○○シリーズ
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愛をくださいの北続き
*********
癒し効果特大と大好きスタンプをもらって頬が緩んだ。やめてと言われたハートマークの絵文字を使ったらどんな反応をするか、悪戯心がわいたので使ってみたら「いいのか! 対抗してうんちの絵文字使う彼女になるぞ!」と脅しがかかってきて笑いの声が漏れた。べつに構わないが、日常的にそれを使ってたらナマエの方がストレスだろう。すまんと謝っておやすみと返した。
「ナマエちゃんと連絡とっとるん?」
「バァちゃん。そうやけど何で分かったん?」
「信ちゃん、ナマエちゃんが大好きやからねぇ」
顔が言うとったよ。北の祖母は嬉しそうにそういった。
北の祖母は、一度買い物袋が道端で破れて困っていたところに現れて助けてくれたナマエのことがたいそう気に入っている。中一の夏だった。ナマエは他人の荷物を当たり前のようにして持ち、額に汗をかいていた。
『あれ? 北のお家だったんだ』
そう言ってから「北のおばーちゃんこのエコバックあげるー。頑丈だよ! 私? 私はキャラクターのエコバック使いたいから全然オッケー!」と買い物の入った袋ごと渡されてしまった。それは今も祖母のお気に入りとなっている。それから「ナマエちゃんにこれどうぞ」と野菜を渡したり、手編みのマフラーをプレゼントしたりとそれはもう北の祖母はナマエが好きなのだ。そのお返しにとナマエの家で作った手作りお菓子が返ってきたりと、北の家とナマエの家での交流が始まった。そういった経緯で快活で親切なお嬢さんと北家では話題となっている。快活で親切。まあ間違っとらんなと北は思った。中一で兵庫にきたばかりだと言うのにクラスの中心でいつも賑やかなナマエ。突拍子のないことをやって一斉に突っ込まれてる事も多いが、それは好かれているからこそのやりとりだ。
『あんた、北とマフラーおそろいやん』
『ん? 色違うよ?』
『違うけどよくみたら一緒って分かるわ。私は事情知っとるけど他にバレたらからかわれるで?』
『好意でもらったものからかう人なんてその程度の人間じゃん。どうでもいいかなぁ。それより北のおばーちゃんの優しさが嬉しいの。ふわふわなんだよこのマフラー』
嬉しそうにマフラーに顔をうずめる姿。首に巻いてある同じもの を自然と触れていた。人の悪意なんて目もくれず人の善意を大事にする姿に、祖母のマフラーを大切にしてくれている姿に、心が温かくなって、好きやなあと思った。中一の冬。北のやや遅い初恋だった。ナマエとは三年間クラスが一緒だったからじんわりじんわりとその恋は育っていった。
ナマエは女子バレー部だったが、ナマエが三年生に上がる頃に人数の関係で廃部となって、ナマエは男子バレー部のマネージャーになった。
『なんか北とはずっとクラス一緒だし部活も一緒になったし、おすそ分けっこしてるし縁あるよねぇ。北のおばーちゃんとも仲良いし私』
『うちの家族はみんな名字が好きやで』
『まじで? 北家のアイドルやれる?』
やったねと笑う顔に遠まわしの言葉は通じなかった。まあええかと思った。伝わらなくとも北の気持ちが大事なものであることに変わりはない。それ以上を望まないのかともう一人の自分が聞いてくるが、もし北の気持ちが重く感じたナマエを困らせるのは本意ではない。あの笑った顔が濁るのは、それが自分のせいでだなんて、北には許容出来なかった。
そんな北が高校三年生になって告白してしまったのは事故のようなものだった。軽口で好きだと言われて俺の方がずっと前から好きだったと事実を返した。それだけだった。眠かったのもある。朝起きてナマエのスタンプ連打をみて「……言ってもうたなぁ」と他人事のように呟いた。北には珍しい現実逃避だった。
そしたらナマエが北を好きになってくれたというどんでん返しが待っていた。人生何が起こるか分からないものだと実感した。
「バァちゃん、名字と付き合いはじめた」
祖母にそう言うと顔を輝かせて「よかったねぇ」と祝福してくれた。まあその後の「ナマエちゃんがお嫁さんに来てくれるなんて信ちゃん果報者やねぇ」と飛躍した話になって少し困ったが。
自室に戻り祖母の言葉を思い出す。お嫁さん。北の家で聞こえるあの元気で明るい声。笑顔。それが毎日見れる。それはどんなに幸せなんだろうと思った。
****
ナマエが昼休み、北のクラスにやってくる。アランをお供にして。しかし話しかけずに廊下の窓側でジッとみているだけだ。なんやねんあれと大耳は不気味がっていたが、北は照れとるんやろうなあと思っていた。その証拠に北と目が合うと頬を染めてアランを盾に隠れている。部活中は部活スイッチが入ってるせいか平気な顔をするくせに、学校生活は違うらしい。かわええな。率直にそう思ったが、そろそろアランもつきあうのも疲れている様子だ。解放してやらないと不憫だ。
「名字」
「ひょ」
「こっち来ぃ」
「あ、アランくんも一緒!」
「お母さんと一緒みたいに言うんやないわ! ほな教室にもどるわ」
「お母さーん!!」
「だれがお母さんやねん!!」
アランはそう突っ込んで自分の教室に帰って行った。ナマエはおろおろとしていたが、北が手招きすると頬を染めておずおずとやってきた。
「なんでしょうか」
「俺が話したくなっただけや」
率直な気持ちを伝えるとナマエは「北さん、ナマエさんをたらし込むのがうますぎる」と両手で顔を隠しながら言われた。別にたらし込んどらんわ。そう思って両手を外してそのまま握っていると真っ赤になった。かわええな。何度思ったか分からないことを思う。ナマエはささいなことでこんなにも北の心を癒やしてくれる。手を握ることができる立場になってよかったと心から思った。
「バァちゃんが名字に会いたがっとる。近いうちに顔出してくれへんか?」
「私も会いたいな。最近ご無沙汰してたから」
「…………」
「北?」
言うか迷った。絶対に困らせるだけだと。でも困らせる顔もみたいと思ってしまった。初恋が叶って浮かれてるらしい。ナマエの色んな顔がみたい。北のせいで困っているナマエがみたい。
「嫁さん扱いされると思うから覚悟しとき」
「よっ嫁さん扱い……!?」
「バァちゃん浮かれとんねん。今から俺らの結婚式楽しみにしとるで」
「俺らの結婚……」
耳まで赤くなって目がうるうるになってるナマエ。やっぱりかわええなと思う。普段は賑やかなのにこういう話になると小動物のようになる。ただの友達では知り得なかったこと。
「…………北ナマエになるってことですか?」
「順当に歩いていったらそうやな」
「……どっかにうろちょろしそうになったら手ひっぱってください」
北ナマエになりたいな。
小さい声だったが北の耳にはちゃんと届いていた。それに顔が勝手にほころんだ。繋いだ手をぎゅっと握る。
「離さへんから大丈夫や」
そう言うとナマエの顔も幸せそうにほころんだ。陽だまりのような笑顔だった。
北の祖母待望の結婚式はそんな天気のなかで行われて、新郎になった北の初恋話にナマエは「初耳ですが!?」と途中で驚いて突っ込んで周囲を笑わせていた。笑顔の絶えない結婚式となった。
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癒し効果特大と大好きスタンプをもらって頬が緩んだ。やめてと言われたハートマークの絵文字を使ったらどんな反応をするか、悪戯心がわいたので使ってみたら「いいのか! 対抗してうんちの絵文字使う彼女になるぞ!」と脅しがかかってきて笑いの声が漏れた。べつに構わないが、日常的にそれを使ってたらナマエの方がストレスだろう。すまんと謝っておやすみと返した。
「ナマエちゃんと連絡とっとるん?」
「バァちゃん。そうやけど何で分かったん?」
「信ちゃん、ナマエちゃんが大好きやからねぇ」
顔が言うとったよ。北の祖母は嬉しそうにそういった。
北の祖母は、一度買い物袋が道端で破れて困っていたところに現れて助けてくれたナマエのことがたいそう気に入っている。中一の夏だった。ナマエは他人の荷物を当たり前のようにして持ち、額に汗をかいていた。
『あれ? 北のお家だったんだ』
そう言ってから「北のおばーちゃんこのエコバックあげるー。頑丈だよ! 私? 私はキャラクターのエコバック使いたいから全然オッケー!」と買い物の入った袋ごと渡されてしまった。それは今も祖母のお気に入りとなっている。それから「ナマエちゃんにこれどうぞ」と野菜を渡したり、手編みのマフラーをプレゼントしたりとそれはもう北の祖母はナマエが好きなのだ。そのお返しにとナマエの家で作った手作りお菓子が返ってきたりと、北の家とナマエの家での交流が始まった。そういった経緯で快活で親切なお嬢さんと北家では話題となっている。快活で親切。まあ間違っとらんなと北は思った。中一で兵庫にきたばかりだと言うのにクラスの中心でいつも賑やかなナマエ。突拍子のないことをやって一斉に突っ込まれてる事も多いが、それは好かれているからこそのやりとりだ。
『あんた、北とマフラーおそろいやん』
『ん? 色違うよ?』
『違うけどよくみたら一緒って分かるわ。私は事情知っとるけど他にバレたらからかわれるで?』
『好意でもらったものからかう人なんてその程度の人間じゃん。どうでもいいかなぁ。それより北のおばーちゃんの優しさが嬉しいの。ふわふわなんだよこのマフラー』
嬉しそうにマフラーに顔をうずめる姿。首に巻いてある同じ
ナマエは女子バレー部だったが、ナマエが三年生に上がる頃に人数の関係で廃部となって、ナマエは男子バレー部のマネージャーになった。
『なんか北とはずっとクラス一緒だし部活も一緒になったし、おすそ分けっこしてるし縁あるよねぇ。北のおばーちゃんとも仲良いし私』
『うちの家族はみんな名字が好きやで』
『まじで? 北家のアイドルやれる?』
やったねと笑う顔に遠まわしの言葉は通じなかった。まあええかと思った。伝わらなくとも北の気持ちが大事なものであることに変わりはない。それ以上を望まないのかともう一人の自分が聞いてくるが、もし北の気持ちが重く感じたナマエを困らせるのは本意ではない。あの笑った顔が濁るのは、それが自分のせいでだなんて、北には許容出来なかった。
そんな北が高校三年生になって告白してしまったのは事故のようなものだった。軽口で好きだと言われて俺の方がずっと前から好きだったと事実を返した。それだけだった。眠かったのもある。朝起きてナマエのスタンプ連打をみて「……言ってもうたなぁ」と他人事のように呟いた。北には珍しい現実逃避だった。
そしたらナマエが北を好きになってくれたというどんでん返しが待っていた。人生何が起こるか分からないものだと実感した。
「バァちゃん、名字と付き合いはじめた」
祖母にそう言うと顔を輝かせて「よかったねぇ」と祝福してくれた。まあその後の「ナマエちゃんがお嫁さんに来てくれるなんて信ちゃん果報者やねぇ」と飛躍した話になって少し困ったが。
自室に戻り祖母の言葉を思い出す。お嫁さん。北の家で聞こえるあの元気で明るい声。笑顔。それが毎日見れる。それはどんなに幸せなんだろうと思った。
****
ナマエが昼休み、北のクラスにやってくる。アランをお供にして。しかし話しかけずに廊下の窓側でジッとみているだけだ。なんやねんあれと大耳は不気味がっていたが、北は照れとるんやろうなあと思っていた。その証拠に北と目が合うと頬を染めてアランを盾に隠れている。部活中は部活スイッチが入ってるせいか平気な顔をするくせに、学校生活は違うらしい。かわええな。率直にそう思ったが、そろそろアランもつきあうのも疲れている様子だ。解放してやらないと不憫だ。
「名字」
「ひょ」
「こっち来ぃ」
「あ、アランくんも一緒!」
「お母さんと一緒みたいに言うんやないわ! ほな教室にもどるわ」
「お母さーん!!」
「だれがお母さんやねん!!」
アランはそう突っ込んで自分の教室に帰って行った。ナマエはおろおろとしていたが、北が手招きすると頬を染めておずおずとやってきた。
「なんでしょうか」
「俺が話したくなっただけや」
率直な気持ちを伝えるとナマエは「北さん、ナマエさんをたらし込むのがうますぎる」と両手で顔を隠しながら言われた。別にたらし込んどらんわ。そう思って両手を外してそのまま握っていると真っ赤になった。かわええな。何度思ったか分からないことを思う。ナマエはささいなことでこんなにも北の心を癒やしてくれる。手を握ることができる立場になってよかったと心から思った。
「バァちゃんが名字に会いたがっとる。近いうちに顔出してくれへんか?」
「私も会いたいな。最近ご無沙汰してたから」
「…………」
「北?」
言うか迷った。絶対に困らせるだけだと。でも困らせる顔もみたいと思ってしまった。初恋が叶って浮かれてるらしい。ナマエの色んな顔がみたい。北のせいで困っているナマエがみたい。
「嫁さん扱いされると思うから覚悟しとき」
「よっ嫁さん扱い……!?」
「バァちゃん浮かれとんねん。今から俺らの結婚式楽しみにしとるで」
「俺らの結婚……」
耳まで赤くなって目がうるうるになってるナマエ。やっぱりかわええなと思う。普段は賑やかなのにこういう話になると小動物のようになる。ただの友達では知り得なかったこと。
「…………北ナマエになるってことですか?」
「順当に歩いていったらそうやな」
「……どっかにうろちょろしそうになったら手ひっぱってください」
北ナマエになりたいな。
小さい声だったが北の耳にはちゃんと届いていた。それに顔が勝手にほころんだ。繋いだ手をぎゅっと握る。
「離さへんから大丈夫や」
そう言うとナマエの顔も幸せそうにほころんだ。陽だまりのような笑顔だった。
北の祖母待望の結婚式はそんな天気のなかで行われて、新郎になった北の初恋話にナマエは「初耳ですが!?」と途中で驚いて突っ込んで周囲を笑わせていた。笑顔の絶えない結婚式となった。