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第18時間目「クリエイティブなサポートボーイ」

 
とある日、走太、翼、秀英、そして守は技術室に入ろうとしていた。理由は昨日マリアが生徒たちに話していたことにある。



 マリアは教壇に立ち、生徒たちの顔をゆっくりと見回した。
マリア「みんな。ヒーロースーツって知ってるかしら?」
蜘蛛美が手を上げて発言した。
蜘蛛美「もちろんじゃ。ひーろーが個性を生かすために着るすーつのことじゃろ?」
マリア「じゃあ、それを作りたい人が学ぶところはどこでしょう?」
妖子も手を上げて発言した。
妖子「サポート科でしょうか?」
マリア「正解よ!」
マリアは優しく笑った。光に当たっているマリアの紅い唇が艶やかに光り、色気を放っている。
マリア「体育祭の前までにC組のみなさんに挨拶でもしたらどうかしら。これからあなたたちが世話になるかもしれないし。」
走太「そっか…。よし!」
走太は手を上げながら勢いよく席を立った。椅子は後ろの席の机にガン!と思いっきりぶつかった。
走太「僕、さっそく挨拶しようと思います!」
翼「相棒が行くなら俺も行く。」
秀英「俺も同意する。なにしろC組に俺の幼なじみがいるからな。」
守「オレも行くッス〜!オレをより男前に魅せられる機械でもあればいいッスね!」
守は変わらずの軽いノリであった。
蜘蛛美「盾山よ。さぽーと科はその為にあるのではないぞ。」
守「だって機械ってなんでも出来るじゃないスか?オレの魅力を上げてくれる機械もフツーにあるはずッス!」
蜘蛛美の忠告があっても、守はチャラチャラしていた。蜘蛛美は頭が空っぽの守に何を言っても無駄だと分かり、諦めた。
マリア「C組の人はよく技術室にいるから、そこを訪ねるのがいいかしらね。」
影無「ボクもいこうー」
走太「これで決定かな?じゃあ、四人で行こうね!」
影無「あららー。」
走太たちは影無に気づかず、四人で行くことにした。



 技術室の前にいた四人。さっそく技術室の扉を開けたその時。
       ドゴーン!!!
技術室から爆発が起こった。四人は爆風で飛ばされてしまった。
守「早速パリピってんじゃないスカ!オレも参加するッス!フォウ!!」
秀英「こんなに危険なパーティーなどあるわけがないだろう!」
走太「みんな大丈夫!?」
翼「大丈夫だ相棒。というか、発明家のお決まりな登場って感じだ。」
黒い煙の中から誰かが出てきた。
梨古「これは一大事だ!」
男の声が聞こえた。四人は煙を吸ってしまい咳き込んで何も返事をすることができない。
梨古「早く掃除機で吸わないと!」
ギュイイイン!!と通常の掃除機の何倍もうるさい音がすると、黒い煙が晴れてきた。そして目の前には白衣がよく似合う、ごく普通の見た目の男がいた。そして四人はようやく咳が止まり喋ることができるようになった。
翼「掃除機がうるさすぎて鼓膜が破れるかと思った。」
秀英「いきなりなんなんだ!」
梨古「…シューちゃん!」
秀英「梨古!?…そうか、お前が爆破を起こした犯人なのか!」
梨古「そうだけど、普通は再会を喜ぶでしょ!?」
走太「お友達の方?」
秀英「ああ。小学生の頃からな。」
翼「昔ながらの友人とずっと同じ学校なんて、少し羨ましい気もする。」
梨古「初めまして、ボクは梨古聖人(なしこまさと)。C組サポート科なんだ。個性は…、ありません。」
衝撃の言葉に沈黙が起こる。秀英は真面目な顔で言う。
秀英「言うんだな。本当のこと。」
梨古「いいんだよ。ここは雄英高校だから、無個性だって輝けるんだ。それはシューちゃんが一番分かってるでしょ?」
梨古は秀英の顔をじっと見た。秀英は梨古の瞳から何か感じ取ったのか、息を吐くと「分かった。」と言った。
梨古「まあ、ボクはこんな感じだよ。よろしく。」
梨古はニコッと笑った。だが内心は苦しいのか、自分の白衣をギュッと握っていた。すると守がポツリと呟いた。
守「白衣…、ダサっ。」
梨古「え?」
頭空っぽの守は、実は梨古の話を聞いておらず、ずっと梨古の白衣を見ていたのだ。そして目線を梨古の顔に上げる。
梨古「え?何?」
守があまりにも不思議そうな顔をしていたので梨古は戸惑ってしまった。
守「プーッ!ワハハハハハハハ!!!」
唐突に吹き出し笑いをした守。唾が噴水のように飛んでいった。
守「もしかしてそのダサダサ白衣カッコいいと思ってるんスカ!?ナンセンスすぎるッス!プークスクス!」
秀英「何っ!?一番イケていると思っていた白衣が不格好だと!?」
梨古「ぐさっ」
梨古の心に矢が飛んだ。だが守は梨古に追い討ちをかけるように笑う。
守「そもそもルックスとか喋り方とか、マジフツーすぎてウケるッス!カッコよくなりたいんだったらオレみたいに金の装飾品とか髪染めないと!」
梨古「ふ、つ、う…!?」
梨古は頭を抱えて崩れた。だが守は腹を抱えながら
守「リアクションはフツーじゃないッスね!マジ片腹痛し!」
と言って、梨古に指をさし、涙を流して面白がっていた。
翼「梨古、白衣がダサイと言われたって「は」を「くい」しばる必要はないんだ。白衣だけにな。」
走太「あ、うん。」
走太、翼、秀英は守と梨古のやり取りに苦笑いすることしかできなかった。だが梨古が作った気まずい雰囲気を壊してくれた事には良かったのかもしれないとも思った。
走太「あー、えっと。僕は速光走太。」
翼「俺は大空翼だ。ダジャレがたくさん降ってくる機械でもあれば嬉しいんだがな。」
守「盾山守ッス!気軽に接してくださいッス!女子のナンパのし方ならいくらでも教えられるッスよ!」
秀英は辺りを見回し、技術室を覗いてから梨古に尋ねた。
秀英「なあ梨古。他のC組さんの姿が見当たらないが…。」
守「確かにパーティーなのにミラーボール回ってないッスよね〜。」 
走太・翼「「ミラーボール…?」」
守も他に誰の気配もない事に気付いていた。それに対して梨古は少し恥ずかしそうに話した。
梨古「実は…、自主練習みたいなことしてて…。」
走太「自主練習?」
梨古は一旦間を置いてから言った。
梨古「一ヶ月後に迫った体育祭に向けて個人的に放課後に残って発明してるんだ。実はサポート科だけ、自分が作った作品を持っていくことができてね。」
守「そーなんスカ!?それは初耳ッス!」
梨古「その為にボクはとある物を発明してて…。」
梨古は勢いよく技術室へ入った。ドカドカと足音が聞こえたと思うと勢いよく戻ってきた。梨古の手に持っていたのは金属がたくさん付いたヒーロースーツであった。
梨古「ボクね、ネーミングセンスには自信があるよ!このヒーロースーツ、名付けて「英雄匹敵スーツ」!」
      「?????」
辺りにハテナマークが浮かんだ。秀英が戸惑いながらも頭をフル回転させて言う。
秀英「あー、つまり訳すと「ヒーローと同等な力になれるスーツ」か?」
梨古「シューちゃん天才だね!その通りだよ!」
走太「遠回しすぎて分かんないよ!てか、秀英くんよく分かったね!」
秀英「昔から一緒だからな…。」
走太のツッコミに対して翼は感心した表情で言った。
翼「俺は好きだ。梨古はネーミングセンスあると思うぜ。」
走太「ええっ!?」
梨古は自分の自信作を見てもらうことが興奮なのか、急に声が大きくなった。
梨古「この作品、我ながら凄いんだよ!ねえ聞いて聞いて!これはボクみたいなヒーローじゃない人でもヒーローと同じように動けるスーパーハイテクマシーンなんだ!」
梨古は自画自賛にスイッチが入ったのか早口になった。聞いている三人よりも梨古の方が楽しそうだ。
梨古「でね、このヒーロースーツの開発秘話なんだけどボクは小さい頃ヒーローに憧れていたけどその夢を諦めてサポートの道に入るって決めたんだそれで何を作ろうか考えてたんだけどそしたら降ってきたんだよ!ヒーローと同じ力を得られる機械を作ろうってそしたらボクみたいな無個性の人でもヒーローになれるんじゃないかなってこれって革命的でしょボクって天才でしょ!?」
秀英は梨古の様子に何かを思い出して絶望した。
秀英「あ…そうだった、梨古のやつ、スイッチ入ると自分の作品について長々と説明しやがるんだった…。」
走太「はあっ!?」
走太は梨古の普通ではない一面に驚きを隠せなかった。
守「あのーっ、オレは魅力上げられる機械の説明が聞きたいッスけど…。」
翼「作品が何であれ、聞くのは発明品の名前と使い道だけでいいんだけどな。」
梨古「さて!この発明品の魅力をお話ししましょう!この作品はね…。」
梨古が無我夢中で作品への愛を語っている間、走太はこっそり耳打ちで秀英に聞いた。
走太「これ、何分くらいで終わる?」
秀英「何分のレベルじゃないぞ。何時間のレベルだ。」
走太「嘘ぉ〜っ!」
さすがに翼も焦り始めたのか、秀英に少し強い口調で言った。
翼「伊集院、梨古を止めてくれ。梨古の相棒なんだろ?」
秀英「いや、今までの経験から不可能と断定する。」
それを聞いた翼は止めるのは無駄だと分かり、とある決心して走太に真面目な顔で言った。
翼「ここで何をするべきか分かっているよな、相棒?」
走太「うん…。」
二人は同時に頷いた。
走太・翼「「ここから逃げる。」」
走太と翼は梨古が作品を見ている隙に忍足で離れようとした。だが
梨古「お二人さん!ボクの作品の魅力はまだ十分の一も語ってないよ!だからまだ帰らないで!」
梨古にバレてしまった二人は絶望した。秀英は腕を組んで呆れたようにため息をついた。そして絶望して魂が口から抜けかけている走太と翼を見て苦笑いをする。もはや走太と翼は死ぬ寸前のようにガリガリになって、顔も青ざめていた。そのような状況も全く気にしていないのか、梨古はマシンガンの如く語る。
守「ちょっと梨古パイセン!全然魅力上げる機械のこと話してくれないッスよ!いつになったら話してくれるんスか!?」
梨古「盾山さん、その機械よりこっちの方が凄いんだよ!聞いて!まずこの腰についているスイッチは空気を利用して宙に浮くことができるボクだからこそ考えられた作品で…」
守「オレの目的、果たすことが出来なかったッス…。もう飽きたッスー。」
守はもうつまらなくなってしまったのか、大あくびをした。三人の様子を見て秀英は申し訳なく思った。
秀英「悪かった…、俺が悪かった…。」



 結局この後ニ時間ほど梨古の熱弁が続いたのだった。
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