笑顔をみせて/キラー
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いつの間にかミドリは、俺たちにとって
マドンナ的存在になっていた。
ミドリが笑っているだけで
そこに一輪の花が咲いたように場が明るくなる。
命をかけた毎日の中で
俺たちに癒しを与えてくれる存在。
俺も、いつも彼女のことを考えていた。
気付いたらあの笑顔が頭に浮かんで
俺を好きになったりはしないだろうか
なんて、ありえない妄想をしたりもした。
ただ気持ちを伝える気はおきなかったし
これからも伝えることはないだろう。
そうしているうちに数日が過ぎ
次の島へ着いた。
人の住んでいない島。
ログの情報が得られなかったので
俺とキッドは話し合いの末、
ミドリのエターナルポースを辿って
先にミドリを送ってやることに決めた。
だが当のミドリは、あまり嬉しそうな反応を見せなかった。
「ここを出たら自分の島に戻れるってのに、あまり嬉しそうじゃないな。」
「そんなことないよ?」
「何を悩んでる。俺で良ければ聞こう。」
「………」
ミドリの悩みの理由については
検討がついていた。
「……キッドには内緒にしてくれる?」
「やはりキッドのことか。」
そのわかりやすい反応に頬が緩む。
「惚れてるんだろ。」
「お恥ずかしいです。」
自分から言っておいて
素直に認められると胸が痛んだ。
俺も大概勝手だな。
思っていたとおり
ミドリは、故郷の両親と婚約者
そしてキッドのことで悩んでいた。
「キッドへの想いは断ち切って、彼の元に戻って予定通り結婚するのが一番良いとはわかってるんだけど……どうしても頭から離れなくて……」
泣きそうなのか
だんだんと鼻声になりながらミドリが呟いた。
「ねぇキラー、どうしたらあの男を忘れられるのかな?」
「その手の話は俺も得意じゃないんだが……とりあえず、今俺に言ったことをそのままキッドに言ったらどうだ?」
「えっ……」
「全て伝えたらいい。気持ちをぶつけろ。お前の全てを受け止めきれないほど、あいつの器は小さくない。お前をこんなに悩ませてる原因はあいつなんだから、2人で解決しろ。」
「私の気持ちを……」
もう、俺の出る幕じゃない。
あとはキッドの奴がどうにかする。
少しだけ本音を言えば
許されるならこのまま
故郷のことも忘れて
キッドのこともやめて
俺にしておけ、と言ってしまいたい。
どれだけ俺が君を想っているか伝えたい。
でもそれはしない。
ただでさえ、故郷のこととキッドの間で
板挟みになっている君を
これ以上苦しめたくはない。
君は何も知らなくていい。
「がんばれよ。」
全てを飲み込んで
その柔らかい髪を撫でてやった。