第八章
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気がつくと朝だった。
そこはキッドの部屋のベッドの上。
あのまま私は眠ってしまったようだ。
部屋にキッドの姿はなかった。
「キッド……?」
いなくなってしまった。
キッドが、私の前から消えてしまった。
焦ってベッドから起き上がり、廊下へ出る。
まだ皆は寝静まっているようで
船内は静かだった。
甲板にキッドの姿を見つけて、安堵のため息が出た。
そばに駆け寄る。
「おう、起きたかよ。」
「いなくなっちゃったかと思った。」
「海の真ん中でどうやっていなくなるんだアホ。」
いつもの悪態を吐くキッドに戻ってる。
「さっさと飯作れ。腹減ってんだ。」
まるで私とキッドの間には何もなかったかのようなその態度に
昨日の出来事は全て夢だったように思えてくる。
これが、忘れろってことなんだろう。
「言われなくてもすぐ作りますよー。」
私もなるべく憎たらしい口調で返す。
「たまには手伝ってよ。」
「バカ。俺が料理なんかするかよ。」
いつもの私たちだ。
大丈夫。
きっとうまく忘れられる。
ーーーーーー
それから3日間、航海が続いた。
甲板に干した洗濯物をしまっていると
キラーがやってきた。
「それがこの船でやる最後の洗濯かもな。」
「え?」
「気候が安定してきた。」
「……てことは…」
「ミドリの島にだいぶ近付いたってことだ。俺の読みが正しければ明日には着くだろう。」
「そっかぁ……」
「……キッドとのことは?決着ついたのか?」
「……さよならする覚悟はできた。どうしたってあいつは私をそばに置いておく気はないようだから。」
「そうか。」
「色々とありがとうね、キラー。」
「俺は何も。とにかくあと一日だ。準備しとけ。」
「うん。」
あと一日。
私がこの船に乗っていられる時間。
キッドのそばにいられる時間。
「………。」
ダメ。
寂しいなんて
思っちゃダメ。
キッドは夢を叶えるために先へ行くんだ。
私にできることは、その夢が叶うことを願って
背中を押すことだけ。
潔く、さよならしてやろうじゃないか。