っていた。
それらと共鳴しているのか魔法陣は不気味な光を発し始める。
そろそろか?
中庭には南側の祭壇にノエルが居て北側にユウさん、エルフの男性が魔法陣の東側に立っている。それとカプリアさんが立っているのは魔法陣の西側だ。
中央に設置された台座付近には獣人ハーフの男性が水晶を持って立っている。
あのエルフの男が、ゲランかもしれない。それと中央の台座の近くに居るヤツが多分オルドパルスだろうな。
そう思っていると魔法陣が不気味な光を放った。
ユウさんとノエルが苦しみだしてる。でも、まだだ。水晶が台座に置かれたあとじゃないと。
今すぐにでもノエルとユウさんを助けたいと考えるも作戦通りに行動しないとと思いとどまる。
堪えないとな。勝手な行動で作戦が失敗したら大変だ。
そう思考を巡らせてるとオルドパルスらしき男が水晶を台座に置いた。
その瞬間を俺は見逃さず即座に行動する。
「今だ!」
中庭に設置されている物に飛び移りながら一階へと降り、すかさず台座に置かれた水晶へ目掛け突進した。
「おい! この先には行かせない」
目の前にヒュウーマンの男が現れ俺の行く手は遮られた。
「まあ……大人しくしてろって言っても無理だろうがな」
「お前はなんなんだ……オルドパルスの手下なのか?」
「フッ……オレがオルドパルスの手下? 勘弁してくれ、と言いたいが。そう思われても仕方ないか」
なんなんだ……コイツは?
「じゃあ、いったい何者なんだ?」
「オレはマキシム。まあ……何をするかは、これから起きることを黙ってみてれば分かる」
「どういう事だ?」
早く台座の方に向かわないといけないのに、こんな所で足止めって。
「言う訳ないだろ。邪魔されたくないからな。そういえば、お前……みた感じホワイトの騎士か?」
「何処を……どうみたらそうみえる! 俺はハクリュウ……ラシェルに召喚された異世界の者だ」
そう言うとマキシムが驚いている。
「お前……今なんて言った!? まさか、ラシェル様が異世界の勇者を召喚したって云うのか。なぜそんなことになったんだ」
なんなんだ。ラシェルのことを知っているのか?
「そういえばグロウディス様がラシェル様のことを言っていた。あー……なぜその時に気づかなかったんだ!」
そう言いマキシムは頭を抱えた。
「お前いったいなんなんだ。さっきから、ずっと戦う素振りもみせず質問ばかりだけど。そもそも、なんでラシェルのことを知ってるんだ?」
「オレはレオン様直属の騎士だ」
レオンって……確か、ラシェルの弟の名前だよな? ってことは……やっぱり、あのゲランてレオンなのか。
「悪いが……この件にラシェル様を巻き込む訳にはいかない。お前もこの件から手を引いてくれ。そうすれば、お前を殺さずにすむ」
「お前たちは何をする気なんだ?」
マキシムは剣先を俺に向けて睨んだ。
それをみて俺は瞬時に鞘から細身の刀を抜き構える。
「その様子じゃ手を引く気はないようだな」
「当たり前だ! 友達が二人共……この儀式で死ぬかもしれない。それなのに見捨てて逃げられる訳ないだろ」
そう言い俺は、すかさず中腰になり目を閉じると刀を構え直した。と同時にマキシムの足を水平に素早く斬りつける。
足を斬りつけられたマキシムは動けないようだ。
「ツウ……これが異世界の勇者の力。早すぎて攻撃がみえなかった。だが……なぜ足を狙った?」
「俺は誰も殺したくない。それに、お前の目的も分かってない……殺す理由もないしな」
「そういう事か。一つ聞きたいことがある。この世界をどうしたいと思っている?」
どうしたいって言われても……。
「そんなことを急に言われても分からない。それに今は、こんなことをしている場合じゃないはずだ」
「お前の返答次第で、あの方の考えも変わると思った。お前は強い勇者なのだろうが、この儀式を失敗させるだけじゃ駄目なんだ。ヤツラを……」
そう言った直後、空が光った。それと同時にマキシムに狙いを定めたかのように氷の剣が魔法陣から現れ無数に降り注いだ。
それをみた俺は即座にマキシムを庇うように立ち双竜の盾を天に翳した。
《守護龍の結界!!》
そう叫ぶと盾が白く発光する。
――ガオォォ―ン!!――
辺りに咆哮が響き渡り姿を現した。すると龍は俺とマキシムの頭上から螺旋を描き下降してくる。
それと同時に結界をつくり出し俺とマキシムを覆って無数の氷の剣の攻撃を防いだ。
「大丈夫か?」
「ああ……すまない」
俺は空を見上げたあと周囲を見渡した。
クロノアが【闇極大魔法ブラックブレス】で無数放たれた魔法の光の矢から誰かを助けたみたいだ。
そういえばラシェルとハウベルトは?
さっきいた二階をみたがラシェルとハウベルトの姿はなかった。
周囲を見渡してみると二人が居て何者かの魔法攻撃を受けたみたいだ。
よかった……なんとか攻撃を防いだみたいだな。
ユリナは無事か?
心配になりユリナが何処にいるのか探した。
居た! ノエルの所に……でもなんで?
そう思い首を傾げる。
するとユリナの周辺の空気が圧縮されるように密度が高まり、その場に蹲っている。
なんか息苦しそうだ!
俺はユリナの方へ駆け出そうとした。その時ユリナの頭上に眩いばかりの光が降り注ぎ体を覆った。更に激しく発光し急に膨張し始める。
――ボンッ!!――
ユリナを覆っていた光は風船が割れるような大きな音を立て大きく弾け飛んだ。
「……!?」
なんでミリアがいるんだ! いや……その前にユリナは何処にいる?
ユリナが消えてミリアが現れたことに対し俺の思考は追いつかず困惑していた。
まあ、あとで確認すればいい。それよりも台座の方に行かないと。
それに今ならマキシムはユリナの方を向いてるし足に怪我を負ってるから大丈夫だろう。
そう思い俺は台座の方へ向かう。
・
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★
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台座よりも少し離れた場所にクロノアとラシェルとハウベルトの姿がみえ立ちどまった。
ゲラン……いやレオンともう一人、誰かがいて真剣な表情で何か話をしている。
気になり俺はクロノア達のそばへ近付いた。
「……確かにそうだけど。だからって……でも一つだけ言わせて。なぜあの時この世界の人達はクロノアにあんな酷いことを……それに、あのことだって悪くなかったはずなのに」
「それは、どういう事なんだ? 黒龍の悪魔の身にいったい何が起きたって言うんだ?」
黒龍の悪魔!?
「おい! 今……黒龍の悪魔って言ったよな?」
「ヒクッ。ハ、ハクリュウ。ヒクッ……あのね、それは……」
「お前が、ラシェル様が召喚したというハクリュウか。その口ぶりでは、お前も何か知ってるようだな」
コイツもラシェルのことを様付けで呼んでいるってことはマキシムってヤツと同じか。
「ああ……逢ったことないけど黒龍の悪魔の話は、あの人から聞いて知ってる。まさか……あの人の召喚された世界がここだったとはな!?」
そう言い放ち俺はレオンとヒューマンの男を睨んだ。
「……聞きたいのだが。お前が言うあの人とは、もしやリュウキという名前か?」
そうレオンに聞かれて俺は頷いた。
「そうだったらどうする? さっきの話を聞く限りだと、リュウキさんの名前が出てこなかった……それって理解できない。その前に、なんでリュウキさんのことを知ってるんだ?」
なんでレオンはリュウキさんのことを知ってるんだ?
「リュウキ……いや、破紅龍のリュウキ、その名はホワイトの者だけに代々語り継がれてきた」
なんでホワイトガーデンだけになんだ?
「破紅龍のリュウキに関してはホワイトだけの逸話。なぜか誰も話したがらなかったらしい」
「そうだろうな。俺は、その話をリュウキさんから聞いてる」
深呼吸をしたあと再び口を開いた。
「なんで破紅龍なんて異名を付けられたのかも」
そう言いレオンへ視線を向ける。
「リュウキさんは、この世界で起きた事を思い出すから、この異名を嫌っていた。俺はその痛みを分けてもらいたくて……」
その時のことを俺は思い出していた。
「ハクリュウという名前をもらい自分に名付けたんだ!」
そう俺が言うとクロノアとレオンとローレンスと後ろから追いかけてきたマキシムは驚いている。
そして俺はその時のことを思い出し話した。
下を覗くと床に描かれた魔法陣が幾重にも描かれていた。
日は落ち月が登り始め辺りに邪悪な空気を漂わせ始めている。
結構早く城に侵入したと思ったけど、もうこんなに暗くなってきたな。
そう思っていると床に描かれた魔法陣が微かに反応し始めた。
俺は現在ラシェルとハウベルトと物陰に隠れ下を覗いて儀式が始まるのを待っている。
ラシェルは俺の後ろ側で下を覗き様子をみていた。
なぜかハウベルトは落ち着きがなくなっている。
「そろそろか……この邪悪な空気が漂いだし……いや、なんなんだ……こ、これは……」
そう言いながら、ハウベルトは体を震わせていた。
「もしかして怖いのか? いくらなんでも、このぐらいで腰を抜かさないよな」
視線をハウベルトへ向けると、かなり怯えているようだ。
「ハウベルト……大丈夫でしょうか? 顔色が青いですよ」
「あ、いえ……このぐらい……へ……平気でふの……で。し、心配なさらぬ……よう……」
カッコつけたい気持ちは分かる。だが顔色が余計に青く、いや青白くなってるぞ。
「ハウベルト……まさか見た目と違って臆病なのか?」
「それは…… ハハハ……お化けの類は、かなり苦手なのです。ですので……この雰囲気は余計にキツい」
「無理なら、ここで待機していた方がいい。それにラシェルも……ハウベルトと一緒にいた方が安全だ」
俺一人の方が動きやすい。それに怪我でもされたら大変だ。
「しかし……ハクリュウ様は……ど、どうするんだ? まあ……そうして、くれると……ありがたいが」
「ハクリュウ様は、お一人で行かれるつもりですか?」
「そうだな……できることなら、ここにクロノアやユリナ達がくる前に片をつけたいと思ってる」
そう言い俺は中庭の中央へ視線を向ける。
「ば、馬鹿な!? ハクリュウ様……そ、そんなこと無謀すぎる!!」
「ハウベルトの言う通りだと思います。クロノア様たちを待たれた方が……」
「そうかもしれないけど。魔神が封印されている水晶さえ奪ってしまえば、あとはなんとかなると思うし」
サッサと終わらせて、みんなの負担を減らすんだ。
「ですが……そう簡単に水晶を奪えるのでしょうか? まだ何かが潜んでいるように感じるのです」
「それって……俺たちの他にもってことか?」
「ええ……ゲラン、いえ恐らくワタシの弟のレオンはなんらかの目的で名前を変えてここにいる。そう考えると、このまますんなり行くとは思えないのです」
そうだとしても……。
「やっぱりクロノア達が間に合わなかったら俺一人でも行く。いや、たとえ間に合ったとしても……」
そう言った瞬間いきなりハウベルトが俺の襟元を掴み思いっきり顔を殴りとばした。
俺は殴られ少し飛ばされて唇をきる。違和感を覚え唇を触ると手に血が付着した。
……切れたな。
「ハ、ハクリュウ様! な、何を考えているんだ!? 死ぬつもりか。貴方が死んだら、この先どうする? もう少し自分の立場を考えてください!!」
「俺は……このまま誰も傷つけずに終わらせたいと思っているんだ」
「いい加減にしろ!? そんな理想論が、この世界で通用すると思っているのか? あっちの世界では通用していたのかもしれないですが」
そんなの分かってる! だけど……。
「ラシェル様の言うように、クロノア様たちを待たれた方がいい。いや、もし間に合わなかった場合はオレも戦う覚悟はできてます」
そう言い放ち、ハウベルトは俺の襟元を離した。
「ごめん……分かった。だけどラシェルにハウベルト……無理はするなよ。本当なら俺だけで、なんとかできるならって思っている」
少し考えたあと深呼吸して俺は再び話を始める。
「だけど……そうだな。もっと仲間を信じないと」
そう言い俺はラシェルとハウベルトを順にみた。
するとラシェルとハウベルトは笑みを浮かべ頷いている。
「この雰囲気は苦手ですが……なんとか耐えてみせます!」
「ワタシは足を引っ張らないように援護します」
「何時も通りでいい」
余計なことをされて面倒なことになっても困るしな。
その後も俺は中庭を覗き儀式の開始を待った。
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時間が経過し辺りは段々と暗くなってきている。狂気に満ちた空気が一段と増し月は赤く光っていた。
それらと共鳴しているのか魔法陣は不気味な光を発し始める。
そろそろか?
中庭には南側の祭壇にノエルが居て北側にユウさん、エルフの男性が魔法陣の東側に立っている。それとカプリアさんが立っているのは魔法陣の西側だ。
中央に設置された台座付近には獣人ハーフの男性が水晶を持って立っている。
あのエルフの男が、ゲランかもしれない。それと中央の台座の近くに居るヤツが多分オルドパルスだろうな。
そう思っていると魔法陣が不気味な光を放った。
ユウさんとノエルが苦しみだしてる。でも、まだだ。水晶が台座に置かれたあとじゃないと。
今すぐにでもノエルとユウさんを助けたいと考えるも作戦通りに行動しないとと思いとどまる。
堪えないとな。勝手な行動で作戦が失敗したら大変だ。
そう思考を巡らせてるとオルドパルスらしき男が水晶を台座に置いた。
その瞬間を俺は見逃さず即座に行動する。
「今だ!」
中庭に設置されている物に飛び移りながら一階へと降り、すかさず台座に置かれた水晶へ目掛け突進した。
「おい! この先には行かせない」
目の前にヒュウーマンの男が現れ俺の行く手は遮られた。
「まあ……大人しくしてろって言っても無理だろうがな」
「お前はなんなんだ……オルドパルスの手下なのか?」
「フッ……オレがオルドパルスの手下? 勘弁してくれ、と言いたいが。そう思われても仕方ないか」
なんなんだ……コイツは?
「じゃあ、いったい何者なんだ?」
「オレはマキシム。まあ……何をするかは、これから起きることを黙ってみてれば分かる」
「どういう事だ?」
早く台座の方に向かわないといけないのに、こんな所で足止めって。
「言う訳ないだろ。邪魔されたくないからな。そういえば、お前……みた感じホワイトの騎士か?」
「何処を……どうみたらそうみえる! 俺はハクリュウ……ラシェルに召喚された異世界の者だ」
そう言うとマキシムが驚いている。
「お前……今なんて言った!? まさか、ラシェル様が異世界の勇者を召喚したって云うのか。なぜそんなことになったんだ」
なんなんだ。ラシェルのことを知っているのか?
「そういえばグロウディス様がラシェル様のことを言っていた。あー……なぜその時に気づかなかったんだ!」
そう言いマキシムは頭を抱えた。
「お前いったいなんなんだ。さっきから、ずっと戦う素振りもみせず質問ばかりだけど。そもそも、なんでラシェルのことを知ってるんだ?」
「オレはレオン様直属の騎士だ」
レオンって……確か、ラシェルの弟の名前だよな? ってことは……やっぱり、あのゲランてレオンなのか。
「悪いが……この件にラシェル様を巻き込む訳にはいかない。お前もこの件から手を引いてくれ。そうすれば、お前を殺さずにすむ」
「お前たちは何をする気なんだ?」
マキシムは剣先を俺に向けて睨んだ。
それをみて俺は瞬時に鞘から細身の刀を抜き構える。
「その様子じゃ手を引く気はないようだな」
「当たり前だ! 友達が二人共……この儀式で死ぬかもしれない。それなのに見捨てて逃げられる訳ないだろ」
そう言い俺は、すかさず中腰になり目を閉じると刀を構え直した。と同時にマキシムの足を水平に素早く斬りつける。
足を斬りつけられたマキシムは動けないようだ。
「ツウ……これが異世界の勇者の力。早すぎて攻撃がみえなかった。だが……なぜ足を狙った?」
「俺は誰も殺したくない。それに、お前の目的も分かってない……殺す理由もないしな」
「そういう事か。一つ聞きたいことがある。この世界をどうしたいと思っている?」
どうしたいって言われても……。
「そんなことを急に言われても分からない。それに今は、こんなことをしている場合じゃないはずだ」
「お前の返答次第で、あの方の考えも変わると思った。お前は強い勇者なのだろうが、この儀式を失敗させるだけじゃ駄目なんだ。ヤツラを……」
そう言った直後、空が光った。それと同時にマキシムに狙いを定めたかのように氷の剣が魔法陣から現れ無数に降り注いだ。
それをみた俺は即座にマキシムを庇うように立ち双竜の盾を天に翳した。
《守護龍の結界!!》
そう叫ぶと盾が白く発光する。
――ガオォォ―ン!!――
辺りに咆哮が響き渡り姿を現した。すると龍は俺とマキシムの頭上から螺旋を描き下降してくる。
それと同時に結界をつくり出し俺とマキシムを覆って無数の氷の剣の攻撃を防いだ。
「大丈夫か?」
「ああ……すまない」
俺は空を見上げたあと周囲を見渡した。
クロノアが【闇極大魔法ブラックブレス】で無数放たれた魔法の光の矢から誰かを助けたみたいだ。
そういえばラシェルとハウベルトは?
さっきいた二階をみたがラシェルとハウベルトの姿はなかった。
周囲を見渡してみると二人が居て何者かの魔法攻撃を受けたみたいだ。
よかった……なんとか攻撃を防いだみたいだな。
ユリナは無事か?
心配になりユリナが何処にいるのか探した。
居た! ノエルの所に……でもなんで?
そう思い首を傾げる。
するとユリナの周辺の空気が圧縮されるように密度が高まり、その場に蹲っている。
なんか息苦しそうだ!
俺はユリナの方へ駆け出そうとした。その時ユリナの頭上に眩いばかりの光が降り注ぎ体を覆った。更に激しく発光し急に膨張し始める。
――ボンッ!!――
ユリナを覆っていた光は風船が割れるような大きな音を立て大きく弾け飛んだ。
「……!?」
なんでミリアがいるんだ! いや……その前にユリナは何処にいる?
ユリナが消えてミリアが現れたことに対し俺の思考は追いつかず困惑していた。
まあ、あとで確認すればいい。それよりも台座の方に行かないと。
それに今ならマキシムはユリナの方を向いてるし足に怪我を負ってるから大丈夫だろう。
そう思い俺は台座の方へ向かう。
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台座よりも少し離れた場所にクロノアとラシェルとハウベルトの姿がみえ立ちどまった。
ゲラン……いやレオンともう一人、誰かがいて真剣な表情で何か話をしている。
気になり俺はクロノア達のそばへ近付いた。
「……確かにそうだけど。だからって……でも一つだけ言わせて。なぜあの時この世界の人達はクロノアにあんな酷いことを……それに、あのことだって悪くなかったはずなのに」
「それは、どういう事なんだ? 黒龍の悪魔の身にいったい何が起きたって言うんだ?」
黒龍の悪魔!?
「おい! 今……黒龍の悪魔って言ったよな?」
「ヒクッ。ハ、ハクリュウ。ヒクッ……あのね、それは……」
「お前が、ラシェル様が召喚したというハクリュウか。その口ぶりでは、お前も何か知ってるようだな」
コイツもラシェルのことを様付けで呼んでいるってことはマキシムってヤツと同じか。
「ああ……逢ったことないけど黒龍の悪魔の話は、あの人から聞いて知ってる。まさか……あの人の召喚された世界がここだったとはな!?」
そう言い放ち俺はレオンとヒューマンの男を睨んだ。
「……聞きたいのだが。お前が言うあの人とは、もしやリュウキという名前か?」
そうレオンに聞かれて俺は頷いた。
「そうだったらどうする? さっきの話を聞く限りだと、リュウキさんの名前が出てこなかった……それって理解できない。その前に、なんでリュウキさんのことを知ってるんだ?」
なんでレオンはリュウキさんのことを知ってるんだ?
「リュウキ……いや、破紅龍のリュウキ、その名はホワイトの者だけに代々語り継がれてきた」
なんでホワイトガーデンだけになんだ?
「破紅龍のリュウキに関してはホワイトだけの逸話。なぜか誰も話したがらなかったらしい」
「そうだろうな。俺は、その話をリュウキさんから聞いてる」
深呼吸をしたあと再び口を開いた。
「なんで破紅龍なんて異名を付けられたのかも」
そう言いレオンへ視線を向ける。
「リュウキさんは、この世界で起きた事を思い出すから、この異名を嫌っていた。俺はその痛みを分けてもらいたくて……」
その時のことを俺は思い出していた。
「ハクリュウという名前をもらい自分に名付けたんだ!」
そう俺が言うとクロノアとレオンとローレンスと後ろから追いかけてきたマキシムは驚いている。
そして俺はその時のことを思い出し話した。
