最終章
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最終章
波と追い風が味方して
島が見えてからは、あっという間に港が近づいてきた。
そこは、およそ1ヶ月前
私がクルーズ船に乗って一人旅へと出発した場所。
その時と何ひとつ変わることなく
私を出迎えてくれた。
クルーの皆が上陸準備をする中
部屋から荷物を持ってくる。
胸がドキドキしていた。
お父さんとお母さんは
行方不明になった私が急に帰ってきたらどう思うだろうか。
彼は…私を待ってくれているだろうか。
近づく港をボーっと眺めていると
隣にキラーがやってくる。
「大きな港町だな。ここに住んでいるのか?」
「私の村はこの町を超えた所にある小さな村なの。」
「この島のログはどれくらいで貯まる?」
「たしか、一週間だったと思う。」
「長いな。キッドが退屈しないといいが。」
港に着き、イカリを下ろして上陸すると
船から降りたところで、クルーの皆が順番に握手をしてくれた。
「いよいよミドリとお別れか!」
「寂しくなるな!」
「元気でやれよ!」
「皆ありがとう!お世話になりました!」
キラーに右手を差し出されて
それを両手で強く握る。
「キラー、本当にいろいろとありがとう。」
「あぁ。短い間だったがなかなか楽しかった。」
そう言われると涙腺が緩み言葉に詰まる。
見かねたキラーは私の肩をポンポンと叩いた。
「早く行ってやれ。両親が待ってるだろ。」
「うん。ありがとう。助けてもらえたのが、キラー達で本当に良かった。」
最後にもう一度強く握り直し
キラーの手を離すと
その隣には……
「キッド……」
「まぁ…元気でやれよ。」
腕組みしているキッドの手を、なかば無理やり引っ張り出して握手をする。
「本当に、お世話になりました。」
そして深く頭を下げた。
ここに無事帰ってこられたのは
この人のおかげ。
もっとたくさん話をしたかった。
ありがとうも、もっと言いたかった。
本音を言えば、ずっとそばにいたかった。
大好きだった。
「さっさと行け。」
涙を堪えるのに必死で、なかなか顔を上げない私に
痺れを切らしたようだ。
顔を上げて
真っ直ぐにキッドを見上げる。
「ばいばい、キッド。」
ギリギリで涙はこぼれなかった。
キッドの手を離して
背を向けて
早足で歩き出す。
振り返ることはしない。
さよなら、キッド。
私の大好きだった人。