最終章
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「どういうことだ?」
「相手は?この島の人なの?」
母からの問いに首を横に振ると
父が怒った表情に変わった。
「まさか…海賊だとか言うんじゃないだろうな。」
「……そうです。」
そんな…と呟いて、母は口に手を当てた。
父は呆れているようだった。
「許されると思っているのか。」
「思ってないけど…今はその人以外と一緒になるなんて考えられない。」
「まさか海賊と結婚するなんて言い出さないだろうな。」
「まさか!そんなこと!あの人は旅をしてるから…結婚なんて……」
「海賊なんて輩は信用できない。何を毒されてきたんだか知らないが、その男のことはすぐに忘れろ。」
「でも——」
「俺がもっといい男を見つけておいてやる。話は終わりだ。」
父は立ち上がってダイニングを出て行ってしまった。
父も、キッドも
忘れろ、忘れろって
そんな簡単に忘れられるなら、こんなに悩んでない。
「疲れてるでしょ?ミドリ。とりあえず今日は部屋で休みなさい。」
「……うん。」
母に連れられて
久しぶりに自分の部屋へと入った。
何もかもが、そのまま綺麗に残されていて
掃除も行き届いているようだった。
「……万が一、もしかしたらあなたが帰ってくるかもと思うと、整理できなかったのよ。」
「お母さん……」
「海賊はお母さんもお勧めはできないけど、あなたを助けてくれたことには感謝しなくちゃね。」
母はもう一度強く私を抱き締めると
部屋から出て行った。
ベッドに横になる。
こうして自分の部屋にいると
今日までキッド達と航海してきたことが
まるで夢のように思えてくる。
それでも目を閉じれば
波の音、カモメの鳴き声
風によって帆が張る音
舵を切ると船がきしむ音
その中から
キッドが何かにキレている声
それをなだめるキラーの声
クルーの皆の笑い声
今にも聞こえてきそうなほど
はっきりと耳に残っている。
涙が出た。
この平穏な暮らしを取り戻した代わりに
あの日々はもう戻らない。
泣くのは今日だけにしよう。
明日からは、皆のことは思い出にしなくちゃ。