笑顔をみせて/キラー
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次の日。
ミドリを船に残し、仲間たちと島へ出ることになった。
「……行かないのか?」
甲板でひとり、リクライニングチェアに
寝そべって目を閉じているキッドに声をかける。
「あァ…俺はいい。眠てェし。」
すぐに察した。
キッドは船にミドリをひとりにしておきたくないんだ、と。
ミドリ誘拐の一件で
確実に2人の間に変化があった。
俺は
惚れた女が別の男に想いを寄せはじめた焦りと
親友が女のことで見たこともない状態になっている面白さで
複雑な心境になっていた。
ーーーーーー
空模様が怪しくなり
予定よりも早く船へ戻ったが
そこに2人の姿はなかった。
「2人で街へでも行ったんじゃないですか?そのうち帰ってくるでしょ。」
「あァ、そうだな。」
クルーの前では特に気にしていないように振る舞いながらも、内心気になって仕方がないし、面白くもない。
2本の傘を手に船を降りる。
何してんだ、俺は。
心配して、迎えに来たフリをして
2人を探して
何を確かめようっていうんだ。
もしかしたら2人
仲良く飯でも食べているかもしれない。
買い物の最中かもしれない。
諦めたじゃないか。
もう、俺の入る隙間なんてないんだって。
行くべきじゃない。
わかってる。
ほら、雨も止んだだろう。
おとなしく、帰りを待っていればいいんだ。
なのに、足が止まることはなかった。
「キッドのバカ!!」
岩場の向こうからミドリの声が聞こえて
俺は思わず身を隠した。
「うるせェから塞いだだけだろ。うろたえすぎだ。まさか初めてだったか。また村の掟か。」
「残念でした!初めてじゃないです!」
「そうかよ。つまんねェな。」
初めてとか初めてじゃないとか
何やら訳の分からない言い合いをしていた。
キッドは楽しそうに笑っているし
ミドリは口調は怒っていて、腕はキッドを叩いているが
同じように楽しそうだった。
雨が降ったから迎えに来たんだ。
そう言って出ていけばいいものを
俺はなぜかその場で動けずにいた。