第二章

 これからの行動を話し合ったあと俺はラシェルとハウベルトと強行突破を試みることにした。このまま隠れていても埒が明かないからだ。
 向かいくる敵を俺は殺さず気絶させていく。
 ハウベルトは躊躇いなく半殺しにしているようだ。
 そんな中ラシェルは召喚獣を使い向かいくる敵を血祭りに……いや、みない方がいいかもしれない。
 そうしながら階段をみつけ二階へと向かった。

 二階の通路を進みながら敵を倒していき広い場所までくる。

「流石に疲れてきました。休憩しませんか」
「ワタシも魔力が尽きてきましたので……」
「俺は大丈夫だけど……そうだな、そうするか」

 周囲を警戒しながら近くの部屋に入った。

 ★☆★☆★

 部屋の中に入り物陰に隠れ話し始める。

「これからどうする?」
「恐らくは中庭の近くまで来ていると思うのですが。内部の見取り図でもあれば……」
「そうですね。指示では、この辺りでの待機だったはずです」

 階段を上がって北西に向かい広い通路の近くで待機ってことは……この辺で間違いないと思う。多分な……。

「そうだな……時がこないと何もできない。今は、ゆっくり休もうか」

 そう言い俺は、んーっと言いながら伸びた。
 それと同時に、バンッと勢いよく扉が開き俺とラシェルとハウベルトは驚き立ちあがって身構える。

 敵なのか?

 真紅の長い髪を前から全て束ねている男が近づいてきた。
 俺たちの前までくるとハウベルトをみて指を差している。

「お前がハクリュウか? なるほど……中々骨のありそうなヤツだ」

 待て……違う。

「いや……人違いだ。ハクリュウ様は……」

 そう言いハウベルトは俺を指差した。

「どうみたら、ハウベルトと間違うんだ! というか……なんで俺の名前を知っている?」
「マジか……嘘だろ!? こいつがハクリュウだと……確かに顔はいいが、どうみても弱々しくみえるぞ。本当に強いのか?」

 余計なお世話だ! 見た目で判断するなよな!!

 そう思い俺は真紅の髪の男を睨んだ。

「見た目だけで弱いって判断するなよな。そもそも戦いもしないで分かるって云うのか?」
「フッ……思ったよりもいい顔するじゃねえか! そうそうオレはシグマだ……クロノアをオレのものにするためハクリュウ、お前を殺す!!」

 はい……今なんていった? なんでクロノアのために俺が狙われるんだ!?

「なんでクロノアのために狙われなきゃならない?」
「その通りだ! 状況が理解できない」

 ハウベルトの言う通りだ。いったい何が起きてる?

「そういえば……シグマ、お前を何処かで見た覚えがある。……そうか! コロシアム。シグマ・ラクス、コロシアムで大量に死傷者を出した……とんでもないヤツだ!!」
「なぜそんな人が、こんな場所にいるのですか?」
「フッ……聞いて驚け! 俺は元々オルドパルス様の配下だ」

 なるほど……敵ってことだな。

「さっきまでクロノアがいる方を見張っていた。だが俺は彼女に一目惚れしてなぁ。それでクロノアのためにハクリュウを殺しに来たって訳だ」
「まさか……俺を殺せって、クロノアに頼まれたんじゃないよな」
「クロノア様が野蛮な人でも……流石にそこまで非道なことはしないと思いますよ」

 どうだかな……。

「いや、クロノアならやりかねない!!」
「おい……待て! クロノアはそんなこと言ってねえぞ」
「じゃあ、なんて言ってたんだ?」

 どうせたいしたことじゃないんだろうけどな。

「片思いの相手がいて、それがハクリュウだと言っていた」
「はあ? クロノアが俺を……フッ、そんなのあり得る訳ないだろ」
「だが、そう言っていたのは事実だ。お前のことが好きだってな」

 それが真実なら……嘘をついただけだろうな。

「そうだとしたって、お前をフルために俺の名前をいっただけだと思うぞ」
「なるほど……これほどまでに鈍いとは……女心が全然分かってねえ。だがお前を殺さないとクロノアを手に入れられねえからな」

 鈍い……って知るか!

「悪く思うなよ……お前を今直ぐ殺す!」
「ちょっと待て!? クロノアのために、なんで……クソッ! 仕方ない、やるしかないか。あとで覚えてろよ!! クロノアァァー!!!!」

 そう叫び俺は剣を抜き構える。
 それと同時にハウベルトとラシェルも身構えた。
 シグマが待ってくれる訳もなく猛突進してきて拳で殴りかかってくる。
 それを俺は素早くかわし剣身の斬れない場所で次に繰り出された拳を払い除けた。

「なんで攻撃してこない! オレを馬鹿にしてんのか?」
「そんなんじゃない。無意味な殺し合いをしたくないだけだ!」
「ふざけんなっ!」

 そう言いシグマは俺に目掛け回し蹴りを繰り出してくる。
 それを俺は避け剣身の斬れない部分で繰り出されるシグマの拳を払い除けた。
 それを繰り返し部屋から通路へでる。

 ★☆★☆★

 通路に出た俺はシグマの攻撃をかわしながら場所を移動していった。

「いい加減にしろよ……クソが!」
「お前がいい加減諦めろよ」

 それを聞いたシグマは更に怒ったらしい。

 俺は悪くないぞ。普通のことを言っただけだし。
 シグマは馬鹿の一つ覚えに俺を殴ろうとしている。次にくるのは蹴りだろうな。

 思った通りシグマは拳で殴るの次に足で蹴るを選択してきた。分かり易くて助かる。
 そのおかげで俺は簡単にシグマの攻撃を回避できていた。

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 シグマの攻撃をかわしながら一階へ降りて来た俺は聞き覚えのある声がする部屋へと入って目が点になる。
 そのあとからシグマが入って来て目の前の光景に対し動けずにいるようだ。
 そこにはユリナがいて、うつ伏せになっている女の腰を片足で踏みつけ鞭を構えていた。
 ユリナに踏みつけられている女は宝石のように透き通り光るライトグリーンの髪を、ひらひらと蝶が羽ばたくように揺れるリボンでツインテールを束ねている。

「オーホホホホホ! さあ……私を女王様とお呼び!! そして私の下僕となりなさい!」

 我に返った俺は改めてユリナに視線を向けた。

「ユリナ……お前まさか!?」
「ちょっ、ちょっと待て! なんだこの光景は? ププッ……こ、こりゃいい! エマが、エマが……おもしれえ……傑作だぜ。ワハハハハッ……」

 そう言いながらシグマは、ドンドンと壁を何度も叩き腹を抱え大笑いしている。

「クッ……シグマ笑うなぁ〜!! クソォッー! 覚えてなさいよ」

 エマという女は涙を浮かべ悔しがっていた。

「あー……えっと、これはね」

 俺の声に気づきユリナはエマから離れて、オドオドしている。

 俺の妹ながら可愛い。

 そう思い俺はユリナの仕草を愛おしく思いみていた。

「ユリナ……まさかとは思うけど」
「あ〜……えっと、だからね。これは……」
「なるほど……そっか。分かったぞ!」
「はい? 何がかな」

 ユリナにそう聞かれ俺は堂々と返答する。

「いや、その鞭スキル使うと誰でもそうなるのかと納得しただけだ。ユリナは、もうその鞭スキル使うなよ」

 それを聞きユリナは、なぜかホッとしているようにみえた。
 そう話をしているとエマとシグマは、いきなり攻撃を仕掛けてくる。それと同時に床が爆風と共に崩れた。
 慌てて俺とユリナとシャナとアリスティアとクレイマルスとアキリシア、シグマとエマはなんとかギリギリ回避する。

「えっと……恐らくこんな無茶苦茶なことをするヤツは、アイツだけだよな」
「確かに、クロノア様以外には考えられない」

 そうアリスティアが言い俺は頷いた。
 俺たちは今から現れるであろうクロノアをその穴から覗き待っている。
 チラッと横目で俺は、シグマとエマをみた。
 二人は何が起きたのかが分からずに呆然と佇んでいるみたいだ。
 案の定……グロウディスとテリオスとディアナとクロノアが順に穴の空いた床から顔を出した。登りきり床に立つと、なぜかクロノアは驚いている。
 ハァーっと溜息をつき俺はクロノアをみた。

「おい、クロノア! 前から、ずっと思ってたんだけどな」
「ハ、ハクリュウ……何かな? こんな所で」
「俺に恨みでもあるのか? って……俺は、お前に恨まれることしたのかよ!」

 そう俺が言うとクロノアの目が泳いでいる。

「それってハクリュウ。なんのこと言ってるのかな?」
「惚けるつもりか? それとも本当に自覚がないのかよ!!」
「えっと……ハクリュウ。あのさ……なんでそんなに怒っているのかな?」

 ふざけてるのか?

「そんなに……俺を殺したいのかよ!!」
「だから、なんで……そんな話になるのよ! 訳が分からないんだけど!?」
「こんな時に、なんの話をしてるんだ! 目の前に敵がいるんだぞ」

 そんなの分かってる。だけど……このことだけは絶対に譲れないんだ。

「ごめん、グロウディス。納得がいかないことを、そのままにしたくない。クロノア! あんな嘘を、なんでシグマってやつに言ったんだ!? そのおかげで俺は……」
「嘘って……あーあれね。アイツ……本気にしたんだ。へぇ〜……そっか、そっか……」
「あのな……あんな嘘ついてくれたおかげで俺は、アイツに狙われた。いや……現に今も狙われているんだぞ! だからお前が、この状況を解決しろよな!?」

 そうすれば面倒な戦いから解放される。

「ちょ、ちょっと待って! なんで私がやらなきゃいけないのよ。もとはといえば……アイツが勝手に嘘を信じて、ハクリュウに戦いを挑んだだけでしょ!!」
「おいおい……いい加減にしろ! 嘘だったとしてもオレはクロノアとは戦うつもりはねえぞ。好きになった女に手を出すつもりはねえからな」
「ふ〜ん……シグマ、久しぶりだね。そっかぁ……ボクからクロノア様に乗り換えたんだぁ。まあ……別に関係ないけどさ」

 アキとシグマって知り合いなのかぁ。

「ア、アキリシア様……オレは断じて乗り換えたんじゃありません! クロノアは近くの存在。アキリシア様は遠い存在で好きだってことで」
「おい! お前らいい加減にしろ!? 特に、シグマ……何を考えているんだ! 敵を前にして好きとか嫌いとか訳の分からんことばかり……ふざけるのも大概にしろ!!」
「ライロス! これはオレの問題だ。お前に言われる筋合いはない」

 コイツ……何処から現れたんだ?

「おい! なんなんだ……クッ、まだ他にもいたのかよ!!」
「ハクリュウ……そうみたいだね」

 そう言い俺とクロノアは言い合いをやめ身構える。

「そういえばラシェルとハウベルトはどうしたんだ?」

 そう言い俺は辺りを見回し二人を探した。

「そういえば、いませんね?」

 ディアナもそう言いながら前後左右見渡している。

「お兄ちゃんと、そこのシグマさんって人が……この部屋に入って来た時にはラシェルさんもハウベルトさんもいなかったよ」
「そうなると、さっきいた部屋に……まだいるかもしれない」
「フッ、もしかして……あの二人のことを言ってるのか? それなら今頃は、オレの部下たちが相手をしている最中だ」

 クソッ! やられた……さっきシグマがコイツの名前を言ってたな。確かライロスって名前だったはず。

 悔しさのあまり目の前でニヤけているライロスを睨んだ。

「ク、クソッ! ここまで慎重にきたつもりだったのに、こんな所でラシェルとハウベルトが」
「今は悔いても仕方ない。それに、まだやられた訳じゃないぞ!」

 グロウディスがそう言ってくれるも悔しくて俺は俯いて拳を握り締める。

「そうかもしれないけど……」
「それはそうと、どうするのよこの状況。それに……この部屋で、この人数じゃ戦うのって……かなり無理があると思うんだけど?」
「クロノア様の言う通り……確かに多いな」

 そうテリオスが言い俺は、クロノアへ視線を向けた。

「ああ……確かに多いし狭い! ましてやクロノアが見事に床を破壊してくれたおかげでな!!」
「仕方ないじゃない、いくら探しても抜け道がなかったんだから。それに偶然、破壊した場所が……ここだっただけだし」
「仕方ない、ここは分散するしかないようね。ハクリュウ様……ラシェル様とハウベルトの所に向かって下さい。あとは残った者で、なんとかします」

 そう言いディアナは俺とクロノアの前にでる。

「ディアナ……すまない。それとユリナ! 無理はするなよ」
「うん! 分かった。兄も無理しないでね」

 可愛い妹に言われ俺は嬉しくなり笑みを浮かべ頷き即座に部屋から通路へ駆け出した。

「おい……待ちやがれ!?」

 そう叫ぶシグマの声が聞こえてくる。だが追いかけてくる気配はなかった。
 暫くすると誰かが追ってくる気配を感じる。

 さっきのライロスってヤツか?

 そう思うも立ち止まらず来た道を思い出しながら向かいくる敵を薙ぎ払い通路を駆け抜けた。

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 階段を駆け上り二階の通路へとでる。するとハウベルトの叫び声が聞こえてきた。

 西の方か?

 そう思い速度を上げて走る。
 声が聞こえた所までくると、ラシェルとハウベルトは敵から攻撃されそうになっていた。

 マズい……助けないと!

 そう思い素早く二人の所に駆けつける。と同時に敵がラシェルとハウベルトを攻撃しようとした瞬間、俺は剣を抜き瞬時に振り上げた。

 《疾風連斬撃殺!!》

 刃が疾風の如く空を切り連続で斬りつけていき一瞬のうちに敵は次々に床に倒れていく。

 間に合ってよかった。

 そう思い剣を消すとラシェルとハウベルトの方へ視線を向ける。
 二人は驚いているみたいだ。

「フゥー……ラシェルにハウベルト。大丈夫か……怪我は?」
「怪我はありません。ただハウベルトが敵の投げた小瓶の中に入っていた液体を顔に浴びてしまい……目に入って大変でした」
「あの叫び声は、そういう事だったんだな」

 そう言い俺は、ホッと胸を撫で下ろした。

「申し訳ない。ですが本気で戦っているハクリュウ様の姿を始めてみました。まさか、これほど強いとは……」
「ワタシもハウベルトと同じです。こんなに強かったのですね」
「ハハ……そんなに褒められてもな」

 そんなに褒めないでくれ……照れるから。

 そうこうしていると俺の背後から気配を感じる。

「やっと追いついた」

 その声と共に俺は振り返った。

「クソッ……お前か」

 そこにはライロスが居て両手にナイフを持ち身構えている。

「もう逃がさないからな!」

 そう言い俺に目掛け回転しながら両手に持つナイフで斬りつけてきた。
 それを俺は避けていく。

「逃げられそうもない」
「その選択肢は元々ないと思われます」

 ラシェルの言う通りだ。

 すかさずライロスは俺を攻撃してくる。
 あとから来たライロスの部下らしき敵たちがラシェルとハウベルトを攻撃していた。
 それを二人はなんとか避けて攻撃している。
 ラシェルは結界を張り敵の攻撃をかわしていた。結界の効力が弱まったらしく歪み始めている。
 敵の一人が気づきラシェルをナイフで斬りつけようとした。

 ラシェルが危ない! でも今はライロスの攻撃を避けるので精一杯だ。

 そう思っているとハウベルトがラシェルの方へ駆け寄り敵を剣で斬りつける。

「お怪我はありませんか?」
「なんとか大丈夫です。助けてくれて、ありがとうございました。綺麗な剣さばき見事でしたよ」

 あー……俺も言われてみたい。

「いえ……それほどでもありません。それよりも怪我がなく良かった」

 それを全て見聞きしている暇もなくライロスは俺を狙い攻撃してくる。

「余所見とは……随分と余裕だな」
「そうみえるのか?」
「ああ……お前をみてるとムカついてくる。特に余裕な表情が気にくわないんだよ。それに……なんで本気で戦わない。オレを馬鹿にしてるのか?」

 そう言いライロスは俺を睨んだ。

「別にお前を馬鹿にしてなんかいない。それに、これでも俺は本気で戦ってる。ただ、ある人の助言の通りに無駄な力を使わないようにしてるだけだ」
「そうか……なるほどな。だが、どうしても……お前が本気を出しているようにはみえない。オレが、その余裕ぶった表情を歪めてやる!」

 さっきよりも高速に両手のナイフを交互に繰り出し俺を攻撃してくる。
 それを俺は全て避けていった。

「クッ……面倒だけど仕方ない。本当は余力を残しておきたかった。だけど、この状況じゃやるしかないか」
「その言葉を待ってたぜ」

 そう言いライロスは両手に持っていたナイフを仕舞い。すかさず両手に銃を持ち構えている。
 深呼吸をしたあと俺は、メニュー画面を操作して剣を仕舞った。
 メニュー画面から柄に龍の飾りが施された細身の刀を取り出すと俺は身構える。
 するとライロスは俺との間合いを取り銃口を向けていた。

 《バレット シューティング サンダー!!》

 そうライロスは言い放ち両手に持つ銃口からビリビリと音を立て放つ電流を纏った弾丸を交互に連射させる。
 瞬時に俺は、その弾丸の軌道を読み取った。それと同時に素早く刀を抜き弾丸に刃をあて払い除ける。

「なるほど……ナイフ使いにしては、やけに使い方が荒いと思ってたけど。銃の方が得意って訳か」
「フッ……そういうお前も、さっきの剣より……その刀の方が動きはいいようだな」
「ああ……この刀は軽くて一番使いやすい。だけど、ある人からもらったものだから……必要な時にしか使わないんだ。それに威力があり過ぎるしな。だから普段は封印している」

 そう言い俺は一旦刀を鞘に戻し身構えた。

「ほう……そうなると少しは本気を出してくれたようだな」

 そう言いライロスは両手に銃を構え直し俺に向ける。
 銃口を向けられたと同時に俺は素早くライロスの懐に入り即座に刀を鞘から抜いた。

 《極刀秘剣 蒼風刀斬殺!!》

 刃に風を纏わせると青く発光する。すかさず刀を一閃すると鋭い刃がライロスを襲い斬りつけた。
 その攻撃をかわそうとするもライロスは、あまりにも攻撃が速くて動けないでいる。
 その勢いのまま俺はライロスの右側下腹部を斬りつけた。と同時に刀を鞘に収める。
 俺は視線をライロスに向けると手で傷口を抑えているのがみえた。

「クッ、やっぱり……お前は気に入らない。まだ余裕な顔をしている。それが本気か? ハアハア……まだ手加減してるよな!? あー……クソッオォォォー!!」

 そう言いライロスは左手に持っている銃を俺に向ける。

「いい加減こんなことやめないか。俺は、できれば無駄なことをしたくないんだ」
「お前……何を言っているのか分かってるのか?」
「分かっているつもりだ。だけど……ただできることなら誰も殺したくない」

 そんなのは無理だって分かってる。でも……。

「ハハハハハ……コリャ笑えるねえ。これが勇者か……そんなことを言っていると、そのうち自分が死ぬ破目になるぞ」
「そうかもな……でも、そうならないように努力して強くなればいいだけだと思うんだ」
「はあ……お前と話をしていると頭が変になりそうだ。それに、この傷のせいで体が思うように動かない」

 ツラそうだ。少し楽にしてやった方がいいか。

「じゃあライロス……これ以上けが人を増やしたくないから、とりあえずここで休んでもらう」

 バッグから眠りの粉が入った小袋を取り出しライロスに振りかけた。

「クソッ……やっぱり……お前…………気に入らない。殺して……や」

 最後まで言えずライロスは眠ったようだ。
 そのあと俺はラシェルとハウベルトを襲いくる敵から助ける。
 そしてラシェルに頼みライロスの傷口を治してもらった。

「敵を助けるなんてあり得ない。なぜハクリュウ様は、ライロスを助けたのですか?」
「ハウベルト……ただ、このまま放っておいたら死んじゃうかもしれないと思った」
「確かにそうかもしれない。目を覚ましたらライロスは襲ってくると思いますよ」
「そうかもな……でも、その時はまた戦えばいいだけだしな」

 そう俺が言うとラシェルとハウベルトは溜息をついている。

「仕方ありません。その時はワタシも戦います」
「そうですね。オレも……ハクリュウ様の援護をさせていただきますよ」
「ああ……ありがとう。できるだけ二人に迷惑をかけないように戦うようにする」

 そう言い俺は苦笑した。
 その後、俺とラシェルとハウベルトは中庭を目指し通路を歩き始める。
 まだ敵は沢山いた。それを倒していく。どれだけの敵が、この城に居るのかと思いながら歩みを進める。

 いい加減にしてくれよ。

 そう心で呟き俺はラシェルとハウベルトと共に敵を倒し先を急いだ。
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