第八章
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コンコン——
「私。入っていい?」
「おう。」
返事が聞こえると、ドアを開けて中に入る。
キッドは床に座り、ベッドに寄りかかりながらお酒を飲んでいた。
隣にそっと腰掛ける。
「ごめんなさい。夕食までサボっちゃって。皆に誤魔化してくれたみたいで、ありがとう。」
「まぁ半分俺のせいだしな。」
隣に座ってしまったけど、恥ずかしさで顔が熱くなって、キッドの方を見られない。
何を話したらいいのかわからなくて
黙りこくっていると、キッドが沈黙を破った。
「……勘違いだろ。」
「勘違い?何が?」
「お前がその…俺のこと、なんてよ。」
「そんなことない!」
私が急に声をあげたので、キッドは少し驚く。
キッドの前に座り直して
真っ直ぐに目を見る。
一緒にいることが許されないなら
この気持ちだけは
「否定しないでほしい。」
「………。」
「……勘違いなんかじゃないよ。」
一緒にいるだけで、こんなに胸が苦しくて
いつも態度が悪くて意地悪だけど
時々見せてくれる優しさにドキドキして
笑顔を見れると嬉しくて
触れられれば、すごく幸せだった。
勘違いなはずない。
「わかったよ。でも…じゃあ、忘れろ。」
「え?」
「俺のことは忘れろ。」
「………。」
「これ以上海賊なんかと一緒にいるもんじゃねェよ。」
「……キッドは……そう言うと思った。」
「当たり前だろ。お前には待ってるヤツがいるし、何不自由ない未来が保証されてる。目の前の幸せを手放すな。」
「………どうしても、私をこのまま連れて行く気はない?」
「あぁ。ない。」
唇を噛み締める。
そう言われることは分かっていた。
キッドの言っていることは正論。
でも……
「じゃあ、どうしてっ……」
堪えていた涙が流れて、思わずキッドの腕を掴んですがりつく。
困らせたいわけじゃないのに。
物分かりの悪い自分は嫌なのに。
それでも、聞かずにはいられなかった。
「どうして私を抱いたのよっ……」
あんな風に抱かれて
忘れられるはずがない。
「どうして、あの時……泣いたりなんかっ……」
キッドは私の両頬を
その大きな手で包むと
真っ直ぐに私を見る。
「好きだからだよ。」