第一章

 あれから辺境の地にある城近くの森へと辿りついた。城の名前は分からない。そのため名もなき城とグロウディスが勝手に名づける。

 勝手に城名を付けていいのか?

 そう思い名もなき城をみつめた。

 ここからよく城がみえる。それに森になってるおかげで茂みに隠れられるしな。ここにノエルが居るかもしれない。
 居るか分からないけどユウさんも……。

 後ろを向き荷馬車へ視線を向ける。

 ここはいい場所だ。広い空間があるから荷馬車を隠せた。

 そう思っているとグロウディスが話を始める。

「うむ……これは、やはり奴隷に城をつくらせていたようだ」
「ここは、いったい誰の城なんだ?」
「ハクリュウ。今の段階では推測になってしまうが。恐らくは、オルドパルスが魔王のために造った城だと思う」
「もしかして、もう魔王は……ノエルもここに?」

 そう言い城へ視線を向けた。

「それは分からん。だが、ここに居る可能性はある」
「ボクが口を挟むのは筋違いかもしれない。だけど、なんでこんなことになったの?」
「そのことについては、よく分かっていない。今この世界で何が起きているのか……起ころうとしてるのかが……」
「確かに、ディアナの言う通り……ワタシも同じです。情報が足りなさすぎて……ただ気になっていることがあるのです」

 そう言いシエルはグロウディスへ視線を向ける。

「グロウディス様が言っていた水晶。元々は誰が作ったのでしょうか? そして何のために、それを……」
「シエルの言う通りだ。確かに腑に落ちない点が、いくつもありすぎる。その一つが水晶は本来なんのために作られたのか……まだ、そこまでは分かっていない」

 いったい……その水晶って?

「ただ言えるのは、その水晶は持つものの願いを叶えるというが真実なのかも不明。水晶の言い伝えも色々と散乱していて、どれが本当なのかも分からないからな」

 真実か嘘……言い伝え自体が多すぎる。そもそも、なんでそんなにあるんだ?

「前に話した他にも言い伝えが存在する。ある勇者が水晶に災いをもたらす邪神を封印したという言い伝えも残っている」

 ちょ……どんだけあるんだよ!?

 突っ込みを入れたかったけど、ややっこしくなるんでやめた。

「グロウディス。その話なら、アタシも聞いたことがあるわ。確か――……」

 ……――一人の神様がおりました。
 ある日、神様は天界から人間達の様子をみていて楽しそうにしていたので自分もその輪の中に入りたくなり羨ましく思う。
 しかし自分の姿は人間にはみえません。どうしたら人間たちの中に入っていけるのかと悩みました。
 そんなある日、姿がみえなくても水晶さえあれば話はできるかもしれないと思う。その後、神様は水晶を作り人間の住む村に置きました。
 そしてある日、村の若者が水晶をみつけ自分の家に持ち帰る。若者は水晶を、じっとみつめ話しかけた。その水晶は、それに反応して話し始める。
 若者は一瞬驚きましたが直ぐに水晶に向かって話をした。水晶を通して若者と話ができ神様は喜んだ。
 若者は水晶の声が神様だと聞かされ驚きました。その後、神様は理由を詳しく話し始める。すると若者は直ぐに神様の考えが分かり二人だけの秘密にしようという事になった――……

 なんで二人だけの秘密なのに言い伝えとして残ってるんだ?

 ……――その後、若者と神様は友達になる。ある日それに目をつけた、もう一人の神様が自分も水晶を作りました。
 その神様はある城の近くに水晶を置き、それを国で王様の次に偉い人がみつける。
 その神様は自分の野心のために、その水晶を拾った者にこう命じた。
『我のために生け贄を差し出せ、そうすれば国は安泰。後世まで繁栄し続くだろう』と、そして国で一番美しく処女であろう女性を一人探しだし生け贄として差し出したのだ。
 しかしそれは、その神様が力を手にするための策略だった。その力を手に入れたあと邪神となり世界を破滅に追い込んだ。
 しかし、もう一人の神様がそれに気づいた。その神様は仲の良い村の若者にこの事を伝える。その邪神となった神様を封印するように頼んだ。
 その後その若者と神様は互いに協力して邪神を封印の水晶に閉じ込めることができた。
 そして、その手を貸した者をこらしめ平和な世界に戻る――……

「……―― とアタシが知っている邪神を封印した水晶の話」
「ちょ、ちょっと待って下さい。今の話をワタシは聞いたことがありません。もしもですが、ディアナのその話だと水晶は三個存在するのではないのでしょうか」

 確かに三個存在することになる。

「その一個が、もしもオルドパルスの手にあるとすれば……あと二個はどこに?」
「シエルの言う通りだね。……あーそういえば!! ボクのいた国で不思議な水晶を発見したって噂を聞いたことがあったんだった」
「アキ……それは本当か? それは、どこだか分かってるのか?」

 それが本当ならば、あと一個あるってことだ。

「あっ! え、えっと……ボクのいた国って……ハハハハハ――……」

 なんでアキは国の話になると誤魔化そうとする?

 そうこう話をしていると遠くから荷馬車があり得ないスピードで突っ込んできた。
 荷馬車の中からは何処かで聞いたことのある声がしてくる。

「おぉおおーい! 誰か止めてくれ〜!! オレは、まだ死にたくな〜い!!!!」

 この声って……もしかしてハウベルトか?

「アレはハウベルトね」

 ディアナは頭を抱えながら荷馬車を止めると中を覗いた。

「いい加減にして……ハウベルト!! このぐらいでお前が死ぬわけがないでしょ! どうして、そこまで臆病なわけ?」
「まぁ、ディアナ……ちょっと待てって! ハウベルト、なんでこうなったんだ?」

 そう聞くとハウベルトは口をモゴモゴし始める。
 荷馬車の中から何やらもめている様子のアリスティアとシャナの声が聞こえてきた。

「アリスティア! なぜあんな無謀な魔法を使ったのです!?」
「いやぁ……まさか暴走するなんて思わなくてな」
「頼む……すまない吐きそうだ」

 そう言いクレイマルスは荷馬車の中からゲッソリした顔でヨロケながら出てくる。間に合わず吐いた。

 嫌なものをみた。ウッ……吐きそうだ。

 ふとアキへ視線を向けると慌てて被っていた帽子を深々に被り俺の後ろに隠れる。

「ハクリュウ様。その帽子を被っている子と、もう一人の女の子は誰なんだ?」
「私は異世界から間違って来た、ハクリュウ兄の妹でユリナと申します!」
「ほお〜ハクリュウ様の妹ねぇ〜……っていうか、なぜここに?」

 うんうん……そう思うよなぁ。

「アリスティア。まぁ簡単に話せば、シエルが異世界との扉を閉め忘れて……そこから」

 それを聞いたシエルは俯き申し訳なさそうな表情をしていた。

「ユリナ様のことは分かったが。ハクリュウ様の後ろに隠れている者は?」
「あっ! アキっていって、ユリナの命の恩人だ」

 そうオレが言うとアリスティアは首を傾げながら後ろに隠れるアキを覗きみる。

「なんで私とシャナをみるなり、いきなり隠れた?」

 なんで更に隠れようとしてるんだ?

「なるほど、アキさんというのですね。では、ご挨拶がわりという事で……どうぞ!」

 シャナは魔法で大きなカエルをアキの目の前に召喚した。

「やっ、やめろおぉぉ〜シャナ!? ボクが、カエル苦手なの知ってるだろ!!」

 アキは声を出してしまい慌ててまた俺の後ろに隠れる。
 それをみてシャナとアリスティアは頭を抱えていた。

「はぁ〜なぜここに……」
「相変わらずですね。姫さまは……」
「シャナ!? はぁ〜折角正体を隠していたのにさ」

 そうだったのか……。

「えっ!? アキって、お姫様なの?」

 ユリナの言う通り、どうみてもアキがお姫さまだなんて思えない。

「それって本当なのか?」
「そういえば確かグレイルーズのお姫様は、お忍びで城の厳重な包囲網をかいくぐり各国を旅して歩いていると聞いた事があります。アキさんが、そのお姫様なのでしょうか?」
「ああ、シエルその通りだ。全然姫にみえない、この方がグレイルーズ国のアキリシア様。はぁ〜……いい加減に自分の立場をわきまえてください!」

 アキはかなり自由人らしい。

「アリスティア……無理を言ってはいけませんわ! アキリシア様は誰もが認め諦めているほどの自由人なのですから」
「ぼっ、ボクって……」

 してやったりとシャナは満足そうにアキをみている。

「さて……|揶揄う《からかう》のもこのぐらいにして。アキリシア様は、なぜここに居るのですか?」
「シャナ……最初は成り行きだった。ハクリュウたちの話を聞いていて国……いやこの世界が、もしかしたら大変なことになるかもって思ったんだ。だから、ボクにも何かできないかなと……」
「そうですね。王も部屋にこもりっきりになってしまい。今、王の代わりに指揮をとれる者といえば……アキリシア様だけです」

 何処の国も大変なことになっているみたいだ。

「そういえば、ホワイトガーデンにも姫が一人いたな。確か……内向的で表に出ない。今までも良い縁談があっても全て断る。年頃を過ぎても結婚しないで部屋に閉じこもってる姫がいたはずだが?」

 そう言いグロウディスは、チラッとシエルをみる。

「確か名前はラシェル様だったかな? ん〜一度だけ逢ったことはあるが、あの時は顔は隠していたし……少ししか話していない。シエル……前から気になってたんだが? オレが城にいた時って、お前は何をしていた?」
「そっ、それは……」
「何を焦っている? お前の話し方なんだが妙に丁寧だし。その声も前から、どっかで聞いたような気がしていた。まさかと思うが……」

 えっ!? まさかシエルも、お姫さまってことないよな。でも、この話の流れからしてあり得るぞ。

「流石です。やはりグロウディス様には隠し通せませんでした。お逢いした時から何時か分かってしまうと思っていましたわ」
「これって……グロウディス。まさかと思うけど、シエルがホワイトガーデンのお姫様だって云うのか?」
「シエル……貴女は、ラシェル王女で間違いないですな?」

 やっぱりそういう展開か。

「はい……間違いありません。ホワイトガーデン第一王女ラシェルです。騙していて申し訳ありませんでした。これには色々と事情があり、こうするしかなかったのです」
「あの引きこもりのラシェル様が自ら王の命で動くとなると……」
「グロウディス……本当は違うのです」

 違うってどういう事だ?

「確かに、お父さまは夢をみて予言されました。しかし、それだけでは無いのです」

 話すのがツライのか? 無理しているようにみえる。

「お父様は、そのあと眠りについたまま目を覚まさなくなってしまいました。弟のレオンまでもが急に、おかしくなり城を出て何処かに行ってしまったのです」

 弟も居るのか……おかしくなったってことは相当なできごとがあったんだろうな。

「そのため、お父様が言われていたことを思い出し行動に移したんです」
「なるほど、それで異世界から勇者を召喚したって訳か……」
「ええ……ですが思っていた以上に状況は最悪だった。まさか、こんなことになるとは思ってはいなかったのです」

 これって……かなり状況が最悪な方に入り組んでいるんじゃないのか?

「ふぅ〜ん、シエルがラシェル。そうなると私より年上のラシェルが指揮をとるのがベストかな?」
「はぁ〜アキリシア様……そういうことではなく、この場合お互いに指揮をとるのが筋かと」
「アリスティア。そうなのか……ボクは、こういうの苦手なんだけどなぁ。あっ! そういえばブラックレギオンのあの熱血王子って、どうしてるんだ?」

 ブラックレギオンは熱血王子。お姫さまじゃないのか……。

「そういえば王子とは最近あっていないが……ディアナ知ってるか?」
「ハウベルト。そういえば、あの日も城には居なかったと思うんだが?」
「王子が不在とは……何かあったのか?」

 グロウディスの言う通りだ。ブラックレギオンで、なんだかありそうな予感がする。

「いや多分、何時も通り人助けに歩いているのかと」

 そう言うとハウベルトとディアナは溜息をついていた。

 人助けの旅か……イメージしてるような王子じゃないのか? ブラックレギオンだから優しいイメージはないんだよなぁ。

「まあ以外とヒョッコリ現れるかもしれない」
「ハウベルト……そんなこと言わないでよ。王子が本当に現れたらどうするの?」
「確かに面倒なことになりかねないな」

 それを聞き、やっぱりヤバい系の人なのかと思い俺の顔がひきつる。
 そのあと俺たちは、これからどうするか色々と相談することにした。
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