最終章
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家に戻ってから、一週間が経とうという頃
私は村での生活の感覚を取り戻しつつあった。
その間、遭難したはずの私が帰ってきたと聞きつけ
子どもの頃からの友人や親戚、近所の人が
次々と会いに来てくれた。
皆私の無事を喜んでくれていて
改めて、たくさんの人達を心配させていたことに、申し訳ない気持ちになった。
父は、毎日のように違う人のお見合い写真を持ってきた。
私は見ることもせずに断った。
少し意地になっていた部分もあると思う。
けど、やっぱりすぐには他の男の人と、なんて
考える気になれなかった。
「そういえば、隣の港に珍しく海賊船が泊まってるって、話題になっているみたいよ。」
買い出しから帰ってきた母が
食料を冷蔵庫へ入れながら楽しそうに話す。
「もしかしてミドリを送ってくれた人たちの船かしら?」
「あぁ、うん。たぶんそうだと思う。」
「海賊は怖いけど、あなたを助けてくれた人なら会ってみたいわ。」
「でも皆見た目は怖いから、お母さん引いちゃうかも。」
言いながら、皆のことが頭に浮かんで
自然と笑顔になった。
一週間くらいじゃ、思い出にはなってくれない。
「そんな人たちに拾われて、怖い思いしたわね。」
「もちろん最初は怖かったけど…でも本当に皆気のいい人たちで、すぐに打ち解けたよ。まぁ船長が少しひねくれててね、キッドって言うんだけど、偉そうだし、乱暴だし、人のこと見下して悪口ばっかりだし……」
気がつくと母はテーブルに着いて
私の話を楽しそうに聞いている。
「……でも船長だしやっぱり一番強くて、敵の海賊が大勢で攻撃してきても一撃で倒しちゃったり…頼りになるんだよね。不器用だけど優しいところもあったりして、私も何度も命を救われた。」
「ミドリ、その人のことが好きなのねぇ。」
母は嬉しそうに笑った。
私は黙って頷く。
あぁ、ダメだ。
泣きそう。
もう泣かないって決めたのに。
「いいの?」
母が立ち上がって私の肩に手を置く。
「島に来てもう一週間でしょ。ログも貯まって、今日あたり出てしまうんじゃない?」
それは今日、朝起きた時から
頭の隅にあった。
「最後のお別れくらい言いに行っても、お父さんは怒らないと思うわよ?」
「ううん、いいの!」
決意が揺らがないように
迷いを打ち消すように、大きな声を出した。
「お別れなら、一週間前にちゃんとしてきた。もういいの……私、洗濯物取り込んじゃうね。」
心配する母の顔を横目に
話題を逸らし、そこから逃げるように庭へ出た。