笑顔をみせて/キラー
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島が見えてくる頃
俺はミドリの部屋を訪れた。
部屋といっても、もともとは倉庫として使っていた場所。
ミドリがいなくなれば
またすぐに倉庫に逆戻りするだろう。
「荷物運ぶの手伝おうか。」
「キラー。ありがとう、助かるよ。」
やはり、もうすぐ家に帰れるというのに
ミドリはあまり元気がなかった。
「……大丈夫か?」
「ん?」
「キッドのこと……」
「……うん。頑張って忘れてみる。」
そう笑ったミドリの表情は
悲し気で、辛そうで、無理に作られた笑顔。
でも綺麗だった。
「優しいね、キラー。」
突然正面に立ち、真っ直ぐに視線を向けられて
向こうから顔は見えていないはずなのに
なんとなく俺は目を逸らす。
「やめてくれ。」
「私、キラーの笑った顔が見てみたかったな。」
そう言ってミドリは腕を伸ばし
俺の頬に触れた。
正確には仮面に。
触れられた箇所から
熱を感じ、一気に体中が熱くなる。
俺は思わずその手を取る。
華奢でやわらかく、俺の手では握りつぶしてしまいそうなほど小さな手。
ほんの一瞬だったが
これ以上触れていたらヤバい。
君をこのまま連れ去りたくなってしまう。
そんな無謀なこと考えるなんて俺らしくない。
「悪いな。人前で笑うのは苦手なんだ。」
俺はそっと手を離して
平静を装ってミドリの荷物を担いだ。
「運ぶのはこれだけか?」
「うん、ありがとう。」
別れの時が、すぐそこまで来ている。