第一章

 カプリアとホープからの連絡を待っていたユリナとクロノアと俺は、テリオスが持っている水晶に手を添えている。

「ドキドキするね」
「なんで私まで……」
「なんか本格的な展開になってきた」

 真の勇者の力が手に入るんだ。

 そう思っていると水晶が仄かに光を放った。

『やあ……待たせたね。ノエルとも連絡がついたよ』

 いよいよか……。

『じゃあ始めるよ。ハクリュウ……今から君にテレパスで詠唱する言葉を伝えるから、その通りに唱えてほしい。大丈夫かな?』
「あまり自信ないけど……問題ないと思う」
「無理なら私が変わろうか?」

 慌てて俺は首を横に振る。

「あっ、クロノア。だっ、大丈夫だ! おっ、お前に水晶壊されたくないしな」
「いくらなんでも……水晶を破壊するほどの魔力を使う訳ないでしょ!」
「あの〜……そんなことやってる暇ないと思います。時間が勿体無いですよ」

 ユリナに言われクロノアと俺は言い合いをやめた。
 改めてユリナとクロノアと俺は水晶に手をかざす。

 なんだ? 頭がクラクラしてきたぞ。

 “ じゃあ始めるよ”

 そうホープが俺の頭の中に話しかける。

 《天と地 異なる空間にて存在せし者たちよ 我らが四人 異世界から来た者なり 使命を果たすため真の力 ここに指し示せ!!》

 そう俺が言い放つと野太い声が頭の中に入ってきた。嫌だ……綺麗なおねえさんの声にかえて。(泣く)

 “ 汝らの願いを叶えよう。そして手を天に掲げよ!!”

 その声を聞き俺たち三人は片手を頭上に掲げた。
 クロノアとユリナにもその声が聞こえているみたいで涙ぐんでいる。

 “汝その力を使う時。手のひらを天に向け、こう唱えよ《聖なる力よ我が下に!!》と”

 俺たち三人は、その声の通りに言い放った。

「「「聖なる力よ我が下に!!」」」

 すると俺の左手が発光して紋章らしきものが浮きあがった。

 ユリナとクロノアの手も光ってる。やっぱり紋章が現れてるんだろうなぁ。そういえば……ノエルも勇者の証を手に入れてるはず。

 そう思い俺は再び手の甲に現れた紋章へ視線を向ける。

「これが俺の紋章……」
『勇者の証である紋章は出たかな?』
「手の甲に現れたけど……」

 この紋章カッコいい。

『なるほど……それで、クロノアとユリナはどうだったかな?』
「私もユリナちゃんも手の甲に出てるよ」
『どんな紋章が現れたか教えてくれるかな?』

 なんで聞くんだ?

「俺のは白いドラゴンの上に盾。その上に重なるように剣が二本下向きに交差してる」
『ドラゴンに盾と二本の剣…………クロノアは?』
「私の方は黒いドラゴンが描かれていて……開いた本の上に杖が二本交差してるよ」

 なんで一人ずつ聞いてるんだ?

「……ユリナは?」
「ピンク色のドラゴンで……これって、どういう事なの? 私って、ヒーラーだよね」
「ユリナ、どうしたんだ?」

 明らかにユリナの様子が変だ。

「兄……うん、あのね。紋章なんだけど、ピンクのドラゴンの上に宝箱。その上に本と虫眼鏡が描かれてる」
「それって、ヒーラーじゃなくてトレジャーハンターじゃないのか」
「私もそう思う……だけど、なんでだろう?」

 なんでヒーラーなのにトレジャーハンターの紋章なんだろう?

『三人共にドラゴンの紋章が現れたのかぁ。ノエルにも同じ紋章が現れてるかもしれないね。気になるから聞いてくるよ』

 ホープの更新が切れた。
 その間の俺たちは、ここに居る他の者たちも交えて紋章の見せ合いをする。

 ・
 ・
 ・
 ★
 ☆
 ★
 ・
 ・
 ・

 ホープの連絡を待っている間、俺たちは段々話すことがなくなってきた。

 まだか?

 そう思っているとラシェルが持つ水晶が仄かに発光する。そう水晶を交替で持つことになって今はラシェルの番だ。

『ごめん……待たせたね』
「いや大丈夫だ。それで何か分かったのか?」
『うん……思った通り、ノエルもドラゴンの紋章だったよ。灰色のドラゴンの上にスコープ。その上にライフルとピストルが交差してるらしい』

 アサシン……まあ元々の職業だしな。

『それと、これはノエルの方でも話したことなんだけどね。コッチでも話すよ』
「この紋章が現れると何か大変なこと起きるのか?」
『うん、そうなるね。ドラゴンの勇者が四人現れた。もしかしたら上級界の神が試そうとしているのかも』

 試す……なんのためにだ?

『それか……もしくは、この一件と比べものにならないような何かが起ころうとしてて……そのために現れた可能性もあるよ』
「何が起こるって?」
『それは分からない……調べてみないとね。それと、これも聞いてほしいんだ』

 まだ何かあるのか?

『もしかしたら魔神の器になろうとしているユウにも手伝ってもらうことになるかもしれない』
「なんでユウさんなの?」
『僕の親友である魔神を元に戻すためには、ユウの力を借りなきゃいけないんだ』

 ユウさん……凄いことになってきたけど大丈夫かな?

『これは僕にも責任がある。彼が魔神になったのは嫉妬からだと思うんだ。僕が人間の友達を沢山つくったせいかもしれない』

 なるほど……だけど神でも嫉妬するのか?

『その前まで僕には彼しか友達がいなかったんだ。でも人間の友達が欲しくなって水晶をつくった。でも彼には僕しか友達がいなかったから……』

 それで嫉妬して魔神になったって訳か……。

『彼の名は魔神ディスペアー。だけど本当の名はハーモニー・ワールドって云うんだ。それと僕の正式名は、ホープ・ワールド』

 魔神の名前と神の名前が、かなりかけ離れてるなぁ。

『僕と彼は本来一緒に居なきゃならない。二人合わせてピース・ワールドになるんだからね』

 似たような名前の妖精がゲームに居たような気もする。

『これは恐らくだけど……地上の異変って僕と彼のせいかもしれない。一緒に居なきゃいけないのにバラバラだから』

 それは……あり得るよな。

『そのせいで、みんなに影響でちゃったのかも……だから早く彼が封印されている水晶を回収して違う方法で封印を解かないと駄目なんだよ』
「そういう事なのね」
『だから明日の儀式を絶対に失敗したくないんだ!』

 回収する理由って……そういう訳なんだな。

「なんか面倒になってきたね」
「クロノアが余計なことをしなきゃ大丈夫だと思うぞ」
「そんなに死にたいのかな……ハクリュウ!!」

 そう言いクロノアは杖を俺の方へ向ける。

「ちょ……待て! こんな所で魔法なんか使ったら敵にみつかる!!」
「確かにそう……。ハクリュウ……命拾いしたわねぇ」

 クロノアが不満そうな顔している。本気で魔法を……ぶっぱなそうとしてたのか?

 そう思い俺は、ゾッとし身を震わせた。

『クスクス……じゃあ明日の儀式は任せたよ』
「何処までのことができるか分からない……だけど最善を尽くすつもりだ」
「私もだよ。できるだけのことするつもりです!」

 やり過ぎるなよ……クロノア。

「良く分かってないけど……私も頑張るね」

 無理するな……ユリナ。お前は巻き込まれただけなんだからな。

『心強いよ……でも無理はしないでね』

 そうホープが言うと交信は途絶える。

「明日か……色々大変になるな」
「ハクリュウ……無理しないでね。ううん……変な我慢癖を起こさないで、かな」
「何時我慢してたって?」

 クロノアの言っている意味が理解不能だ。

「よくゲームでやられてたじゃない。勝てる相手でもさ」
「あー相手の能力を知るためにな」
「これってゲームじゃないんだからね」

 普通に心配してくれてるのか?

「そうだな……気を付けるよ」

 そう言い俺は苦笑する。
 そして俺たちは明日の確認をしたあと荷馬車に戻り交替で眠りについた。
9/9ページ
スキ❤︎