最終章
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ダイニングで母が淹れてくれたお茶を飲みながら落ち着くころ、2人に事情を話す。
「新聞でクルーズ船の事故のことを知ったんだ。乗員乗客全滅だって書いてあったから……諦めていた。」
「私は運良く生き残って、近くの島に打ち上げられていたのを……ある海賊に拾われたの。」
「海賊!?」
その言葉を聞いて
父は焦った表情で顔を上げた。
母も声は出さずとも、恐怖の表情を浮かべている。
「何かされなかったのか。よく無事に戻ったな。」
「大丈夫、何もされてない。海賊って言っても、すごく良い人たちで。お父さんがくれたエターナルポースを辿って、わざわざこの島まで送ってくれたの。」
「海賊が…?」
にわかに信じがたい、と言った表情。
でも無事に娘がここに帰ってきているのは事実。
父はしぶしぶ納得したように頷いた。
「まぁお前が無事なら良かった。もう海に出るなんてバカなことは言わないな。」
「……はい。」
「まぁまぁお父さん。無事に戻ったんだから、今はお説教はいいじゃない。」
「ありがとう、お母さん。そうだ、ハンスさんにも連絡しないと。」
ハンスとは、私の婚約者。
彼も私が死んだと思っているに違いない。
心配をかけてしまって
早く謝りに行きたい。
「ミドリ、そのことなんだが……」
父が言いづらそうに口を濁した。
「……彼、どうかしたの?」
「お前の事故のこと、彼も新聞で知ってな。ひどくショックを受けていた。だが、彼も早く結婚をして身を固めないとならない歳だ。早々に別のお嬢さんと婚約したらしい。」
「えっ……」
「来月の結婚式は、そのお嬢さんと執り行うようだ。」
「そっか……そうなんだ。」
「ハンス君もすごく辛そうに私たちに謝罪してきたわ。仕方のないことなの。どうか責めないでね。」
私を慰めるように、母は手を握ってくれた。
でも、当の私はショックを受けるどころか
実は少し安心していた。
キッドに恋をして、肌を重ねて
嬉しい想いも、切ない想いもたくさんして
頭の中はまだまだキッドでいっぱいなのに
こんな気持ちのまま彼と結婚なんて
気持ちの整理が付けられそうになかったから。
「私なら大丈夫だよ。彼が幸せならそれで。」
満足そうに笑う私。
2人には強がっているように見えたようだ。
「心配するな。すぐに別の男を見つけてきてやる。父さんに任せておけ。」
「お母さんも、知り合いに声をかけてみるわね。急がないと、19歳になってしまうわ。」
「いいよ。もう婚約はしない。」
きっぱりと言い切る私に
2人は一瞬沈黙になった。
「好きな人がいるの。」