第一章

 あれから俺たちは話をしたあと翌朝を待ち行動することにした。丁度二台あり女性と男性に分かれ荷馬車内で休むことにする。勿論、見張りは交代でだ。

 明日か……ここは敵の本拠地かもしれない。俺の能力で何処までやれるか分からないけど、この世界で英雄になるためには何があっても死ぬ気でやらないとな。
 ハウベルト達の話だとノエルは間違いなく、この名もなき城にいる。それにユウさんもだ。
 そういえばブラックレギオンとホワイトガーデンの大臣も居るって言ってた。まあ……明日になれば、ちゃんとしたことが分かるよな。

 そう考えていると外が騒がしくなる。

「こんな遅くに申し訳ない。ある人から頼まれて勇者さま達に話がありきた。ここで間違いないか?」
「お前は何者だ? なぜここにいる事が分かった?」
「それは今から詳しく話すつもりだ。それで早急に話さなければならない」

 アリスティアが誰かと揉めているみたいだ。敵か? でも、なんか話の内容からして違う気がする。

「早急にだと……いったい、お前はなんなんだ?」
「ちょっと待ってくれないか。ここにディアナかハウベルトは居るのか?」
「お前……ディアナとハウベルトの知り合いなのか?」

 ハウベルトとディアナの知り合いなのか?

「何かあったようだな」

 寝ていたグロウディスは起き上がり声のする方を向いた。

「ふあぁ〜……なんの騒ぎだ? 呼ばれたような気もするが……」

 そう言いハウベルトは眠い目を擦りながら荷馬車の外へと向かう。

 俺も行った方がいいよな。

 そう思いハウベルトを追って荷馬車の外へ向かった。

 ★☆★☆★

 荷馬車から降り俺はハウベルトの方へ視線を向ける。
 既にハウベルトはアリスティアのそばまで来ていた。そのあとグロウディスがハウベルトの近くによる。

「ふぁ〜アリスティア……何かあったのか? それに名前を呼ばれた気がしたんだが」

 そう言いハウベルトはアリスティアと話をしている男性をみた。

「あっ! えっ? なぜテリオス様がここにいるのです」

 慌ててハウベルトは別の荷馬車に寝てるディアナを起こしに向かっている。

 急に話し方が変わったぞ。もしかしてハウベルトとディアナが言ってた熱血王子なのか?

 そう思いテリオスをみる。

「ハハハハハ……相変わらずのようで愉快だ!」

 相変わらずって……ハウベルトとディアナは何時もあんな感じってことか。

 ふとアリスティアへ視線を向けた。なぜか何時もと違う表情をしている。

 なんで顔が赤いんだ?

 ディアナが居る荷馬車へ視線を向けるとハウベルトが何か言ってるようだ。

「ディアナ早く起きろ!」

 そう言うと荷馬車からディアナが出てきた。

「ん〜……うるさいぞハウベルト。何かあったのか……って……」

 コッチを向いてディアナは驚いている。と同時に慌てて、コッチに向かって走ってきた。

「なぜテリオス様が?」
「やはり知り合いなのか? というか、なぜ様をつける?」
「あっ、アリスティア。このお方は、ブラックレギオンの王子テリオス・ブラック様です」

 やっぱりそうなのか。だけど熱血王子にはみえない。

「えっ!? 確か熱血王子って言ってなかったか? そうはみえない」
「うむ……王子にみえないのか」
「みえないかもしれないけど。間違いなく我が国の王子です!」

 そうハウベルトが言うとアリスティアは青ざめ頭を下げた。

「ハッ! これは申し訳ありません。ブラックレギオンの王子様とは知らず、ご無礼の数々失礼いたしました」
「アリスティアって、テリオス様みたいなのが好みだったとか?」

 思っていても普通は言えないよな。

「ディアナ……あっ! それは……いやただ、お前たちが言っていた感じと違ってたからで……だな」
「ん? なんのことだ。って、まあいい……急ぎの用が先だからな。至急話したいことがある。他にも居るなら呼んで来てくれないか」

 それを聞いたディアナとハウベルトは別々の荷馬車へ向かう。

 急ぎの用ってなんだろう?

 そう思っていると各々の荷馬車から眠いのか目をこすりながら寝ていたみんながコッチに向かってくる。

 なんか何時もと違ってシエル……いや、ラシェルが余所行きの表情をしているようにみえるのは気のせいか?

「これは……テリオス様ですよね?」
「ああ、そうだが……貴女は?」
「これは失礼いたしました。ワタシは、ホワイトガーデンの王女ラシェルと申します。テリオス様のことは以前に我が城にお越しになられた際に遠くから拝見しており……」

 もしかしてラシェルってテリオスのことが好きなのか?

 なぜかテリオスに対し嫉妬心が湧いてきた。

「ほう……貴女が、あの有名なひきこもり姫さまか」
「あっ、それは……」

 そう言いラシェルは、ハァーっと小さな溜息をつきテリオスから目を逸らしている。

 この世界にも、ひきこもりってあるんだな。

 その後みんなが揃いテリオスは話し始めた。

「ある人に頼まれてきた。ただ、その存在が人なのかは不明なのだ。その者の話しを今から一緒に聞いてほしい!」

 そう言いテリオスはバッグの中から取り出し俺たちにみせる。

「その水晶って、もしかして……噂のアレじゃ?」

 水晶を食い入るようにクロノアはみつめた。

「おや……この水晶のことを知っているようだな」
「知っている物かは分かりません。だけど、そうかなって思ったの」
「そういう事か。まあ、これがそうなのかは今から分かるだろう」

 そう言うとテリオスは水晶へ視線を向ける。

「おい! 水晶を届けたぞ。これから、どうすればいい?」
『やあ、ありがとう……テリオス』

 水晶から声が聞こえてきた。それは少年ぽい声だ。

『今から話すことは、みんなが集まっている場所じゃないと駄目なんだ』

 重い話なのか? なんか周囲の空気が凄く重たくなってきたぞ。

『先ずは僕が誰なのかという所からかな。君たちからみた僕は神と云う存在だよ』
「神さま……という事は私たちを創られた存在だってことですよね?」

 そう問いかけたシャナは、ワクワクしているみたいだ。

『残念~……それが違うんだよなぁ』

 違うって……別にも神がいるってことか?

『神にも色々いてね。まあ……僕は、それほど位が高い方じゃないんだよなぁ』

 なるほど神にも上下関係があるってことなんだな。

『あっ、そうだった! 僕の名前はホープ。改めて、よろしくね。それと気軽にホープって呼んでいいよ。僕って堅苦しいのが苦手なんだ』
「ホープ……改めて、よろしく! それで大事な話って?」

 俺は早く話を聞きたくて急かしてしまった。

『そう慌てないで……今から、もう一つの水晶と繋ぐから待ってて。僕からって云うよりも話をして欲しい人が居るんだ』

 それって誰なんだ?

『やっと繋がったようじゃな。私はブラックレギオン国の大臣カプリアです』
「まっ、まさか! カプリア……貴女がなぜ?」

 テリオスは知らなかったってことか……。

「確かカプリア様は各国の大臣たちと一緒のはずでは?」
『その声は、ハウベルトか……今はそばにいない。用意された自室に居るのでのう』
「話をしていて聞かれないのですか?」

 ディアナの言う通りだ。

『防音の魔法を部屋にかけてあるゆえ大丈夫じゃ。それはそうと……恐らくは、ハウベルトから既に聞いておると思う。こちらにはユウとノエルと云う異世界の者がおる』
「ハイ! そのことは、ここに居る者たちに伝えてあります」
『うむ、ハウベルト……ご苦労でした。そのことも踏まえて皆に伝えたきことがある。それを今から話すとしようかのう』

 話すことってなんだ? ブラックの大臣は敵じゃないのか……。

『所持していた水晶でホープに相談していた。その折にテリオス様が水晶を拾ったと聞いたゆえ、この上ないチャンスと思い頼んだのじゃ』
「待ってください。なぜカプリア様は敵の陣営にいらっしゃるのでしょうか?」

 確かにラシェルの言う通りだ。なんのために……。

『実はのう……数年前にオルドパルスが、この話を持ちかけてきた。しかし私は元々水晶を所持していたため、オルドパルスが何をしようとしているのか薄々気づいていたのじゃ』

 そういう訳か。なんとなく分かった気がする。要は……潜入して様子を窺っていたってことだよな。

『そのため私は、この話にワザとのったのです。そうオルドパルスの手元に魔神の封印された水晶があるでのう。それをあわよくば手に入れることができたらと思ったのじゃ』
「オルドパルスが持っている水晶に魔神が封印されているって……」
「クロノア……ああ、このままじゃユウさんの身が危ない! それに、ノエルもな」

 直ぐにでも助けにいかないと……だけど下手に動いてもマズいしな。

『ほう……ユウ・ライオルスとノエルと云う者を知っているようじゃな」
「ノエルは前まで同じギルドの仲間だった。そこには、クロノアもいたけどな。そのギルドは今……俺が引き継いでいてユウさんは、そのギルドのマスターだったんだ」
『なるほど……異世界の者、全員が知り合いとはのう』

 ノエルとユウさん……そういえば!?

「ノエルとユウさんは、まだ逢っていないんですか?」
『二人は逢ってはいないが……何か気になることでもあるのか?』
「ノエルとユウさんは兄妹なんだ」

 逢っていない……じゃあユウさんとノエルは気づいていないってことだよな。

『なんという事……あって良い訳がないのじゃ。兄が魔神の器、妹は生贄になろうとしておる。やはり、これは阻止しなければならぬ』
「阻止って……どんな方法でだ?」

 グロウディスの言う通り、どんな方法で?

『ホープの話によれば、ユウは魔神の器。すなわち依り代のようなものじゃ。それゆえに、ユウ自体の体が残っても恐らくは魂を抜かれ死ぬかもしれぬ。それにノエルは生贄として命を失うだろう』

 そんな事にならないように、なんとか助け出さないと……。

『それでなのだが……オルドパルスは、かなり用心深いゆえに水晶を肌身離さず持っておる。そのため確認することができぬ。だが儀式の時であれば可能かもしれぬ』
「ふぅ~ん、なるほどだね。ボク達のやることって……オルドパルスが儀式の時に水晶を手放したのを見計らって襲撃して水晶を奪う。そして、ノエルとユウって人を救うってことで合ってる?」

 その方法なら可能かもしれない。だけど……内部に居る敵の数って?

『ええ、その通りです。その声は、アキリシア様……相変わらず頭のキレが良いようですね』

 アキ……照れてるのか? 意外に可愛いとこあるんだな。

「じゃあ……手分けして動いた方がいいと思うけど?」
『アキリシア様の言う通りなのですが。本来なら異世界の者たちが三人揃い儀式をすませる。その方が力を発揮できて良かったのです。ですが今となっては……』
「それって、すぐに出来ないのか?」

 そう言い俺は水晶をみつめる。

『ホープから聞いた話では儀式自体二通りあるらしいのじゃ。その方法の一つは三人が揃い私の所持している水晶に手を翳しホープに証を……』

 ん? なんで急に話のをやめたんだ。

『ちょっと待ってほしいのじゃ。私が考えていることが可能かホープに聞いてこようと思う』

 そう言ったあと交信が途絶えた。

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 カプリアからの交信が途絶えたあと暫くのあいだ、みんなと話をする。
 たいした話じゃなくて、どうでもいいことばかりだ。

 俺とクロノアが付き合ってる? 冗談でもやめてくれ!(泣く)

 クロノアとはそんな関係な訳もなく、ただの戦友みたいなもの。だから好きとか、そんな感情なんかない。それに怒らせると怖いしな。

 そんなどうでもいいような話をしていると水晶が仄かに発光する。

『やあ……待たせて、ごめんね。カプリアからある程度は聞いていると思うけど。これから勇者の証を授けようと思う。それで、ハクリュウとクロノアと……あとユリナだったかな? この水晶に手を翳していてほしい』
「ユリナもって、どういう事だ?」

 確かにユリナも、こことは別世界から来ている。だけど事故だぞ。間違って転移して来ちゃっただけだ。

『どうしてハクリュウ……君がユリナの心配をするんだい?』
「妹の心配をするのは当たり前だ!」
『そういう事かぁ……だからハクリュウがムキになってるんだね』

 妹の心配をしない兄はいないだろ。いや……家族だって心配だ。

「ユリナは間違って、こっちの世界に来たんだ」
『だから余計に試したいんだ。もしかしたら、オルドパルスと魔神の陰謀を阻止することができるかもしれない。ただユリナに証が出たらになるけどね』

 それを聞き納得する。
 そして、その後も俺たちはホープの話を聞いていた。
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